第32話 ヨーグ国へ

「メルちゃん! ジン。本当に世話になったな!」

「ありがとうねぇ」


「どーいたしましてー!」

「この国を助けられて良かったです」


「メルちゃん! 何時でもお嫁に来ていいからね!」


ゴツンッ


「いでぇ!」

「あなた、やめなさいな! みっともない!」


フラジールをゲンコツで黙らせるアマンダであった。


「はははっ! まったねぇー!」

「では、また」


「2人ともいつでもおいでねぇ」


まだ痛がっているフラジールは放っておいてアマンダに挨拶して帝都を出ていく。


『メルちゃーーん!! また来てねーー!』


帝都から騎士達が大勢見送りに来てくれていた。


後ろを振り返りメルが返事をする。


「またねぇーーー!」


手を振ると、皆がブンブン手を振っている。


『うぅー。もうちょっとメルちゃんを見ていたかったよぉ』

『メルちゃーん! 行かないでぇー!』

『俺のお嫁さんになってぇ!』


口々にメルを惜しむ声が聞こえる。

あえて振り向かない、メルなのであった。


「凄いファンがいっぱいできたな」

「あはは! 応援してもらえるのは嬉しいかなぁ!」

「また落ち着いたら来たいよな?」

「うん! そうだねー!」


こんなに歓迎されているならまた来たいなと、そう思う2人であった。


――


ヨーグ国へ向かって数日。ヨーグ国との国境にいると、偵察なのか、空を黒いものが飛んでいる。


「なんだあれ?」

「んー? なんだろうねぇ? 小さい悪魔かな?」


ブンッと魔法陣でレンズを作り確認する。


「あれは、デーモンだな」

「デーモンか! 空飛んでるのは厄介だね!」

「そうだな」


段々と近づいて行くと空を飛んでいる数が多いが、襲っては来ないようだ。


関所に着く。


「お疲れ様です。空のデーモンは襲っては来ないんですか?」

「はい! 襲っては来ません。様子を伺っているような所はあります」

「なるほど……わかりました。ありがとうございます」

「いえ、討伐お願いします!」

「なぜ、私達が悪魔の討伐をすると知っているんです?」

「アリア王国を回して各国の武勇伝が聞こえてくるものですから、容姿と男女のカップルで各国の悪魔を退けたって言うじゃないですか! 半分楽しみにしてたんですよ!」


「いや、カップルってわけでは……」

「いいーじゃん! いいーじゃん! 全力で倒しまーす!」


「はい! お願いします!」


こうして、ヨーグ国へ入国した2人であった。


――


「それにしても、なんか噂になってるみたいだな?」

「そーだねー! でも、武勇伝だから、カッコよく語り継がれてるといいよねぇー!」

「はははっ。メルは凄いな。おれは恥ずかしいよ」

「なんにも恥ずかしいことないよ! 堂々としてればいいんだよ!」

「うん。そうだな」

「そーだよ! さぁ! 行こー!」


元気に走り出すメル。

ジンは結構メルに助けられてるのかもなぁと思いながら、後をついて行く。


――


中心街で被害状況などの聞き込みをしていた。


「では、被害はあまり無いんですか?」

「そうです。たまに食糧を持っていかれる位で建物も壊されてません」

「そうなんですねぇ。ありがとうございます」


話を聞き終わると2人で報告をし合う。


「なんか、あんまり被害ないんだってぇー!」

「そうらしいな。不思議だよな?」

「空にデーモンが居るのが怖いけど、特に被害はないんだって!」

「うーん。デーモンが向かってくる方に行けば、悪魔がいると思うんだけど……」


上空を見て、デーモンが来る方と帰る方を注意深く見る。


「西の方みたいだな」


西に向かうことに決めたジンとメル。


――


西に向かっていること数時間。


段々とデーモンが増えてきて、キマイラが道を塞いでいた。


「この先には行かせてくれないのか?」


『グルルル』


「ホーリーレイ」


サッと避けられる。


すると、上空が暗くなる。

上を見上げると、デーモンが向かってきていた。


「ボルケーノストーム!」


メルが魔法を放つ。

続けてジンも大規模な魔法を放つ。


「ホーリーレイン並列展開」


五角形の形に魔法陣が浮かび、上空に向かって光の雨が上がっていく。


地上には上空に向けて炎の渦が巻き上がり、上空には無数の光の雨がデーモンに向かっていく。


ドドドドドドドド

ゴォォォォォォォ


次々に魔物が灰になっていく。


サァァァ


あっという間に魔物がいなくなる。


「メル、気を引き締めて進むぞ!」

「うん! りょーかい!」


再び進み始めるジンとメル。


もうすぐか?


と思ったところで


『ガァァァァァ』


今度はマンティコアが現れた。


「バーニングレーザー」

「ホーリーレイ」


サッサッと避けられてしまう。


『ガァァァ』


爪で攻撃してくるが


「シールド」


ガキンッ


何とか防御する。


「バインド」


メルがその隙をついて結界での拘束を試みる。


『ガルァァァ』


バリーンッ


結界が割られてしまう。


以前ジンが王都で倒した時は建物の中に居たため、高火力の魔法で倒せたのだが、今回は動かれるため狙いが付けづらくなっている。


「メル! 魔法で牽制してくれ!」

「オッケー! 同時に打ち込もう!」


「アクセルバーニングバレット!」


ブブブブン

4連の光の魔法陣が浮かぶ

「ホーリークロス」


メルはマンティコアのやや左に打ち込む。

すると、右にかわすマンティコア。

そこに、同時に放ったジンの魔法が直撃する。


ドガァァァァァン


土煙がはれる。


灰になっていくマンティコア。


「あらら、負けちゃった。折角遊んでたのに……


そこに、悪魔が魔物を伴って現れた。


この悪魔は、一筋縄ではいかなそうである。

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