第2ゲーム 前編 『地球』×『伝説の勇者』
第45話 虐殺教室
「あー!もう絶対に死んでるよー!」
坊主頭の男子高校生が机に突っ伏しながら諦観じみた声を上げる。彼の視線の先には、キリュウインという苗字の地味な女子生徒の席がある。
「あんな地味なやつのどこが良いんだ?」
同じく坊主頭の男子高校生が苦笑いで尋ねると、ムッとした様子で言い返す。
「キリュウインさんは、隠れめっちゃ美人だぞ!」
「何だよ。それ」
「良いか!?メガネを外して、前髪を上げた時の顔!めっちゃ可愛かったからな!」
「知らねーよ!」
「あー!もったいねぇ!」
「まー、たしかに、スタイルは良かったよな」
そんな風にザワザワとしている教室には、空席が3つある。一つはケント、一つはキリュウイン、最後はユウタの席だ。
古谷市を騒つかせているテロの犠牲になったと思われている3人である。
「はーい!ホームルームを始めるわよー!」
そんな騒がしい教室も、監督者である教師が来ると少しは静かになるようだ。
「…ん!?」
こっちゃんとの愛称で親しまれている先生は、空いている机の一つに、花瓶が置かれていることに気付く。
「ちょっと!誰!?こんなことしたの!?」
先生が気付くと、微かに教室に笑いが響く。
「まだ!スズキ君達が生きているかもしれないのよ!?」
教室を見渡しながらそう叫ぶ先生だが、彼女の声を鵜呑みにしようとする生徒はいない。
他の教室にも行方不明者はおり、中には凄惨な状態で見つかったものもいる。3人が行方不明のままなのは、死体が酷い状態過ぎて判別ができないだけであろうというのが、みんなの見解であった。
「もう!」
先生は返事のない生徒達へ鼻息を荒くしつつ、そのままユウタの机から花瓶を持ち上げると、教卓まで移動していく。
「あら?」
そんな時だ。
教室の入り口がガラリと開く。
「ユウタ君?」
教室の入り口に立っているのは、大きくイメチェンをしたユウタだ。髪をオールバックにしており、どこか尊大に見えるようなオーラを纏っていた。
「うは!!あいつ!生きてるぜ!!」
「何だよ!あの髪型!ウケる!!」
「うわ!キモ!なんかすごいキモくなってない?」
「何、あの顔…なんか悲劇のヒロインぶってない?」
「ウケる!ヒロインじゃねーし」
死んだと思われているユウタの出現に教室が騒ついている。そんな中、平然とユウタは背負っていたリュックサックを地面に下ろすと、まるでボーリングの球を床に置いたようにゴツンという音が響く。
「ユウタくん?何をしているの?」
地面にリュックを置いて、中から何かを取り出しているユウタへ先生が歩み寄っていく。そして、彼女がユウタの取り出したものに気付くと…
「へ?…きゃぁーあぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」
先生は雄叫びのような大声を轟かせて尻餅をつく。彼女の奇声に、教室の生徒達へ緊張が走る。
「え?」
「なになに!?」
「「うあぁぁわぁぁああ!!!」」
そして、先生だけではなく、最前列入り口側の生徒も一斉に席を立って、教室の後ろまで下がっていく。
「…」
そんな中、スタスタと教卓の前まで進むユウタ
彼が手に持っているものを教卓の上に置くと、すぐに教室の中は阿鼻叫喚に包まれる。
「「きゃああああああぁぁぁあああ!!」」
「「うあああああ!!!」」
苦悶の表情を浮かべたケントの頭が教卓の上に置かれており、それを見た教室の生徒達は、一斉に席を立ち、教室の外へ出ようとし始める。
中には、ユウタが教卓の上に置いたものが偽物だろうと思っているのか、ニヤニヤとしながら成り行きを見守っている生徒もいる。ケントの取り巻き達だ。
「開かねーぞ!!」
「おい!!退け!!」
「くそ!!」
「開けろ!!おーい!」
教室の出入り口は固く閉ざされており、押しても引いても、蹴っても殴っても、不思議な力でビクリともしないようだ。
「おい!どうした!?騒がしいぞ!!」
しばらくすると、騒ぎを聞きつけた先生達がやってくるが、外からも教室の扉は開かないようだ。
「どうなってる!?」
「先生!開けてください!!」
「そっちから開かないのか!?」
「こっちもダメだ!!」
そんな騒がしい教室の生徒達を楽しそうに見つめているユウタ
そんな彼のところへ、尻餅ついていた先生がスッと立ち上がり、険しい顔で叫ぶ。
「そんな悪趣味なおもちゃまで用意して!みんなを怖がらせて!楽しい!?」
「はい、愉しいです!」
先生の問いにユウタは満面の笑みで答えると、腕を振り上げる。
「!?」
先生がユウタ返事の問いかける間も無く。
すぐに教室の中には瑞々しい音が響き渡り、真っ赤な飛沫が飛ぶ。
「え?」
「「きゃああぁぁぁあああああ!!」」
「え!?え!?」
「先生は?」
「あれ?あれ?あれが先生?」
「に、ニセモンだよ!」
「でも…この目玉とか歯とか…本物みたいだぜ?」
真っ赤な血肉を浴びた生徒達が慌てふためいていると、成り行きを見ていたケントの取り巻き達が席を立ち、ユウタへ詰め寄り始める。
「テメェ!!ユウタ!!黙って見てりゃ!!」
「おう!これ!これ!!どうしてくれんだ!?」
真っ赤に染まった衣服をユウタへ見せつけてくる2人は、ケントの頭部や、頭部を失った教師はフェイクだと思っているようだ。
そんな悪戯によって服を汚すという被害を被った2人は、ユウタへ詰め寄るのだが、そんな2人へユウタはニヤニヤしながら言い放つ。
「死ね」
「あん!?」
ユウタからどストレートに死ねと言われた2人は、反射的に腕を突き出そうとする。
もはや、ユウタへ「苛立つ=即暴力」のパターンが染み付いているようだ。2人がどれだけ日常的にユウタへ暴力を振るっていたのか察する光景である。
しかし…
「「ぶぺぇぇ!!」」
ユウタへ殴りかかろうとしていた方の2人の全身が急に膨らみ始める。
「ぷるぶえぇぇ!!」
「ぱあぁぁぁぁあああ!!」
膨れ上がっていく2人は、パンパンに膨れ上がると、やがて目玉がゴロリと飛び出してブラリとぶら下がる。続けて、耳からも何かが飛び出してきて、口から内臓が飛び出してくると、最後には胸から骨が飛び出てくる。そのままクルクルと回転すると鮮血を撒き散らして萎んでいく。
「な、何?」
「え、え?」
ユウタと生徒達の前には、まるで萎んだ風船のようなものが真っ赤になって落ちていた。
「「きゃああああああ!!」」
ユウタはケントの取り巻きの2人を殺すと、次は目の前で硬直している女子生徒へ指を向ける。彼女は学級委員であり、風紀を守ることを是としている。しかし、ユウタへ加えられる数々の仕打ちは看過していた。
「ぐっ!?」
女子生徒は急に苦しそうな声をあげると、自分の首の周りの何もない空間を掴むような手の動きを見せ始める。
「ぐ!!!…ぐぅううう!!」
女子生徒は微かに浮かび上がると同時に、顔色が段々と青褪めていき、やがて、ズボンの股間の辺りにシミが広がり始める。
ユウタの念力によって、首を絞められながら持ち上げられているようだ。
「ぐ…」
白目をむいて気を失いそうになっている女子生徒を、そんなに面白くなさそうな表情で見つめたユウタは、教室の入り口付近にいる生徒達へ視線を向ける。
「どーん!」
ユウタは腕を振りかぶって、まるでボールを投げるような動作を見せると、空中に微かに浮かんでいた女子生徒が凄まじい勢いで、入り口に溜まっている生徒達へ突っ込んでくる。
「がぁぁああああああ!!!」
「いでぇぇえ!!」
まるで爆発するように血肉が舞い散ると同時に、入り口にいた数名の生徒が教室を舞い上がる。
さらに、奥にいた生徒達も後ろへ押されて、ドミノ倒しのように、生徒達が続けて倒れていく。
そんな倒れている生徒達の中には、女子生徒の直撃で、同じようにバラバラになって即死しているものもいた。
生きている生徒のほとんどが無傷だが、中には腕が欠損しているものもいる。
「腕が!!!腕ぁぁぁあああああ!」
「うるさい」
「ぶぺぇ!!」
指先を生徒の頭へ向けていくユウタ
まるで拳銃でも所持しているように、その指先で、次々と生徒を殺していく。
「やめ!やめて!!スズキくん!」
「やだ」
「ぶぎゃぁ!!」
「ど、どうして!?こんなことすぷべぇ!!」
「テメェ!ユウタ!!なぶえうぅげばげぼぼぼぼぼぼぼ!!」
次々と同級生を殺害していくユウタ
そんな彼がニヤリと笑みを深めながら、その指先を向けたのは、メガネの男子生徒だ。
「助けてくれ!!」
ユウタが躊躇したと思ったメガネの男子生徒は、今が好機とばかりに命乞いを始める。
「いいけど、なんのメリットが僕にあるの?」
ユウタが楽しそうな顔でそう尋ねると、メガネの男性は怪訝そうな顔で尋ね返す。
「メリット?」
「うん。僕が助けてって言った時に、君はそう言ったよね?」
「っ!?…」
「うん、で、キミを助けると、どんなメリットが僕にあるのかな?」
「あ、あるぞ!お前の友達になってやぶげぶボボボボ!!」
メガネの男性は口から内臓を勢いよく噴き出すと、そのまま自分の血の海へと前のめりに沈んでいく。
そして、ユウタは教室の隅で固まっている女子達を見つめる。そこには、クラスのカーストトップの女子生徒達がいた。
「ね!やめて!お願い!」
クラスの女王であるギャルっぽい女子が強気な様子でユウタへ叫ぶ。彼女の手は震えており、その手を背後の女子達が握りしめていた。
「やめろって言ってんだろ!?」
「ユウタ!調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
「陰キャ!!」
集団で群れることで強気になり始める女子達を前に、ユウタは吐き気を催す。1人では何もできないから群れることまでは理解できる。だが、群れたからと言って、個人が強くなったわけではない。
仮に強くなったとして、弱者を、少数派を蔑ろにしていいわけでなはい。
「気持ち悪い」
ユウタはそう言って、ギャルっぽい女子の背後にいる生徒の頭部を破裂させて殺す。
クラスの女王である女子生徒が、周りの友人が殺されて、1人だけになったことに気付くと、途端に態度を急変させる。
「た、た、助けて!殺さないで!」
そんな彼女へユウタは無言で指先を向ける。
「やめて!!お願いぃ!!」
「ん?僕がさ、やめてって言ってさ、君はどうした?」
「お、お願い!殺さないで!」
「質問に答えてよ」
「や、やらせてあげるから!助けてくれたら、あんたが飽きるまでやらせてあげるから!!」
ユウタは目の前のクラスの女王へ、殺すのとは違った魔力を放つ。
「ぶひぃ!?ぶ!?ぶぶ!?ぶひぃ!?」
目の前の美少女は鼻が吊り上がり、目元が垂れて、まるで豚のような容姿に変わっていく。
「あははは!!すごい!キミ!魔の適性があるよ!」
適性がないものは変異せずに頭部が破裂して生き絶える。しかし、この女子生徒は、適性があるのか、頭部が破裂せずに豚のように変化を見せていた。
「ぶひぃ!?」
「いいよ!生かしてあげる!ほら!」
ユウタは豚女と化した女子生徒を浮かび上がらせる。そのまま教室の外へ運ぼうとしている。
「ぶひぃ!!ぶひぃいいいい!!」
涙を流しながら頭を何度も下げる豚女
そんな姿にされながらも、生かしてもらえることが嬉しい様子だ。
「…うわー、そのまま残りの人生を過ごさせるのも楽しいと思ったけど、その喜んでる姿がムカつくなー!」
ユウタは念力を強めると、空中に浮かべていた豚女へ圧力を加えて押しつぶす。
「ぶひぃいぃいいいいぃっ!!!…」
まるで絞った雑巾のように、大量の血がドバドバと教室の地面に流れ落ちると、残った搾りかすのようなものがべちょりと地面へ落下する。
「…さて」
ユウタは残っている生徒達を見渡し始める。あまり思い入れのある生徒はおらず、いじめの主犯格はこうして直接手を下した。
「こいつらは殺してもつまんないから…そうだな…とある実験のモルモットにしよう!」
ユウタはそう言って満面の笑みを浮かべていた。
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