第20話 Bランクへの試練

ジンとメルはここ1カ月、CランクとBランクの試練をかなりの数こなしていた。


そんなある日


ジンとメルはいつも通りギルドでマリーの元へ依頼を受けに来ていた。

「マリーさん、おはようございます」

「マリーさん、おはよー!」

「ジンさん、メルさん、おはようございます!今日は提案があります!」


「「なに?」」

「ここ1カ月、ジンさんとメルさんはCランクとBランク依頼を相当数こなしました!そこで、ランクアップの為に、依頼を受けて頂きたいんです! どうでしょうか?」

「是非、受けたいところだけど、どんな依頼なの?」

「はい、それは......指名手配中の盗賊の討伐依頼です......これは、かなり危険な上に、人の命を奪わなければなりません」

「それは、必ず命を奪わなければいけないの? 捕縛だとダメなの?」

「はい。指名手配中の盗賊は、以前捕縛されましたが、隙を見て逃げられ逃げる際何十人と罪の無い人がその盗賊によって命を落としました。その為、見つけ次第処刑することになっています。」


「そう。メル、これはメルはやらなくてもいいぞ? 俺だけBランクということにしてもいい」


メルに向かってそう言うと、凄い形相で怒り出した。


「ジン! 私をみくびらないで! そんな覚悟でジンに付いていくと決めたわけじゃないわ! 一緒に戦う為に私は付いて来たのよ!」


触れるのではないかというくらい顔を近づけて怒るメル。


「うん。わかった。じゃあ、一緒に受けよう」

「マリーさん、その依頼受けます。潜伏場所はわかっているんですか?」

「はい! 昨日、ようやく潜伏場所が判明したんです! 早くしないとまた場所を変えてしまいます! 早めに討伐をお願いします!」

「なら、今から行きます」


ギルドを出ていくジンとメル。

ギルド内では心配そうにしているマリーと、ギルドマスターのタリムがいた。

「大丈夫でしょうか......ジンさんとメルさん......」

「マリー、あんまり気に病むことはないよ」

「もし、戻ってこなかったらと思うと......」

「その時は、厳しい言い方だが、その程度の冒険者だったということだ」

「でも......」

「なぁに、あいつらなら、ケロッと帰ってくるさ」

「はい......」


ーー


ギルドを後にした2人は

「メル、念の為色々買ってから行こう」

「そうだね!」


急いで準備に奔走するのであった。


ーー


準備が終わり、討伐に向かう2人。

南の方にある洞窟を根城にしたらしい。


慎重に進むジンとメル。


「索敵広域展開」


ジンが空に魔法陣を飛ばす。


「いた。見張りが出てる」


少しづつ進む。

見張りが見える位置まで来た。


「ふぅ。メル、覚悟はいいか?」

「うん」

「洞窟の中は魔法は大々的に使えない。崩れる可能性がある。剣で対応するぞ」


「ゲート」

ブンッと魔法陣を出し異空間の中から、

ショートソードを出す。


頷くメルに渡し、自分も装備する。


「これは、魔力を流してる間、流した量によって切れ味が変わる。魔力を流しすぎると洞窟ごと斬りかねない。気をつけてな」

「わかった!」


ブブンッ


2つの魔法陣を出し、ジンとメルの身体に入れる。


「これは、身体強化魔法だ。行くぞ!」


駆け出した2人は見張りに迫る。


「敵だ!」


攻撃してくる盗賊を魔法でガードする。


「「シールド」」


メルにも教えてある為、2人で展開しながらガードする。


ザンッ


見張りをまず倒す。


「一気に行くぞ!」

「はい!」


奥に入っていくと


『敵襲だ!』 『敵襲!』 『敵襲!』


分かれ道から凄い数の盗賊が押し寄せてくる。

シールドで倒しながら何とか倒しているが、何せこっちは2人だけだ。

徐々に押され始める。


「メル! 下がって外に誘いだそう」

「うん!」


攻撃しながらも下がって入口から出る。

ワラワラ出てきて囲まれる2人。


「2人で何しに来たんだぁ?」

「そっちの子は可愛いなぁ!」

「死んだヤツらの分まで痛い目に合わせるからなぁ!」


口々に勝ったかのように言っている。


ブブンッ


ジンとメルを2つの魔法陣で挟み、結界を張る。


ブーンッ ブーンッ


そして、頭上に炎の魔法陣を、そのさらに上に風の魔法陣を設置する。


「バーニングストーム」


ゴォォォォ


しばらくして、魔力を流すのを止める。

誰もいなくなっていた。


「ふぅ。洞窟の中にまだ居るはずだ、確認しよう」

「ふぅ。うん」


洞窟の中を確認する。

残党を倒しながら進む。

1番奥にたどり着くと、人が居た形跡はあるが、親玉がいない。

急いで外に出る。


「索敵広域展開」


山の反対側に逃げたようだ。


ブーンッと魔法陣を足元に展開する。


「メル! 乗れ! 行くぞ!」


メルを乗せて魔法陣で飛ぶ。


反対側まで行くと、逃げている盗賊を見つけた。


「あそこだ!」


先回りして降りる。

前に立ちはだかるジンとメル。


「なぁ、諦めて捕まらないか?」


ジンが言うと


「わかったよ! 大人しく捕まるさ!」


ジンが近づいていく。


「縄で縛るから手を出して」


縄を構えながらすぐ傍まで行くジン。


盗賊は手を出しながら隠し持っていたナイフで刺してきた。


キンッ


後ろに展開していたシールドの魔法陣で防ぐ。


「さよならだ」


ザンッ


倒れる盗賊。


冒険者カードを盗賊にかざし、魔力を流す。


「こうだっけ?」


するとブンッと魔法陣が出現し盗賊を照らす、盗賊をスキャンしているようだ。

終わると消えた。

冒険者カードを見ると、討伐完了と文字が浮かんでいる。


「メル、終わった。お疲れ様。帰って休もう」

「うん」


その声は震えていた。


ーー


ギルドに戻るとワッと声が上がった。

実は、ザックを含めた周りの冒険者は今日ジンとメルがBランクへのランクアップの試練を受けていることを知っていたのだ。


「ジン! よくぞ無事に戻ってきたな!」


ザックが近づいていくが


「ありがとう。今日は疲れたから報告を終えたら休むよ」


マリーの元へと行き、報告をする。


「マリーさん、手続きをお願いします。」

「はい! 無事に帰ってきてほっとしました! はい! 討伐の完了が確認されました!」


再びワッと歓声があがる。


「では、もういいですか? 疲れたので、休みたいのですが......」

「すみません! では、こちらが報酬となります」

「はい。ありがとうございます」


立ち去ろうとするとザックが声を掛けてくる。


「おい。大丈夫か?」


手を伸ばそうとするが、ジンに払いのけられ


「休めばきっと大丈夫だ。」


そういうとメルを伴って去っていく。

ギルドに残された冒険者達は、その反応が気に入らなかったらしく。


「あいつらなんだよ! 祝おうとしてたのに!」

「Bランクになるからって、偉そうにしやがって!」

「あんなやつだと思わなかったぜ!」


口々に批判の声が上がる。

ザックも内心少し同じようなことを思っていた。


その時


「お前達には、あいつらの気持ちはわからないだろう。人の命を奪う。その気持ちがわかるか?」

「......」

「そういうことだ。誰にもわからないから、あいつは何も言わずにメルと2人で今、試練を乗り越えようとしているんだ。お前らにあいつらのことをとやかく言う資格はない」


厳しい言葉を投げかけたのは、元Aランクのギルドマスターのタリムであった。


ジンのメルはこの真の試練。

乗り越えられるだろうか、はたまた潰れてしまうのだろうか。

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