第12話 初依頼2

「ん? あれは、親玉?」

「かなー?」


『ゴブッーゴブッ!』

手足をじたばたしながら、地団駄を踏んでいる。


「なんか怒ってる?火はもうまずいよね……」


ブンッ


「ウォーターカッター」


ビーっという音と共に水の刃が魔法陣から伸びる。しかし、ゴブリンの横に放たれた。


『ゴブゴブッ』


ジンを嘲笑っている。

外したと思っているようだ。

この魔法は後から任意で方向を変えれるのだ。


ジンはゴブリンの横に向けてた指をゴブリンを通り過ぎるようにスライドさせる。


ズリッ


ゴブリンが斜めに切断されずり落ち、灰になる。


再び、索敵すると人質以外いないようである。

中に入っていくジンとメル。


小屋の中に入ると服が乱れている女の子が2人居た。


「ジン! あっち向いてて!」

「は、はい!」


後ろを向くジン。


「助けに来たよ! もう大丈夫だからね!」

「た、助かるの? あのゴブリンは?」

「大丈夫! ジンが真っ二つにしたよ!」

「えっ!? す、凄いんですね」

「まず、服を直そうか」

「はい!」


2人とも服を直すと


「ジン! もういいよ!」


人質だった2人に向き直るジン。


「大丈夫?」

「はい。襲われてたところで、凄い音がして、凄い熱で熱くて」

「うん。ごめん」

「? いえ、助けて頂いて有難うございます」


「有難うございます!」


もう1人の幼い女の子もお礼を言ってきた。


「どう致しまして!」

「歩ける?」

「うん!」


ジンと手を繋ぐ女の子。


「そういえば、村の人?」

「はい! 姉妹で先程道に迷ってたら連れてこられちゃって……」

「そう。なら、都合がいいね。一緒に行こうか」


そう言って小屋の外へ出ると。

呆然とする2人。

それはそうだろう。あったものが跡形も無いのだ。


「さっ、行こうか」


歩き出すジン。

助けられた2人は呆然としながらついて行く。


無言でついて行く2人。


(全然喋らないな。相当、恐かったんだなぁ)


恐いだろう。

あの光景を見たらジンとメルのことを普通の人だとは思えない。


村に着くまで魔物も出ることなく、無事に村に着くことができた。


「さぁ、着いたよ! 俺達も村長さんに報告に行こう」


村長の家に向かっていると付いてくる2人。


「どうしたんだい? もううちに帰っていいんだよ?」

「違うの! ここが家なの!」


指さす先は村長さんの家である。


「村長さんのお孫さん?」


「「ただいまぁ!」」


「おかえり!セシル、エミリ、遅かったでわないか!」


「それがね……」


説明しているセシルを待つ。


「本当に有難うございました」


「まぁ、村が被害を受けてたのもゴブリンみたいですし、たまたまですが、良かったです!」

「しかも、話に聞くとゴブリンキングが出たとか? 本当にFランクの冒険者なんですか?」

「えぇ。正真正銘初依頼ですよ」


冒険者カードを渡す。


「本当ですね。あっ! 依頼達成の魔法を付けておきます」


ブンッ


冒険者カードに達成と書かれた。


「ありがとうございます! では、行きますね」


「お兄ちゃん、お姉ちゃんばいばーい!」

「「ばいばーい!」」


村を去っていくジンとメル。

王都に戻ってからの報告が残っている。


王都に着くと暗くなり始めていた。


「おっ! 帰ってきたな! どうだったんだ? 初依頼は?」


門番さんが話しかけてくれた。


「はい! 無事に終わってきました!」

「そうか! よかったな! お疲れさん!」


王都に入ると冒険者ギルドへと向かう。


「マリーさん、達成の報告に来ました」

「はい! お疲れ様でした!」

「それで、薬草はこれになります」

「はい! これはとてもいいとり方と保存の仕方ですね。報酬に色を付けます!」

「ありがとうございます!」

「それでゴブリンなんですけど……」

「初日にゴブリンを倒すなんて凄いですね!」


ジャラジャラ


魔石が入った

「こ、これは?」

「はい、実はイムネ村の犯人を追って行ったら、ゴブリンの村を発見しまして」

「そ、それは、大変!」


立ち上がって奥へ行こうとする


「待ってください!」

「早くしないと、ゴブリンキングがいるかもしれませんし」

「もう何も居ません!」

「えっ!?」

「ですから、ゴブリンはもう倒しました」

「た、倒した?」

「はい」


少し大きい魔石を取り出してマリーへ見せる。


「冒険者カードを見せて貰えますか?」

「はい」


冒険者カードを渡すと ブンッ と液晶のような物が表示される。


「確かに、ゴブリンキングが討伐されたことになってます。ゴブリンキングはDランクの魔物ですよ?」

「あー! 最後に出てきた大きいゴブリンがそれだったのかな? そうだったんですね。その割にはあっさりしてましたけどね」

「……」


マリーは絶句する。

完全にFランク冒険者の強さでは無い。


「ちょっと待っててください。メルさんも冒険者カード貸して貰えますか?」

「はい!」


奥へ行くマリーさん。

しばらく戻ってこないなぁと思っていたら、強そうな雰囲気のオジサンを連れてきた。


「ジンくんとメルちゃんだね?」

「「はい!」」


「詳しく話を聞きたいんだけど、ゴブリンの村があったとか?」

「はい。そうです」

「で、ゴブリンキングも居たと?」

「それは、気付かずただの大きいゴブリンだと思って倒しました。」

「ふむ。君達は今日からDランクだ」

「「えっ!?」」


「何でですか!?」

「普通はその規模だとDランク以上で討伐隊を組んで討伐するんだよ? それをペアで倒しちゃったんでしょ? Dランクでもまだ足りないくらいだよ」


最近ではなかった飛び級であった。


「はい! 冒険者カードです。あと、こちらが今日の報酬になります! 薬草の分は少し色は付けさせてもらいました! ゴブリンキングも倒してくれたのでその分が報酬に入っています!」


「ありがとうございます。おー。Dランクだ」

「ねー! やったねー! ジン!」


「ハッハッハッ!」


笑い声が後ろで聞こえる。

こんな飛び級をしたルーキーを笑えるのはジンとメルの実力を全く知らず、不正だと思っている者か、実力を把握している物である。


振り返ると


「お前達もうDランクかよ! そうだろうぜ! お前達がFランクなんてそれこそ詐欺だぜ!」


そう言うのはザックであった。

最初の試験をしたザックは2人の実力を正確に把握していた。


「なぁ!? だから言ったでしょう? タリムさん!」

「言われなくても、訓練所の有り様を見れば分かりますよ」

「?」


分かっていないジンとメルであった。


「まぁ、今日からDランクですから、明日からCランクの依頼でも受けてくださいね」

「? はい」


タリムが言うと疑問に思いながらも返事をするジン。分かっていないのだ。タリムはランクの上の依頼を沢山こなして早く上に昇っていって欲しいと、そう思っているのだ。


「では、また明日来ます」

「さよーならー!」


ギルドを出ていく2人。


取り残されたザックとタリムとマリー。


「はっ。アイツらやっぱりとんでもなかったなぁ」

「私何も聞いてないんですけど、どういう事なんですか?」

「あぁ、俺が試験官やっただろ? そん時に魔法を撃たせたんだけど、メルはすげー威力の炎魔法だった。ジンは一見大したことないコントロールがいいだけの光魔法だった。と思ったんだが、的を確認しに行ったら、外が見えたんだ。」

「はぁ? 外が見えるわけないじゃないですか!」

「まぁ、そうなるわな。でもな、分厚い壁を何枚もぶち抜いて、魔法は外までいってたんだ」

「……」

「でもよ、納得したろ? そういう奴らなんだって!」


こうして、衝撃の冒険者デビューとなった初依頼は幕を閉じた。

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