第11話 初依頼

朝の陽の光で目が覚めた。


「はぁー! 気持ちよく寝れたぁ!」


下に降りてオバサンに顔洗うところを聞くと裏に回ると井戸があるという。

裏に回って井戸で顔を洗い、食堂へと向かう。


すると、既にメルは整った姿で朝食を食べていた。


「おはよーメル」

「おはよー! オジサンに声かけると朝ごはんくれるよ!」

「おぅ」


「オジサン、おはようございます!」

「おう! 昨日から入ってくれたお客さんだな! ほれ! これ持って言って食べな!」

「ありがとう!」


渡された朝食を貰って席に座る。


「今日は早速、依頼受けるよね?」

「受けよう。何がいいかは依頼書見て決めよう」

「そーだね!」


2人は食べ終わると冒険者ギルドへ向かった。


「マニーさんおはようございます。依頼を受けに来たんですけど、掲示板見ればいいんですか?」

「おはようございます! もし、宜しければ私の方で幾つか選ぶこともできますが……」

「あっ、じゃあ、お願いします」

「はい! かしこまりました!」


少しの時間2人は待っていると


「おう! おまえら早速依頼受けるのか?」


話しかけてきたのは昨日試験をしてくれた、ザックだった。


「はい! 強くなりたいので!」

「強くなって悪いヤツを倒したいので!」


ジンとメルが答えると、昨日の魔法の威力を知っているザックは引き攣った顔をしていた。


「そ、そうか」


そう言うとカウンターの方に行きマニーに声をかける。


「なぁ、マニー昨日コイツらの話ギルドマスターから聞いたか?」

「はい! 何やらすごい魔法士だとか」

「あぁ、そんな感じだ、だからなEランクの依頼多めでいいぞ」

「えっ? はい! わかりました!」

「じゃあ、宜しくな」


マニーに挨拶するとザックは去って行く。


「じゃあ、頑張りすぎんなよ? 頼むから」


「ん? はい……頑張りすぎないようにします?」

「はーい! 力を抜いて行きまーす!」


この2人は意味を理解していないであろう。

ザックはこの2人が頑張ってしまったら、どうなるかということを想像してのアドバイスなのだが、緊張を解してくれていると思っているのだろう。


「ジンさん、メルさん、依頼を選んでみました」


「「はい」」


カウンターに行くと依頼書が並んでいた。


「まず、初めてなので、やって欲しいのが薬草採取です」

「薬草とはどういう物でしょうか?」

「そう言われると思って用意しております。こちらが薬草です」


植物図鑑を見せられる。

ギザギザなんだな。

これなら分かりやすいな。


「はい。覚えました。ありがとうございます」

「えっ!? もういいんですか?」

「はい! 覚えたので」

「もうですか?」

「はい! あ、根っこから取った方がいいんですか?」

「それはダメです! 葉っぱだけ摘み取って来て下さい! 根っこから取ってしまうとまた生えて来なくなるので」

「あーなるほど。わかりました」


(ふーん。ラノベとかは根っこからがいいとか言ってた気がするけど、現実は違うと……)


「では、次ですが、ここからはEランクの依頼になります!」

「もうEランクの依頼受けていいんですか?」

「はい! ひとつ上までは受けていいことになっているんです! ただ、いつもは最初はFランクの依頼だけにしたりするんですけど、今回は試験官のオッケーが出てましたのでEランクを多めにしています! 期待の新人って感じですね!」


楽しそうに言うマリーにジンもワクワクしていた。


「これが、ゴブリンの討伐依頼です」

「なるほど、Gですね」

「G? よく分かりませんが、放っておくと凄い数になるので、常設依頼となっております!」

「わかりました」


「それで、次が王都郊外にある、イムネ村の作物が盗まれる事件が度々ありまして、犯人を捕まえて欲しいとの事です」

「なるほど、目撃情報などはあるんですか?」

「イムネ村から北に逃げるのを見たと、そう言う情報があります」

「わかりました」


「では、冒険者カードを貸してください。依頼受託の手続きを行います」

「はい。お願いします」


説明を聞き終えると


「さっそく行くか!」

「はーい!」


2人は冒険者ギルドを出て東のイムネ村を目指す。

選んでくれただけあって、村までの道中に薬草が生えていて、ゴブリンも出るんだそうだ。


城壁の門を潜る。


「あれ? この前クリスと一緒にいたにいちゃんじゃねぇか。もしかして依頼か?」

「はい。初依頼です」

「そうか! 気をつけて行ってこいよ!」

「ありがとうございます!」


東の方向へと向かって進みながら薬草を探す。

十数分歩いた頃


「あっ! あれじゃないか?」

「そう見たいね」

「よし。ナイフで切って取ろう」

「えっ? ブチッと葉っぱ取ればいいんじゃないの?」

「こういうのって、また早く生えてくるように綺麗な断面で摘み取って行った方がいいと思うんだよね」

「ふーん。なら、私もそうしよう」


2人で周りに生えている薬草を採取する。

そして丁寧に麻袋へいれる。


「あれ? 何時もの異空間の方が傷つかないんじゃない?」


メルの言うことももっともである。

しかし、ジンも色々と考えているようだ。


「そうなんだけど、提出する時にそのまま異空間から出したら大騒ぎでしょ?」

「あー! 確かに!」

「だから、ちゃんと丁寧に袋にしまってるんだ」

「へぇ、ちゃんと考えてんのね!」

「そりゃ、メルに迷惑かけれないし……」

「ふふふ。そっか」


それからは黙々と採取する2人。


「よし、こんなもんかな?」

「そうねー」


薬草の採取を終えると再び東のイムネ村を目指して歩き出す。


ガサッ 「ホーリーアロー」 『ブキッ』


「ん? 索敵にも引っかかってたから見る前に倒しちゃったけど、これはGだな」

「ねぇ、そのGって呼び方はなんなの?」

「忌々しいからこその呼び名さ」

「なんか面白いから私もそー呼ぼー」


灰になったゴブリンから魔石を回収する。


再び歩き出す前に


「ちょっと索敵の魔法陣上に出しとこうかな」


上に出すことで魔力が行き渡り広範囲に索敵が可能になるのだ。

これも、ジンが研究して分かったことである。


「ん? ストップ! 3匹来る。メルも1匹やってみる?」

「うん! 倒す!」

「お、おぅ」


ガサッ


ゴブリンが3匹現れた。

ここは森の中である為、炎の魔法は普通は使用しない。山火事になってしまう可能性があるからだ。


ブンッ


メルが魔法陣を展開する。


「あっ! メル! 炎のまほ「バーニングレーザー」うは使うな。って遅かった」


ジンは慌てて空に大きな魔法陣を展開する。


「ウォーターレイン」


ザーーーーーー


レーザーが通ったあとの炎が鎮火して行く。

しかも、一体と言ったのにも関わらず気合を入れすぎたようで三体は消し炭。

そして随分奥までの見通しが良くなった。


「メルー。ダメじゃないか! 森の中で炎の魔法を放ったら! 火事になるだろう?」

「うぅー。ごめんなさい」


俯きながら謝るメルを見て、こういう顔も可愛いんだよな。と思ってしまい、慌てて思考を変える。


「いや、早くに言っておけばよかった! うん! しょうがない!」

「うん! 次は気をつけるね!」

「ゴブリンが居たあたりに……」


「あっ! あった」


3個の魔石が落ちていた。

魔石は魔法では壊せないのだ。

物理的に壊すしかない。

それがこの世界の常識であった。


「これで、4匹だ。1匹見たら100匹いると思えと言われるGだからなぁ。これは、もしかして結構な数居るんじゃないか?」

「1匹見たら100匹いるの? Gうざーい」

「だろう? しかも女好きときた。放ってはおけないな」


お昼にと買っていた干し肉をかじりながら、ズンズン進むジンとメル。

そろそろイムネ村が見えてくる頃である。


「あそこがイムネ村だな!」

「おーなんか畑が荒れてるね?」

「そうだな。これは被害は深刻だな。まずは村長さんに話を聞いてみよう」


そういうと1番大きい家に向かって行った。


「何処が村長さんの家かわかるの?」

「大抵1番大きい家だろう」

「なるほど!」


コンコンッ


「すみませーん! 冒険者ギルドから来たものですがー!」


「あーはいはい。どうも」

「ギルドから作物が盗まれるとお聞きして、犯人を探しにやって来たんですけど、逃げるのを見たとか?」

「そうなんじゃ、ここから北に逃げていくのを村の者が見たらしいのじゃ」

「姿は見たんですか?」

「いやー、夜だったために分からなかったらしいが、人のような影が数人で逃げたそうじゃ」

「なるほど! わかりました! ありがとうございます!」


先程の作物の所に行くと、足取りを追うことにした。

ここから北に逃げたという目撃情報を元に索敵魔法をかける。


ブンッ


空に魔法陣をうかべ北を向かせる。

これで索敵範囲を絞込み、長い距離の索敵を行うのだ。


「なんかいっぱい居る」

「ん? いっぱい居る?」

「何かの巣みたいだ」


「ここから王都くらいの距離を北に行くとその場所がある。まだ全然暗くなるまで時間があるから行ってみよう!」

「うん! 行こう!」


早歩きで向かう2人。

村から数十分歩くと、通常の索敵魔法に反応があった。


「ストップ! 近いから慎重に」

「うん。わかった」


ゆっくりと前に進むジンとメル。

草むらから覗くと村のような物がある。


ブンッ


目の前に魔法陣を展開し水のレンズを作る。

これで望遠鏡の役割をするのだ。


見てみるとGであった。

Gが村を作っていたのである。


「メル、Gの村だ」

「えっ!? アイツら村とか作んのー?」

「分からないが、見張りしてるのがGだ」

「うざーい! 村の被害絶対それじゃん! 焼却しよう!」


普通のFランク冒険者は、こういった場合は即座に冒険者ギルドに報告して、討伐隊を組んで、討伐するのだ。

もう一度言う、普通は。

この子らは普通じゃなかった。


「そうだな! 菌が繁殖してるかもしれない! 焼却だ!」

「よしやるぞー!」


気合を入れ始めたメル。

今にもブッパなしそうである。


「ちょっと待った! 人が攫われてるかもしれない!」

「あー! たしかにー!」


索敵を応用する。

魔物以外の生き物を索敵するのだ。

村では魔石が埋まっている生き物を通さないような結界にしたので、その逆である。


魔方陣を上に出して索敵魔法を起動する。


「真ん中に2人居るな」

「場所分かればさ、後は焼却していいよね?」

「確かにそうだな! 真ん中以外は焼却しちゃおう。まず、門を壊さないとね」

「はい! お任せ下さい!」

「よし! 先行部隊! 突入!」


「よーし!」


気合を入れるメル。


ブーーン


いつもの2倍ある魔法陣を展開する。

魔法陣が赤くなっていく。


魔力を魔法陣に充填する魔力が多いと属性の色に光るのだ。


「ちょっ! 真ん中に人居るからね?」

「ちゃんと外すよー」


「バーニングレーザー」


辺りが赤く染まる。魔法陣から放たれたのは真っ赤な極太のレーザーである。


ドウッという音と共に放たれたその魔法の通り過ぎた後には魔石しか残っていない。

幸い上から下に斜めに放たれたので、遠くまでの被害は出ていない。

右半分が全壊している。

真ん中はギリギリそれていた。


『ブギーッ』


中が騒がしい。


「俺も1発行くぞぉ!」


ジンも気合いが気合いが入ってしまう。

何せGは人類の敵なので。


ブーンブーン


残りの左半分の上空に2つの魔法陣が縦並びに展開される。

ジンが開発した直列魔法である。

下に炎魔法、上に風魔法を設置し起動する。

風魔法の方向を上に向けると、上昇気流が発生し、下の炎も巻き上げるのだ。

結果、魔法陣の下は炎で更地になるのだ。


「バーニングストーム」


ゴーーという音と共に炎の渦が巻き起こる。

ジンとメルのところまで熱気が来る。


「ねぇ、ジン? これって真ん中にいる人熱いんじゃないかなぁ?」

「はっ! 考えてなかった! やべぇ!」


慌てて魔力の供給を切る。

段々終息して行く炎。

すると真ん中の小屋のようなものから大きいゴブリンが出てきた。


ゴブリンキングであった。

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