第16話 Bランク討伐依頼2

村の前までやってきた一行は集落の前で様子を伺っていた。


「中に人質いるかをまず確認するべきだよな?」

「そうですね。俺がやります」

「やりますったってどうするんだ?」

「こうします」


ブーンッ


頭上高くに魔法陣を出したジンは索敵を開始する。


「魔物以外の反応が3人居ますね。一番奥の小屋にいるので、それ以外は殲滅しましょう」

「ホントかい?」

「はい。なので、他の施設は破壊しても大丈夫です」


疑うイーサンにジンが言うが、信用してないようである。


「シルフィ、同じように索敵できるか?」


イーサンが話しをシルフィに振る


「ジンさんその魔法陣の説明をして下さる?」

「いいよ。ここは魔物以外という、指定の部分で……」


説明するジンの話を真剣に聞いている。

説明が終わると


「広範囲索敵」


シルフィは索敵魔法を起動する。

反応が頭の中に出てくる。


「確かに奥の小屋の中ですね。」


シルフィが言うと


「ふむ。なら、そこまでどう突破する?」


イーサンが聞くとジンは答えた。


「俺が門を突破します。その隙に入ってください。」

「破壊できるのか?」

「できます」

「頑丈そうだが……」


イーサンは分かっていなかった。

ジンの魔法は常識では測りしれない。


「行きます!」


ジンは実はガルさんとの事があってから、力を抜くことがいい事なのかどうかを悩んでいたのだ。そんな時に来た依頼。

手加減するわけがなかった。


ブンッブンッブンッブンッブンッ


5連の直列の魔法陣が出現する。

全てが炎魔法の魔法陣だ。

これが放たれたら集落全部消し炭である。


メルが声を上げる。


「待って! ジンやり過ぎよ!」


魔法陣が3個に減る。


「インフェルノレーザー」


ヒュンッ


極太の黒みがかった炎が発射される


ジューーーーーー


奥の建物まで一直線に何も無くなった。


「……」


呆然とする事情を知らない面々。


「ハッハッハッ! 流石だぜジン! 今のでも抑えたんだろう!?」


笑いながらザックが肩を叩いてくる。


「はい。メルに言われてやり過ぎなのに気付きました」


「かわらないなジンは」


呆れたように言うシルフィ。


「騎士団の皆さん、行こうぜ!」


ハッとする騎士団の面々と、ザック以外のパーティメンバー。


「行くぞ!」


「「「おう!」」」


乗り込んでいく騎士団の人達。

そしてデプトホープ。


戦いが安定していて、大量のゴブリンを倒している。


すると、ゴブリンキングが三体やってきた。


「私達騎士団が2体相手にするかい?」

「いや、一体でいい。そうだろ? ジン!」

「俺達で3体いけますけど?」


呆れたことを言うジンにザックが反論する。


「俺達にも働かせろ!」

「わかりました!」


ブンッ


「バーニングキャノン」


ゴウッ ドガァァァン


単発の威力の高い魔法で一撃でゴブリンキングを倒したジン達は、奥の建物へ向かう。


大きな反応がある。

これが、ゴブリンロードなのだろう。


ブンッ


シールドの魔法陣を展開したまま、小屋を開ける。


ドガッ!


魔法陣を殴りつけるゴブリンロード。

デカい。ジンの倍の大きさがある。


『ゴブーーッ!』


殴りかかってくるのをシールドで止めているが、後ろに拐われた人がいるため攻撃できないでいた。


バキッ


何回も攻撃を受け、魔法陣にヒビが入る。


「ジン、下がって!」


サッと下がるジン。


「バインド!」


ブンッ


2つの魔法陣に左右を挟まれ、魔法陣の間は結界が張られる。


「捕まえた!」

「メル! ナイス! 外に連れてって!」

「うん!」


外に結界ごと連れていく。


ブンッと魔法陣を出してメルの魔法陣に重ねる。


「アップデート」


「バーニング」


すると、結界の中が炎で包まれゴブリンロードが見えなくなる。

しばらくして解除すると、コロンと大きめの魔石が出てきた。


「こっちは終わったよ」


騎士団は、なんとかゴブリンキングを倒したようだ。


「こっちも終わったぜ!」


危なげなく終わらせたデプトホープの4人。


「おまえは、本当におかしいぜ? 2人でゴブリンロード討伐なんざ聞いたことねぇよ!」


ザックが言うと、ソフィアが聞いてきた。


「ねぇ、あんた達詠唱してなかったでしょ? 魔法士の団長は分かるわよ。長年勉強したんでしょうし。ジン達はどうして?」


「んー。産まれた時から出来たんで、わかりません」

「私は3歳くらい? からジンくんから教わってたからかなー?」


ソフィアよ、諦めるんだ。

コイツらは規格外なのだ。


「くぅ~。何でなのよ! 私にも教えなさいよ! ジン!」

「べ、別にいいですけど……」


迫るソフィアにジンが了承するが。


「ソフィア! やめろ! 後でにしろ!」


ザックに怒られているソフィア。


「分かったわよ!」


大人しくした所で、イーサンが号令を出す!


「騎士団は人質を救出! デプトホープとジンくん達は、残党の処理をお願いする!」


「「おう!(はい!)」」


手早く救出する騎士団の人達。

ゴブリンを処理するデプトホープとジン達。


すぐに処理は終わった。


「では、ここで休んでから行こう!」


イーサンの指示に従い野営する。


――


次の日


「拐われた人で歩けなさそうさ人が居るんだが、順番で背負っていくしかないかな?」


イーサンに相談された冒険者達。


「俺が背負いますぜ!」

「おでも持てる!」


ザックとロドルが言うが、ジンが提案する。


「俺が魔法で運べますよ?」

「魔力は大丈夫なのかい?」

「魔法陣を自然の魔力を使えば大丈夫なんで」


「……」


イーサンは絶句する。

ジンの言っているような魔法は現在、そんな技術は存在しないからである。


「お父様、ジンに任せましょう」


シルフィが、後ろからやって来て言った。


「頼めるか? ジンくん」

「はい」


ブンッと魔法陣を出す。


「シールド」


シールドの魔法の応用で移動できる乗り物と化す。


「こちらにどうぞ」


拐われた人達を乗せて出発する。

皆、拐われた人がいるため、一刻も早く返そうと足速になる。


帰りの魔物もほとんどジンが倒していた。


2日かけての依頼が終わりを迎えるという頃、シルフィが声をかけてきた。


「もうすぐ着きますわね」

「そうだね。一緒に依頼を受けれて良かったです!」

「私もですわよ! 今度家に遊びに来てくださいな!」

「いいね! 行かせてもらうよ!」


話していると王都に着いた。


「皆! お疲れ様だった! 拐われた人は私が連れて行って責任を持って帰す! 解散としよう! ありがとう!」


「「「ありがとうございました!」」」


ギルドに向かう、デプトホープとジン達。


「あんた達! 絶対無詠唱教えてもらうわよ!?」

「は、はい。時間がある時に……」


ソフィアに押されるジン。


「ソフィア!」


ザックに怒られるソフィア。

それ以降は言ってこなくなった。


ギルドに入る面々。


「マリーさん、依頼終わりました」


冒険者カードを差し出しながら言うと


「お疲れ様でした! 合同の依頼はどうでしたか!?」

「楽しかったです」

「交流が深まって良かったですね! これが、報酬になります!」


報告を終えたジンは、ザックに声をかける。


「ありがとうございました! ザックさん!」

「いやいや、こちらこそ楽させて貰ったぜ! また一緒に依頼受けようぜ!」

「はい! では!」


そう言って、宿に戻る2人。


見送ったデプトホープの4人は


「ザック! 無詠唱できるのは聞いてたけど、あの威力は反則じゃない!」


言ってきたのはソフィアだ。


「みればわかると思ってよ。言ったって信じないだろ? 見た方が早いじゃん」

「しかも、ジンなんて魔法陣3個出てたのよ? ずるいじゃない!化け物よ!」

「おい! 今のはホントにダメだ。それは、ただの侮辱だ。ずるではない。アイツの実力だ。才能だ。嫉妬するな」

「分かったわよ」


シュンとするソフィア。


「ちゃんとお願いすれば教えてくれると思うぞ?」

「そうね。頭を下げるわ」


今回の依頼、成長したのはジン達では無く、デプトホープだったかもしれない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る