第18話 怪しい指名依頼
休みを開けて翌日。
悩みが吹き飛んで清々しい気分のジンは元気に活動を始めた。
「メル! 行くよ!」
「待って! ジン!」
慌てて付いていくメル。
冒険者ギルドに着いた。
「メルさん、おはようございます!」
「おはようございます! なんか今日は晴れやかな顔ですね! なんか吹っ切れたみたいな......」
「その通りなんです。依頼何かありますか?」
するとおもむろに依頼書を見せて来た。
「これ、指名依頼がコーザ・イルワツヤという貴族からきているんですけど、知り合いですか?」
「いえ、知りません」
「なんか、依頼内容は屋敷で話すから来て欲しいそうなんですよ......。指名依頼という形なので、断ればギルド側の印象も悪くなってしまうので、中々断れないんですよね」
「いいですよ! 行きます!」
「でも、怪しい所もあって、メルさんの名前も書いてあるんですよ。一緒にくるようにと」
「大丈夫です!」
ジンは自信満々に依頼を受けることに決めた。
なぜこんなにジンは自信があるのか。
それは、前日にシルフィと話した時に実力が足りない分は全部魔法で補ってしまえという答えにたどり着いたジン。
自分とメルに何かあったとき、今までいろんな魔法を使うことをセーブしていたが、セーブはしない。
と決めたからであった。
ギルドを出ると聞いた場所に向かう。
すると、大きいギラギラのした屋敷についた。
門の前に門番がいる。
「すみません。ギルドから依頼を受けて来ました。ジンといいます」
「お前が、ジンか。メルという者はその子か?」
「はい。そうです」
「入れ」
中に通されるジンとメル。
屋敷の入り口まで行くと、メイドがいた。
「お待ちしておりました。ご案内致します」
メイドについていき、部屋に入る。
何の変哲もない部屋に見えるが、ジンは違和感があった。
(この部屋だけ装飾がない......なぜだ?)
「きゃっ!」
後ろを振り向くとメルがメイドに連れていかれるところであった。
バタンッ ゴゴゴゴゴゴ
扉が閉まり、壁が開かれていく。
すると、そこには首輪をしたライオンのような身体に羽が生えているマンティコアがいた。
その横には昨日メルに絡んでいた男がいた。
「ヒャハハハハ! 俺に恥をかかせたお前にはAランクの魔物であるコイツの餌になってもらうぜ! この部屋には魔法が使えないように細工がされている! あの子は可愛がってやるよ! じゃあさよなら!」
違う扉から出ていったその男は外から鍵を掛けた。
『ガルルル』
部屋が光出した。
すると、マンティコアの唸り声が聞こえなくなる?
パクパク
(ん? 声が出ない。魔法が使えないってそういうことか)
(索敵) ブンッ
索敵魔法を起動してメルを探す。
1番奥の部屋に居るようだ。
さっきの男がメル近づいて行っている。
(奥の部屋までぶち抜く!)
ブブブブブンッ
5連の魔法陣が直列で出てくる。
(炎はダメだ! 風で行く!)
(ゴッドブレス!)
マンティコアを巻き込んで前方にある全てが横型の竜巻により、吹き飛ぶ。
ドガァァァァァァァァァァァン
奥の部屋どころではなく、外が見える。
索敵の反応は両者とも止まっている。
スタスタ歩いて奥の部屋に行く。
「おまえ! なっ! 何故魔法が使える!?」
「さぁな、何でだろうな? お前もこの壁みたいに穴開けられたいか?」
ブブブブブンッ
5連の直列魔法陣をコーザの前に出す。
「ひっ、ひぃ~」
バタッ
失神したようである。
ちょうどいいのでそのまま拘束して騎士団の詰所へ連れていく事にする。
「大丈夫か? メル?」
「う、うん! ちょっと……恐かったけど」
「そうか。一緒に帰ろうか」
「うん……」
しりもちを着いていたメルに手を差し伸べのジン。
その手をメルが握り。
一緒に帰ることにした。
コーザは魔法陣で浮かべて運び、騎士団の詰所へ行くと、ちょうどイーサンがいた。
「イーサンさん、この貴族に騙されてマンティコアに食べられそうになりました。そして、メルもコイツに乱暴されそうになりました。俺が裁きたい所ですが、我慢します。処罰をお願いします」
「わかった! コイツの屋敷は隅々見させてもらおう。余罪がさらに出てきそうだ!」
イーサンに処罰をお願いすると、メルと一緒に宿に帰る。手を繋いで。
宿屋につき、部屋に入ろうとすると
「ジン、今日は一緒の部屋で寝ちゃダメかな?」
ジンは困ったが、今日の事があって1人にするのも危険だと思い。
「あぁ、いいよ」
了承する部屋に入って寝る支度をする。
しばらくすると、メルがやってきた。
コンコンッ
「入っていい?」
「いいよ」
中に入ってくるメルにベッドを譲り、床に寝るジン。
「ベッドに寝ないの?」
「ベッドは使っていいよ」
「ごめん。ありがとう」
「いいよ。おやすみ」
「おやすみ」
――
次の日
目が覚めると、まだメルは寝ていたので井戸に顔を洗いに行く。
戻ると、メルも起きていた。
「おはよう。気持ちは落ち着いた?」
「うん。大丈夫になった」
「良かった」
「ありがと」
朝の支度をして昨日の事をギルドに報告に行かなければならない。
宿屋を出るとギルドに向かう。
ギルドに着くと、昨日の報告する。
「マリーさん、おはようございます。昨日の指名依頼なんですけど」
「昨日は本当に申し訳ありませんでした」
頭を下げるマリーに困惑するジンとメル。
「何故謝るんです?」
「騎士団から報告が来ておりまして、指名依頼と言いながら危害を加えようとしたと。その際マンティコアが放たれたとか」
「報告が来てたんですね。俺からも詳細に報告します」
そう言って昨日あったことを詳しく説明する。
「あそこの貴族は他にも色々な余罪が出てきて、取り潰しは確実だと思います」
「そうですか。俺達に付きまとわないなら、なんでも構いません」
「メルさんにも恐い思いをさせてしまったようで申し訳ありませんでした」
メルの方を向くと
「大丈夫でーす! マリーさんが悪い訳でもないし! ジンに慰めてもらいましたから!」
「そうですか。私にも何かできることがあったら、おっしゃってください!」
「はーい! ありがとうございます!」
マリーは話を続けた。
「これで報告は完了となります。今回の指名依頼は特別に達成したものとしてカウントすることになりました。ギルドマスターが謝罪の気持ちにと。本当によくぞご無事に帰ってきてくださいました!
それで、今日は依頼をお受けになりますか?」
「はい! 討伐依頼を何個かお願いします!」
「わかりました! それでは、Cランクの依頼を2つとBランクの依頼を1つお願いします!」
「はーい! わっかりましたー!」
手続きを済ませ、ギルドを出たジンとメルは討伐する為に、目的の魔物が出る南東の森に進むのであった。
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