第19話 メルの八つ当たり

ジンとメルは魔物が出ると報告があった森に来ていた。


「この辺で何が出るんだっけ?」

「ん? ワームだよ。でかいんだそうだ」

「げー」


凄い嫌そうな顔をしているメル。


「まぁ、遠距離から倒せばそこまで間近で見ないで済むと思うけどね」

「よし! じゃあ遠くから仕留めよう!」


慎重にするむが、なかなか出てこない。


「依頼書の目撃情報に何か書いてるかな」


冒険者カードに魔力を流す。

ブンッと液晶の様なものが出てきて依頼書の内容が見れるのだ。

目撃情報の時間は昼時間にご飯を食べていた所、不意に現れたという情報であった。


「ワームって食べ物につられて寄ってくるんだな」

「えっ!? そんなことあるの?」

「ほら。ここに書いてるだろ?」

「本当だ。」


「ゲート」


ブンッ


魔法陣から干し肉が落ちてきたのをキャッチし、投げる。


しばらく待つと


ゴゴゴゴゴゴ


ドシャァァァ


土の中からデカい口のあるミミズみたいな魔物が出てきた。


「気持ち悪いよぉ! 燃えちゃえ!」


「バーニングキャノン」


魔法陣からゴウッと大きい火球が射出される。


ボンッ


頭のようなところに当たると、そこからサラサラと灰になって行く。


「ウォーターレイン」


ザーーー


「念の為、火事にならないようにしておこう」


魔石を拾って次に行く。


「次々ー!」

「次はオーガだな。この奥の洞窟を寝床にしてるらしいぞ」


奥の洞窟を探して探索する2人。


オーガは割と賢いので水辺の近くを巣にしたりするのだ。


サァーー


「川の流れてる音が聞こえるなぁ。あっちに居るかもな」

「うん! 行ってみよう!」


音がする方へ行ってみる。

すると、5体位のオーガが暮らしていた。

これは危険な状態であった。

もう少しするとオーガキングが誕生しかねなかった。


「あれ、どうする!?」

「全部殲滅しよう。川が近いから、少し派手にやっても大丈夫だ。俺がフォローするよ」

「本当!? じゃあ、思いっきりやっちゃうよぉ!」

「よし! 行け!」


「いっけぇ!」


ブブブブンッ


オーガたちの頭上に上に三角に炎の並列魔法陣が浮かぶ。下3つの魔法陣が炎の魔法陣、その上に1つが風の魔法陣、並列と直列の混合魔法これで出来るのは、メルのオリジナル魔法であった。


「ボルケーノストーム」


ゴォォォォォォォ


ジン達のいる所まで凄い熱風が吹き付けてくる。

ジンも凄いが、メルも尋常ではない。

幼い頃からジンに教えられたメルの魔法力は半端では無いのだ。


ブスッブスッ


「ウォーターレイン」


ブンッと魔法陣を出し燻っている火を消火するジン。


「ジンありがとう! スッキリしてきた!」

「ははは。それはいい事だな。最後の依頼に行こうか」


さらに川を登るように奥に歩いていくジンとメル。

この先にはBランクの討伐依頼の魔物であるミノタウロスがいる。

オーガより賢く、力も強い。

一筋縄では行かなそうである。


登り坂で2人ともバテ始めた。


はぁはぁはぁ。


これでは、到着が遅くなってしまう。

するとジンが2つの並列魔法陣をだし、メルとジンの身体に入れる。

身体が軽くなったジンとメル。


「これは、身体強化だ。さっさと登って倒そう」


これだけ魔法を使っても魔力切れしないのには訳があり、メルとジンの防具には自然魔力を吸収する魔法陣が描いてある為、魔力が常に減った分を回復していて、魔力切れを起こさないのだ。


少し登っていくと


ズゥゥン ズゥゥン


上を見ると、次々に気が倒れている。


(なんだ? 遠くて見えないな)


ブンッと目に魔法陣を出し、拡大してみる。

すると、木々を切り倒していたのは斧を持ったミノタウロスであった。


「メル。ミノタウロスがずっと木を切り倒してるから迂闊に近づけないぞ。どうするか……」

「ジン? その目のやつ私の目にも出せる? それ出しながら狙撃は難しそうだからさ」

「あぁ、並列で出せるぞ」


ブンッ


メルの目の前にもレンズのように魔法陣を出してあげた。


「おぉーっ! 凄いね!」


これの前にブブンッとレンズ魔法陣の延長線上に2つの魔法陣を離して設置する。


スナイパーライフルのイメージで右手で手前の魔法陣を操作し、奥は左手で位置を固定して狙いを定める。


「バーニングバレット」


ドドドンッ


ミノタウロスは反応して斧でガードされてしまった。


「速度が足りなかったのかな?」


メルが悩んでいると


「もう1回やってみて。俺が手伝うよ」

「ホント!? ありがとう!」

「はい。『ブンッ』これで、大丈夫」


最後の魔法陣に雷属性の魔法陣を追加する。


ビュビュビュン


今度はガードされること無く貫かれて灰になる。


「ちょっと強かったね!」

「そうだな。まぁ、結果倒せたし良かったじゃないか」

「そうだね!」


魔石を拾いに行き、帰路に着く2人。


「これで、全部依頼の分は揃ったね!」

「だな。帰ろう」

「うん!」


今度は下り坂なので早いが、暗くなってきているので、早く帰らなければならない。

そう思って急いでいると、山の中に明かりが見える。


「ねぇ? あれ、なんだろう?」

「ん? なんだろうな?」


ブンッ


また魔法陣でレンズを作って見るとゴブリンが集まって居るのが見える。


「Gだ!」

「ゴブリンね!」

「よし! 焼却よ!」

「待て! 人がいないか確認する」


ブンッ


索敵の魔法を起動する。

索敵の結果、人間は居ないようだ。


「いない! 行けるよ!」

「よっしゃ! 行くぞぉー!」


気合を入れているメルが魔法陣を準備する。


ブブブブン


大きな4連の直列魔法陣を浮かべる


「いっけぇー! インフェルノ バスター!」


村を覆うくらいの太さの灼熱の炎が発射される。


ゴゴゴゴゴーーーーーッ


魔法が止むと、消し炭になった集落の成れの果てがあった。


「あーーーー! スッキリしたーーー!」

「良かったな」

「完・全・燃・焼!」


スッキリした顔で、スタスタ歩いていくメル。

優しい笑顔を浮かべながらついて行くジン。


ギルドに着くと


「マリーさん戻りましたー!」

「あっ! メルさん大丈夫でしたか?」

「全然大丈夫でした! ちょっとジンに手伝って貰ったけど……」

「メルさんが無事なら、良かったです!」

「はい! それで、ゴブリンの集落があって、人は居なかったので、焼却してきました! すっきりした!」

「焼却……。ありがとうございます!」

「これが、今回の報酬です!」

「ありがとう! またねぇ!」


メルは報告を済ませて戻ってきた!


「お腹空いたー! ご飯食べよう!」

「だな!」


こうして、メルの八つ当たりの日は終わった。

哀れ......魔物達......。

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