第3話 村の発展

ある時、ふっとジンは思った。

魔法陣でくらしもよくできるのではないだろうかと。

そう思い立ち、魔道具を作成し始めたのだった。


「母ちゃん、夜に火を使わない明かりがあったら、便利だと思う?」

「そうねぇ。子供達には危ないし、あったら便利だと思うわよ?」

「そうだよね! わかった!」


走って部屋に行くジン。それを見送ったユイは不思議に思いながらもまた何かするのかな?と期待していた。

部屋にやってくると拾ってきた石に魔法陣を描いていた。


「ここをこうして。ここにこの模様を描いてっと」

「あとは、大気中から自然の魔力を吸収するようにして......できた!」


思いついたのは、物質に魔法陣を描いて自然の魔力を使用して恒久的に魔法を発動させるというもの。

現在のこの世界の研究でさえ恒久的な魔法の発動は誰も到達できていない領域であった。

この魔法陣だけで、どれだけの価値があるのか、ジンは全く理解していなかった。


「ねぇ、母ちゃん! これに魔力流してみて!」

「ん? この石に魔力を流せばいいのね。わかったわ」


ユイが石に魔力を流すと


ピカーッ


凄い光を放って辺り一面が明るくなった。


「きゃああ!」


目を強く閉じても光がわかるくらいの光量であった。

ジンは素早く石を破壊した。


「ごめん! 母ちゃん大丈夫!?」

「だ、大丈夫よ。驚いたわ。今のは何なの?」

「うん。魔道具作ってたんだけど、魔力を吸収しすぎて光りすぎちゃったみたい。ちょっと調整してみる」


そういうとまたジンは部屋に籠り始めた。


「ま、魔道具? 家の子魔道具なんて作って......天才ね。ふふふっ」


ユイも親バカなのであった。


――


そんなことがあってから数日後。

ジンは村長さんの家に来ていた。


「そーんちょーさーん」

「はいはい。どちらさんかな」


バタンッ


「おぉ! ジンか。今日はどうしたんだい?」

「村長さん! これを町に設置してみない?」

「ん? こんな石ころをどうして設置するんだい?」

「まあ、見てて」


ジンが石に魔力を流すと、石が光だした。しかも、いつまで経っても光が止まることはない。


「ね? これ便利じゃない?」

「こ、これは何なんだい? 普通の石に見えたが、どうしてこんなに明るく光るんだ? しかも消えない」

「これはね、石に魔法陣を描いて、魔道具にしたんだ。石はタダだからいくらでも作れるし、いいかなと思ったんだ!」

「素晴らしい! ジン! 是非使わせてくれ!」

「喜んでくれてよかった! もう一回魔力を一定量流すと消えるんだよ」


そう言って魔力を流すとまた石へと戻る。


「こりゃ凄いぞ! 村の中に設置しよう。何個あるんじゃ?」

「いっぱいあるから、足りると思うよ!」


そう言うと


ブンッ  ガラガラガラ


魔法陣が空中に現れて石が落ちてきた。


「ジ、ジン! その魔法はなんじゃ?」

「ん? これ? 異空間に繋がってて、いっぱい物を仕舞えるんだ! 便利だよ?」

「......空間魔法............ハッ! 何かとんでもないものを聞いた気がする」


あまりにジンの魔法が衝撃的だった為に、村長は立ったまま一瞬気絶していて記憶がとんだようである。


ジンの活躍により、村はこの日から夜も明るい村になり、魔物被害が格段に落ちるのであった。


ーー


また別の日、ジンは武器の事を考えていた。

ダンの持っている剣を改良すればもっと安全に魔物を狩れるのではないかと。


「ねぇ、父ちゃん。剣がもっと切れ味がよかったら、楽に魔物を狩れると思わない?」

「ガッハッハッ! そうだな! しかし、鍛冶師も家の村にはいないからな! しょうがないんだ!」

「そっか! わかった!」


そういうとジンは外に飛び出して行った。


「元気だな! ジンは」


ダンはこの時何もわかっていなかった。

ジンがやろうとしている技術は王都でもできるのは片手で数えるくらいしかいないものであるということを。

外から帰ってきたジンは木の棒を抱えて部屋に籠った。


「なぁ、ユイ。ジンは今度は何をしようとしていると思う?」

「さぁ。私にはジンのやることは想像ができないわ。でも、あなた、ジンに何か聞かれたんじゃない?」

「ん? あぁ、聞かれたな。剣がもっと切れ味があったら魔物が楽にかれるか? とかなんとか」

「もしかして、あれをやろうとしてるのかしら......」

「あれっていうと?」

「王都の魔法士の極一部の人ができる付与魔法よ。魔法陣を描かないで身体強化の要領で物体に魔法陣を定着させるのよ」

「そりゃおまえ! 王都の極一部しかできないことだろう?」

「それを言ったら、この前の明かりなんて誰もできないわよ?」

「そうなのか? おれはてっきり誰でもできる物かと......」

「魔力をずっと流して光らせることは可能ね。でもね、勝手に自然の魔力を吸って光らせるなんて誰にもできないわ。いえ、魔法陣を理解できればできるんでしょうね」

「ジンは、とんでもない天才だな!」

「えぇ! そうね!」


結論がジンは天才だということで落ち着くあたりがホントに親バカである。

しかし、こんなに異例のことをやってのけるジンを愛してくれる両親がいてジンは幸せである。


ーー


そんな会話から数日たったある日


「父ちゃん! これ握ってみて!」

「ん? どれ? 貸してみろ」


そう言って受け取ったのはいつも剣術の練習に使用している木剣であった。

しかし、受け取った瞬間それは起きた。


ブーン


木剣の持ち手より上の部分が風を帯びたのだ。


「それを、そこの岩に軽く振ってみて!」

「あ、あぁ。こうか?」


ビュン


スパァーン ゴゴゴゴゴゴッ ズズゥーン


「なんじゃこりゃ!?」

「うん。うまくいったみたいだね」

「これはどうなってんだ!? 俺が魔法を使った?」

「人って誰もが魔力を持ってるでしょ? だから、少し魔力を吸収して魔法を発動するようにしたんだ!」

「こりゃ、魔法剣だろう?」

「あっ、もうこういうのあるんだ? ならよかった。あんまり使ってても目立たないね!」


そういうジンであったが、問題は大有りである。

まず、こんな田舎では魔法剣なんて持てる者はいない。なぜなら、金貨何百枚とするからだ。

ちなみに、平均的な村民のひと月の給金が金貨1枚である。


そこに、音を聞いたゲイルがやってきた。


「おいおい! こりゃあなんだ? ダンがやったのか!?」

「俺がやったと言えばやったんだが......」

「すげえじゃねえか!」

「お前もできるぞ? これを使えばな」

「はぁ? その木剣でなにができるって?」

「まあ、持ってみろよ。ほれ」

「お、おう」


受け取ったゲイル。ブンッと音を立てて木剣の周りに風を纏う。


「なんじゃこりゃあ!?」

「まあ、ほら。そこの岩に振ってみろよ」

「お、おう。」


ビュン


スパァーン ゴゴゴゴゴゴッ ズズゥーン


「ほら、できただろ?」

「おい、これって、魔法剣だよな?」

「あぁ。そうだよな」

「これ誰からもらった?」

「ジンが作ったらしい」

「作った? ジンが? アッハッハッハ! 頭おかしくなったか!?」

「......」

「えっ? ホントに?」

「ゲイルさん、ホントに俺が作ったんだよ!」

「おう。そうか。家のメルも天才だと思っていたが、ジンも天才だな!」


ダンとユイも親バカだが、ゲイルも親バカを発揮している。


こうして、この村は異常な発展を遂げ始めることになる。

そして行商人が訪れた時、異常な光景に驚愕するのである。

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