王都編

第10話 プロローグ

「さぁ、着きましたでぇ。ここが、王都や!」


「ここが王都かぁ」

「なんか、凄いね」


2人は城壁を見上げている。

入口の検問を通るまではまだ、中は見れない。


「どないや? 凄いやろ?」

「うん。凄いね。こんなに大きい壁で覆ってるんだねぇ。結界張ればいいのに……」

「そうだね。そんなに魔法陣自体は難しくなったよね?」

「そうだねぇ」


そんな会話をしているジンとメルを見ていたクリスが言及する。


「ジン! メル! 今言ったことは、ぜっっっっっっったい王都の中では言うなよ! 下手したら不敬罪で打首になるぞ!」

「そうなんだ! 言わないようにするね!」

「ふぅーん。まぁ、ジンを打首に出来るとは思えないけどねぇ」

「メル! 戦争になるぞ!」

「勝つのはジンだけどね?」

「あーもう! 良いから言っちゃダメだぞ!」

「「わかった」」

「分かればいい!」


検問の順番が来た。


「おう! クリスじゃないか! 戻ってきたのか?」

「えぇ、一緒に村の若い者が冒険者になりたいという事で連れてきたわけですわ」

「おぉ! そうか! 冒険者ギルドなら入口の案内板に書いてあるから、見ていくといいぞ!」

「わかりました。ありがとうございます」


クリスが騎士とやり取りを終えると中に入っていった。


「再び、ここが、王都や!」


「へぇ~凄い人だね」

「人が多いね」


ジンとメルも人の多さに驚いている。

ジンは前世の記憶があるが、久しぶりにこれだけの人を見たので驚いているのだった。


「ほな、行こうか」


先頭を歩くクリス。人に当たらないように歩くだけで大変なくらい、人が多いのである。


少し歩くと大きな建物が見えてきた。

盾に剣がクロスしてあるマークが着いている。


「ここが、冒険者ギルドや!」


「ここが……大きいな」

「この中にも人が凄いの?」


「まぁ、入ってみよか」


中に入ると外ほどではないが、やはり人が多い。

クリスはカウンターに歩いていくと空いている受付嬢に話しかける。


「すんません! 冒険者登録がしたいんやけど」

「はい! では、こちらの紙にお名前と得意なことを記載してください!」

「あぁ、ワイやなくて、この子らが登録するんよ」

「失礼しました! そちらの子達はお幾つでしょうか?」

「この前成人したんや」

「なるほど! それでは、問題ありません! この紙に記入しなければならないのですが、代筆が必要ですか?」

「大丈夫や! この子らはそれはそれは賢い子らでな!」

「そうでしたか! それでは、記入をお願いします!」


話終えると受付嬢は用紙を渡してきた。


この世界ではお金のない家の子は学校に行けない。

そうなると文字が書けない、計算が出来ない、そんな子供が多くいる。

だから、念の為聞いてくれたのであろう。


記入を終えると、用紙を返す。


「はい! お二人共魔法がお得意なんですね! 一応なんですが、試験がありまして、ちょっとお待ちください」


席を立つと奥に伝えに行く。

すると、奥の方からちょっと強面の青髪短髪のお兄さんがやってきた。


「君達か? 冒険者登録をしに来たのは?」

「はい。ジンといいます」

「はい! メルです!」


「うむ。俺はザックという。今回の試験官を努めさせてもらうC級冒険者だ。さっそく訓練所へ行こう」


訓練所に来ると、試験の説明を始めた。


「まず、試験の前に冒険者というのは困っている人の依頼を受けたり、魔物から一般の方を守る。そういう仕事だ。だから、ある程度の強さがないと務まらないんだ」


そう言うとおもむろにポケットからカードを出した。


「これは、冒険者になると発行される冒険者カードだ。俺のはCと記載されているね? これはランクといって、冒険者としての強さの指標となるものだ。Fから始まってE、D、C、B、Aとなって凄い人でもAランクだ。Sランクっていうのはホントに英雄のような人がなる」


ここまではいいか?と聞かれて頷く2人。


「では、試験を始めよう。 2人は何が得意だ?」


「「魔法です」」


「2人とも魔法なのか? ジンは剣術ではなく、魔法なのか?」

「はい。そうですが、可笑しいですか?」

「いや、可笑しくはない。ただ、珍しいと思っただけだ。男は大抵、剣を振りたがる」

「体動かすの苦手なんで」

「そうも言ってられんがな。では、メルから始めるか!」

「はーい!」


訓練所の奥の方へ行く、すると的があった。


「あの的目掛けて得意な魔法を打ってくれ」

「はーい!」


「それ! バーニングレーザー!」


メルは手を前にかざすと魔法陣から極太の炎のレーザーが射出される。


ビューーン  ズガァァァァァン


的が全壊してしまった。


「……おい。詠唱したか?」

「してませーん」

「なぜ、無詠唱で打てる?」

「ジンもできまーす!」

「なに!? しかもなんなんだあの威力は!?」

「えっ? 威力抑えましたよ?」


「メル、もっと抑えないとダメだよ! メルは出力が強いんだからさ!」


メルに駆け寄ると注意を始めるジン。

的を設置し直し、戻ってくるザック。


「ジンもやってみて貰っていいか?」

「はい」


「ホーリーレーザー」


小さな魔法陣が展開され細いレーザーが射出される


ピチュン ジュー


見ると的の中心を射ている。


「また無詠唱……」


的のある所へ歩いて行くザックはある事に気付く。

壁に穴が空いているのだ。

穴を除くと遠くに光が見える。

外まで貫通しているようだ。


訓練用にぶ厚い鋼鉄で作られているはずなんだが、一体誰がこんな穴を何の目的であけたのか。


疑問に思っていると、ん?ふと穴の延長を後ろを振り向く。すると、的の穴が見えた。

どうやら、先程の魔法でできた穴だったらしい。


「あいつの方が出力おかしいじゃねぇか」


文句を言って2人の元に戻る。


「2人とも合格だ。これだけ魔法が使えれば問題ないだろう。結果を伝えてくるから、受付の近くで呼ばれるまで待っててくれ」


「「はい」」


2人は受付の近くに戻る。


ザックは早足で報告に向かう。


コンコンッ


「誰だい?」


「ザックです。冒険者の試験が終わったのですが、ちょっとその件でタリムさんに報告が」


「入っていいよ」

「失礼します」


「それで? わざわざ報告とは何かな?」

「それが、無詠唱で魔法を使う2人でして」

「無詠唱!? 歳は?」

「この前成人になったばかりとの事です」

「何処から来た子達?」

「そこまでは……」

「そう。わかった。気にかける様にするね」


「いや、その……」

「まだ何かあるの?」

「一人が異常でして……いや、2人ともか……」

「異常って言うと?」

「女の子の方は魔法の威力が凄まじいんですよ」

「それは凄いね!」

「で、もう1人の男の方なんですが……壁に穴をあけました」

「ん? 何処に穴をあけたって?」

「壁です」

「訓練所の?」

「はい」

「あははは! それは異常だね!」

「おれに修理の請求来ないですよね?」

「大丈夫だよ。こっちで直すから」

「なら、よかったです! では、以上です! 失礼します!」


ザックが帰った後でタリムは訓練所に見に行った。

的の後ろに穴が空いてるのを発見する。


「これ分厚い筈なんだけど……」


そう言いながら穴を覗く。


「ザックのやつちゃんと報告して欲しいねぇ。ただ1枚の壁に穴空いただけだと思ってたら……外まで貫通してるじゃないか。これは、とんでもない新人が入ってきたね」


――


受付で待っていた2人


「ジンさん、メルさん」


「「はい」」


「こちらが冒険者カードになります。無くさないようにして下さいね! 再発行には金貨1枚掛かりますので!」

「はい。ありがとうございます。あっ、明日からまた来ると思うんですけど、なんてお呼びすれば?」

「私はマリーよ! 宜しくね!」

「はい。では、また明日。マリーさん」


受付を離れるとクリスが待っていた。


「終わったんか?」

「はい。ありがとうございました。案内してもらって」

「えぇよ。ほな、後は宿屋に行こか。おすすめの所があんねん」

「はい。是非お願いします」

「行こー!」


元気のいいメルを連れてクリスとジンは宿屋へ向かった。

大通りより1本中に入った落ち着いた通りに佇む老舗のような宿屋であった。


「ここや!」


そう言うと中に入っていく。


「まいど! おおにきー」


「あら! クリスさんじゃありませんか。お戻りになってたんですね」

「さっき、戻ってきたところや。今日はこの子らを泊めて欲しくて連れてきたんや」

「「よろしくお願いします」」


「あら、出来た子達ねぇ。しっかりしてる。幾らでも泊まって行って頂戴!」

「では、一先ず1週間お願いします」

「はいよ。1週間1部屋ね」

「あ、いえ、1週間2部屋です!」


「1部屋でいいじゃん!」

「よくない! 2部屋でお願いします! お金はあります!」


メルが1部屋を推してくるが何としても、2部屋は死守したいジン。

女性に免疫がないジンは、同じ部屋になんかなったら気になりすぎて寝れないのだ。


「あははは! 仲がいいねぇ。わかったよ、2部屋を1週間ね。前払いだけど、大丈夫かい?」

「問題無いです」


支払いを終わらせると、クリスが帰るところであった。


「ほな、また何かあったらアルフレッド商会まで来るんやで!」


「はい! ありがとうございました」

「ばいばーい!」


去って行くクリスを見送って宿屋のおばちゃんに鍵を貰う。


そして各自の部屋に向かう。


「じゃあ、また明日な」

「またねー!」


部屋に入ってベッドに寝っ転がる。


疲れていたのだろう。

すぐに寝息をたて始めた。


こうして王都の1日目が終わった。

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