第17話 忙しい休日

ゴブリンロード討伐を終えて少しの間休むことにしたのだった。


理由は討伐の時の5連の直列魔法を打とうとしたのをみて、メルに頭を冷やすように言われたのだった。


メルいわく

「ちゃんとジンが心の整理をつけないと、危なっかしくてヒヤヒヤしちゃうわ! 今回のだって、危なく拐われた人も消し炭になるとこだったわよ!?」


とのこと。

少し頭を冷やそうという事になったのだった。


メルは買い物を楽しんでくるそうだ。

「休みをゆっくり満喫しなさい」と言われたのだった。


(こういう時はシルフィ先生にでも話を聞こうかな)


思い立ったジンは騎士団の詰所へ行くことにした。

シルフィの家はわからないからである。


――


詰所へ行くと受付にいた人に聞いてみる。


「ジンといいますが、シルフィさんいらっしゃいますか?」

「団長ですか? ちょっと待ってください」


何やら見て確認している。


「あっ! 今日は非番の日ですね」

「そうですか。すみません。ありがとうございました」


詰所を後にするジンは、シルフィの家を聞く為アルフレッド商会に向かった。


――


「すみません。ジンといいますが、クリスさんいらっしゃいますか?」

「社長ですか? 少々お待ちください」


奥へ行く受付嬢。ここには居るようだ。

奥からやって来たのはクリスだった。


「ジンやないの! 何したん?」

「シルフィ先生のところに行きたいんだけど、どこが家なのかわからなくて……」

「騎士団の詰所の近くや! 一緒に行ったるわ!」

「ありがとう」


――


案内されて着いた家は騎士団の詰所のすぐ近くの豪邸であった。


「ここやで」

「ありがとう。助かった」

「あいよ! ほなな! また何かあったら遠慮なく来るんやで!」

「ありがとう!」


クリスと別れたジンは扉のノッカーを鳴らす。


コンッコンッ


すると執事が出てきた。


「すみません。ジンと言いますが、シルフィさんはご在宅でしょうか?」

「シルフィお嬢様のお友達ですか?」

「んー、そんな様なものです。ジンが来たと言って頂ければ分かると思います」

「かしこまりました。どうぞ。こちらで少々お待ちください」


豪華な椅子に案内されるジン。


(なんか落ち着かないな。さすが騎士団の人の家だな)


キョロキョロしているとシルフィがやってきた。


「ジンくん! 昨日は助かりましたわ! 今日はどうしたんですの?」

「ちょっと相談があって……」

「私に相談ですの!? すぐに部屋に行きましょう!」


嬉しそうなシルフィは、すぐに部屋に案内する。


「それで、ジンくんが相談なんてどうしたんですの?」

「いやちょっとこの前なんですけど、護衛依頼を受けた時にオークが5体出てきて、それを撃破するのに夢中になっていたら弓を持ったオークの不意打ちを許すという自体になりまして……」

「それが、なんの問題があるんですの?」

「いや、自分が油断したのが行けないとこの前も常に本気を出して取り組もうとしてたら、やり過ぎてしまいそうになって……」

「はぁ。そういう事だったんですのね」

「それで、メルに愛想つかれて1人でゆっくり休んでと言ってたけど、反省しなさいってことなんだと思って」


シルフィはホトホト呆れていた。


「ジンくん、変なところで頭が回らないんですのねぇ」

「ん? どういう事ですか?」

「メルちゃんは私の所に来るのを見越して1人にしたんだと思いますわよ?」

「それはどうして?」

「私に怒ってもらう為でしょうね」

「怒ってもらう?」


シルフィは立ち上がって腰に手を置いた。

すると、大きな声を出して叱りつけた。


「ジンくん! この世界の常識がまだ分かっておりませんわ! オークが5体、しかも弓持ちが居たら普通はBランクでも苦戦します! それを、Cランクの2人が乗り越えて帰ってきた! これは、異常な事です! いい意味でですよ!? 護衛対象も無事だったんですよね?」

「はい。無傷で」

「それの何が不満ですの?」

「でも、矢が外れたのはたまたま運が良かっただけで……」

「運も、その人の実力ですわ! 天が、神が味方してるんですわ!」

「そうなんですかね……」

「はぁ。なんでもできるが故の悩みなのかもしれないですわね」

「はぁ」

「まず! 経験不足ですわ! 冒険者で色々経験してみるのですわ! だから、即座に対応できない! 直感が働かないのですわ! なんでも出来すぎて、魔法に頼りすぎてるんではないですの!?」


この言葉には衝撃を受けた。

確かに、今迄魔法で何でもできたジンは困ったことがなかったし、何でも出来ていた。


だからこそ、第六感というよな直感が全く働かないのだ。


「なるほど、確かに魔法に頼りすぎだったかもしれません」

「ですわよ!」

「でも、俺は魔法しかできません! もう少し、魔法を理解して応用できればいいと思います」

「そ、そうですわ?」

「はい! なんかスッキリしました! ありがとうございます!」


そういうと部屋を出ていくジン。


「ジンくん!」


「はい?」


「また、何時でもいらっしゃって下さいですわ!」

「はい!」


返事をして去っていくジン。


宿屋に戻ろうとしたところで、捕まった。


「あっ! ジーン! いたー! 私に魔法を教えろー!」

「うっ。ソフィア……」

「なんだその顔は!? 魔法教えてくれるんだろー!」

「わ、分かったよ」


渋々承諾したジンは、ソフィアに魔法陣を教えることになってしまったのだった。


――


数時間後、ようやく開放されたジンは


大通りを歩いていると言い争っている声が聞こえてきた。


「おねぇさん、俺たちとあそぼうぜ~」

「いやです!」

「そんなこと言っちゃっていいの~?」


遠目からでもわかる。

絡まれているのはメルだ。


「ったくどこの世界にでもいるんだな。ああいうのは」


ため息を吐きながら、男達の頭上に魔法陣を出し


「ウォーター」


バシャァと水を被せる。


「うわっ! なんだ!?」 「つめてぇ!」


更に魔法陣を改変し、電気を流す。


「アップデート ショック」


バチッバチッ


「いってぇ!」 「なんなんだよ!? いてぇ!」


「神様の罰じゃないの~?」


メルが言うと周りの野次馬がワッと笑った。

居ても立ってもいられなくなった男達は慌てて逃げて行った。


「お騒がせしてすみませんでした~!」


メルがそう言うと、野次馬はバラけ始め、やがていなくなった。

その場には俺だけが残っていた。


「ジン!」


メルが駆け寄ってくる。


「ケガはないか?」

「うん! ジンが助けてくれたんでしょ?」

「バレたか」

「あんなことできるのは、ジンくらいしかいないも~ん」

「そんなことないと思うけどな」

「そんなことあるよ!」

「一緒に帰るか?」

「うん!」


一緒に帰るジンとメル。

シルフィに会いに行って相談したこと、ソフィアに魔法を教えたこと等、雑談をしながら帰った。

ジンの忙しかった休日は、終わりを迎えるのであった。

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