第14話 Cランク護衛依頼

次の日


またジンとメルは冒険者ギルドへ来ていた。


「マリーさん、おはようございます」

「おはよーございまーす!」


「おはようございます。今日も依頼を受けるんですか? 皆さん2日に1回はお休みしたりしてますよ?」

「大丈夫ですよ。ランク早く上げたいんです」

「何か理由がおありなんですか?」

「おれの目標が戦争を終わらせることと、魔物被害を失くすことなんです」

「それは......世界規模のお話ですね。でも、ジンさんとメルさんならできる気がします!」

「ありがとうございます!」


話に熱くなり、依頼の話が後回しになってしまった。


「すみません。依頼ですよね! 今日は、ギルドマスターから次に依頼受けるときは護衛依頼を受けて欲しいと言伝がありました!」

「そうなんですね。大丈夫です。受けます。冒険者カードです」

「ありがとうございます! わかりました! では、資料を取ってきますね」


奥の方から資料を取りに行くマリー。

持ってきた資料を見ながら話を始める。


「この護衛依頼は、商人が西側にあるテキオ村に行商に向かうまでの護衛をお願いしたいとのことです」

「テキオ村ですね。わかりました。距離はどのくらいですか?」

「距離はこの前行ったイムネ村より少し遠いくらいです」

「なるほど、何時からの護衛ですか?」

「護衛の方がみつかったらすぐに出発するとおっしゃってたので、ガル商会まで行ってみてください。ギルドを出て左に行くと見えてきますから!」

「はい。わかりました。さっそく行ってみます」


依頼を受けると、ガル商会まで行ってみる。

ギルドを出て左に進む。

するとすぐに大きい看板が見えてきた。


中に入ると、受付嬢に声をかける。


「すみません。冒険者ギルドで護衛依頼を受けてきました」

「えっ!? あっ! すみません。あまりにお若かったので、驚いてしまって」

「いいですよ。当然の反応だと思います」

「社長に話してきますので、少々お待ちください」


奥に行く受付嬢を見送り、しばらく待っていると、黒く日焼けした少しお腹の出ているオジサンがやってきた。


「君たちかい? 護衛依頼を受けてくれたのは?」

「はい。そうです」

「若いねぇ。念の為、冒険者カードを見せてくれないかい?」

「はい。これです」

「うむ。確かにDランクだ。若いのに凄いことだ」

「いえ。まだまだ未熟です。ですが、依頼は必ず達成します」

「はっはっはっ! 良い目をしているね。護衛、頼むよ!」

「はい。いつ出発しますか?」

「今から準備をする。1時間後にまた来てくれるかい?」

「わかりました」


1時間後なので、また来ることにしたジンとメル。


「ねぇ、食糧とか、薬とか買っていった方がいいんじゃない?」


メルがもっともなことを言う。


「確かにそうだ。少し買い出しをしよう」


ジンがそういうと二人で買い物に出かけた。


1時間後、ジン達も準備を終えると再びガル商会へやってきた。

すると、乗っていくであろう、馬車が止まっていた。

積み荷を確認しているガルさんがいた。


「おっ! 来たな。さっき、準備ができたところだ。馬車の後ろに積み荷と一緒に乗ってくれ。御者は俺がするから」


「はい。わかりました」

「わかりましたー!」


メルは返事をするなり馬車に乗り出した。


「出発するぞー」


そう言うなり走り出す馬車。

念の為にジンは索敵魔法を起動したまま馬車の中に待機している。


王都の城壁を抜け、西に向かう。

道中、ガルが声をかけてきた。


「自己紹介がまだだったな。私はガルという。しがない商人さ」


謙遜した自己紹介をしているガルだが、冒険者ギルドと同じ通りに店を構えているところを見ると、しがない商人ではなく、大商会といえよう。


「俺はジンと言います。こっちが」

「メルでーす!」


「ジンくんと、メルちゃんだね。ずいぶん若いと思うんだが最近冒険者になったのかい?」

「はい。3日前に冒険者になりました」

「えっ!? それでDランクかい? そうとうな修羅場を潜ったんだね」

「いえ......ゴブリンだと思っていた魔物が偶々ゴブリンキングだったみたいで、倒したのでランクがあがりました」

「そ、そうなんだ。偶々単独で倒せる魔物ではないと思うけどねぇ......」


そんな話や雑談をしながら進んでいると

ジンの索敵魔法に反応があった。


「ガルさん止まってください!」


そう言うなり馬車を降りるジンとメル。


ズンッズンッ


道を塞いでこちらに歩いてくるモンスターがいる。

避けようにも街道から外れると馬車が走れなくなる。

撃退するしかないようだ。

しかし、ゴブリンキングより大きそうである。


「あれは、トロールかな?」

「トロールだって!? Cランクの魔物じゃないか! 逃げた方がいいんじゃないか?」

「大丈夫ですよ。動きが遅いです」


「私が焼却してやる!」


ブンッ


「バーニングレーザー」


太く赤い閃光がジューという音と共にトロールが灰になる。


魔石がポトッと地面へ落ちる。


「す、すごい威力だね! メルちゃんすごいんだね!」


ガルが褒めていると


「ジンの足元にも及ばないでーす!」

「そうなのかい!?」

「いえ、俺は魔方陣に詳しいだけですよ」

「へぇ。最近の若い子は勉強熱心だね」


また雑談しながら進む。

しばらくなにも来なかったが、次は反応が多い。


「ガルさん、また魔物です!」


馬車を止めて貰い外を確認する。

すると、オークが5体道を塞いでいる。


『ブヒー』


叫ぶなり棍棒を振り回し向かってくるオーク。


ブンッ


近づけないように、魔方陣を展開する。


「シールド」


ガーン


オークが来るのを防ぐ。

しかし、次々向かってくる。


「おれが、防ぐからメルは攻撃!」

「はーい!」


「バーニングレーザー」


1体撃破するが、広がりながら向かってくる。

これでは、一気に殲滅は出来ない。


「並列展開」


ブーン


シールドの魔方陣が分裂し、各オークを抑え込む。


『ブヒブヒー』


誰かに叫んでるようだ。すると


ヒュン ザクッ


矢が一本馬車に刺さる


「シールド」


慌ててガルさんの前にシールドを張る。


「索敵広域展開」


索敵の範囲を広げる。

見つけたようだ。


「ホーリーアロー」


ビュン ドスッ


矢が飛んでこなくなった。

索敵を行ったが、後は潜んでないようだ。


「バーニングレーザー」


最後の一体をメルが倒す。

ガルさんの元へ行く。


「大丈夫ですか!? すみません! 矢が!」

「あぁ。大丈夫だよ。私には来なかったし、馬車に刺さっただけで被害はないさ。さっきのはよく切り抜けてくれたね。矢が飛んできた時はもうダメかと思ったよ。」

「本当にすみませんでした。オークだと思って油断してました」


頭を下げるジン。


「いやいや、これがジンくん達でなかったら、普通のDランク冒険者だったら私は死んでいただろう」

「最初からもっと警戒していれば......」

「ジンくん、君もいい経験になったと思いなさい。私はなんともない。気に病む必要はないよ」

「はい。ありがとうございます!」


それからは魔物が出ることはなかった。

テキオ村に無事つき、その帰りも魔物が出ることはなかった。


王都に戻ってくると


「ガルさん、今日は不手際があってすみませんでした! 報酬はいりません!」

「いや、そういう訳には行かないよ。ちゃんと受け取らなきゃダメだ」

「しかし、危なく命を落とすところでした」

「いや、逆だよ。ジンくん達じゃなかったら、死んでいたよ。そう言っただろう。ギルドからちゃんと報酬を受け取りなさい」

「はい」


話を終えるとガル商会からギルドへと向かう。


「ジンくん!メルちゃん!」

「「はい?」」

「次の護衛も指名するからお願いできるかな?」

「「はい!」」


ギルドに着くと報告をする。

マリーに事情を説明するジン。

すると


「トロール一体ならCランクですけど、オーク5体でしかも弓を使う個体がいたなんて、Bランクです! よくぞ、無事に帰ってきましたね!」

「危ないところでした」

「ガルさんからも問題はなかった。命を救われたと言っていました。ジンさん、本当に無事でよかったです!」


「これは、今回の報酬と、冒険者カードです。今日からCランクです。ランクアップの条件を満たしました」

「もうですか?」

「大抵はここで時間がかかります。Cランクで終わる人が多いです」

「なるほど、頑張ります」

「はい! きっと、ジンさん達なら上にいけますよ!」

「「はい!」」


報告を終えて帰るジン達。


ギルドマスターが出てきてマリーに話しかける。


「遂にCランクになったか」

「はい。ここからが冒険者として左右されるところです」

「そうだな。潰れなきゃいいが」

「そうですね。信じるしかないです」

「だな」


これから、Bランクに上がるには試練がある。

それを乗り越えれないものが多い。

ジン達は乗り越えられるのだろうか。

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