第18話 出会いの理由
リン「…アヤカとジークとケント、ユウタとサキ」
コウタ「5人の内、誰か2人が魔王だと言うことだな」
リン「ええ…だけど、これは区別が難しいわよ」
ケント「すまん!俺は本当はただの市民だ!!」
ユウタ「ど、どういうことですか!?」
ケント「だけどな!!ユウタが魔王だってことは本当だ!」
ジーク「ああ、私の結果ではユウタが魔王だと出ていた」
サキ「ケンちゃんとジークさんの言う通りです!ユウタさんは魔王ですよ!!」
アヤカ「おかしいわね。私の結果ではユウタが魔王ではないと出ていたわ」
コウタ「簡単には信じられんぞ…どちらの言葉もだ」
リン「ええ…これは厄介なことになったわね」
リン「アヤカ、ユウタが魔王だと言われた時、すぐに正体を明かさなかったのはどうしてかしら?」
アヤカ「正体を明かさなくても、ケントが偽物だと暴くことはできたでしょ?」
リン「そう…そうね。では、質問を変えるわね」
アヤカ「どうぞ」
リン「これは2人への質問よ。聖女だと名乗ってほしいと言っていたのにも関わらず、ここまで正体を隠していたのは何故かしら」
アヤカ「単純よ、初心者が多いゲームだったもの、セオリー通りにことが運ばない可能性はあったでしょ。それこそ、市民が聖女を騙るとかね」
リン「…ケントは市民だと認めるのね」
アヤカ「ジークが聖女だと言い出さなければ、ケントは魔王だと思っていたわ」
リン「いいわ…それで、ジークは?」
ジーク「私は早々にケントとサキに接触していた。ケントの考えた作戦のため、自分が聖女であることを隠していた」
リン「ジークはもう少し掘り下げて話が聞きたいわ。アヤカの言うことは、本来だったらまったく納得しないけれど、今の状況を思えば納得ね」
ケント「アヤカ、てめぇがユウタの相棒だったんだな!!」
コウタ「ジークよ。お前らの言う作戦とはなんだ?」
ジーク「ケントが聖女を騙ることで、勇者を誘き寄せる作戦だ。サキが魔王を殺せなくとも、魔王が誰ななのか目撃することができるかもしれない。そう考えたのだ」
ケント「ああ、俺の家が燃えていたの、さっきも話題にあっただろ。あれは、ユウタのクソ野郎とアヤカにやられたってことだぜ!!」
コウタ「お前は、ヨコ ケントか?」
ケント「ああ、そうだ…アンタは誰だ?」
コウタ「…いや、よそう」
ケント「おい!」
コウタ「俺はお前が魔王ではないかとも疑っている。自分の身分を明かすような真似はしまい」
ケント「ずりぃぞ!!」
リン「そうね。コウタと私は間違いなく人間側だわ。だから、コウタには魔王に正体を知られるようなことを言わないでほしい」
コウタ「言われるまでもない」
リン「それと、ケントもおそらく人間側よ」
コウタ「そうセオリー通りに行かんのだから、この状況なのではないか?」
リン「それを言い出すと、可能性は無限大ね」
コウタ「まずは、ジークらの話を聞かせてもらおう。で、サキよ。お前は魔王の姿を見たのか?」
サキ「私は…結局…怯えてしまって…あの時は動くことができませんでした…私が動けていれば…シュウくんやカナちゃんは…うぅ…どうして、あんな酷いこと…」
リン「魔王の姿を見ていないってことね」
ジーク「そうだが、もしかしたらという目星がついた」
サキ「はい…その時の状況は参考になりませんでしたが…古谷北の制服を着た人が車に轢かれても無事だったことが引っかかっていて、もしかしたらって、考えて、ジークさんにユウタさんを見てもらいました」
ジーク「ユウタが魔王だと表示されていた。ちなみに、魔王はトランプのようなカードに本が書かれているイラストだ」
ケント「ああ、ユウタ…てめぇ…カナとシュウのこと、ぜってぇにゆるさねぇからな」
リン「…えっと、整理するわね。ケントは市民で、サキが勇者、ジークが聖女なのよね?」
ジーク「その通りだ」
リン「で、こっちは、ユウタが勇者で、アヤカが聖女なのよね?」
アヤカ「そうよ」
ユウタ「はい!」
リン「それで、市民のケントが、魔王の囮になるために聖女を名乗り、裏でジークとサキと手を組んでいたと」
ケント「ああ、そうだぜ!」
サキ「そうです!信じてください!」
コウタ「…ツッコミどころが多いな」
リン「ええ、同感ね」
ジーク「気になる点があえば答えよう」
リン「まずは、どうしてジークはその2人に自分が聖女であることを打ち明けられたのかしら?」
コウタ「同時にだ。サキとケントは、ジークが聖女だとどうして信じることができた?」
アヤカ「そうね。誰が魔王か分からないのに、自分の正体を晒すなんておかしいわ」
サキ「それは…」
ケント「俺もサキも!そのジークさんに命を助けられたんだ!!」
リン「命?」
サキ「…信じてもらえないかもしれません。でも、聞いてください!」
コウタ「聞くもなにも、尋ねているだろう」
サキ「私とケンちゃん…は、心霊現象に悩まされていたんです」
リン「ここ最近、何だか妙に流行っているものね」
コウタ「ああ、ウチの腑抜けも、そんなことを言っていたな…気合を入れ直してやったが」
アヤカ「心霊現象なんて眉唾もの…本気にしてるの?」
リン「アヤカ、ついでにユウタも、ケントとサキの話が終わるまでは黙っていて」
リン「サキ、ケント、続けて」
サキ「はい。まず、ジークさんと出会ったのは橋の下でした。飼っていた犬が吠え出して、それで、犬に引かれていくと、そこにはジークさんがいたんです」
ジーク「俺がこの世界に来たばかりの頃だ。食べるモノがなく、危うく餓死するところであった」
サキ「それで、私に恩を感じてくれて、ジークさんが助けてくれることになったんです」
コウタ「この世界に?まるで、本当に異世界から来たみたいな言い方だな」
ジーク「その通りだ」
コウタ「馬鹿馬鹿しい」
リン「ジークが異世界人なのは分かるわ」
コウタ「本気か?」
リン「ええ、魔王ゲーム、その参加者である私達が異世界に行くこともあれば、逆もあり得るわよ」
コウタ「納得はしていないが、話を逸らすのもいかん。いいだろう。続けてくれ」
リン「見分ける方法もあるのだけど、それはまた次回ね」
サキ「私とケンちゃんがデートで、友達と一緒に、心霊スポットへ行きました」
サキ「その心霊スポットは、ベクターと呼ばれるマンイーターが種子を蒔いている場所でした」
リン「ベクター!?」
コウタ「知っているのか?」
リン「億足龍…シュラントラスンスの配下よ」
コウタ「何だそれは…」
リン「この世界でゼウスとかヘラクレスとか、そういう神話に出てくる存在だと言えば分かるかしら?」
コウタ「神話は知らん」
リン「そう…とにかく、勇者でも非常に危険な相手よ」
ジーク「ああ、まだ幼体であったことが幸いした。こうして俺やサキ、ケントが生きていることは幸運であったな」
リン「なるほどね…その心霊現象は、ベクターが起こしていたものだったのね」
サキ「はい。私もケンちゃんも、その時にベクターの種子を植え付けられました」
ケント「俺は問題なかったんだが、サキとマイっていう子が発芽しちゃったんだ」
リン「結論を聞くけれど、そのベクターをジークが倒したということでいいかしら?」
ジーク「いや、倒せてはおらん。危機一髪のところを助けられはしたが、勝てはしなかった」
ケント「サキが、ちょうど、その時、勇者に覚醒して、ベクターを退けることができたんだ!」
サキ「…その時、ジークさんとケンちゃんが居合わせていました…打ち明けたというよりも、自然とそうなったと言った方が正しいです」
ジーク「サキが勇者であることは、ベクターの反応からもわかった」
リン「ベクターは聖なるモノだから、同じ位置にいる勇者となったサキには手が出せない。そういうことね」
ジーク「その通りだ。だからこそ、私は自分が聖女となったことを、サキへ打ち明けたのだ」
コウタ「マンイーターなどという物騒な存在が聖なるモノなのか…」
リン「億足龍は世界樹の守護者よ。その配下なのだから、聖なるモノに属するわね」
コウタ「話が広大すぎる」
サキ「信じてください!私達は人間です!」
ケント「ああ!俺は市民だし、ジークさんは聖女だ!サキが勇者!俺達に魔王が紛れ込むはずもないし!えっと、あれだ!魔王同士が結託して、みんなを騙そうとするにしても、人数が合わないだろ!?ジークさんとサキが魔王だったとして、どうやって俺を騙すんだ?」
リン「そうね。理屈ではアヤカとユウタが魔王だと思うわ」
アヤカ「あんな作り話に騙されるのかしら?」
コウタ「ケントの言いたいことは分かる。ジークやサキが魔王だとしても、ケントとまとまりがあり過ぎる。3人の中に、魔王が紛れているようには見えない」
ジーク「理解したのなら、今日はアヤカを処刑すべきだ」
リン「いいえ、不安はあるわ」
ジーク「不安だと?」
リン「ええ、サキとケントが恋仲であることが、私達が迷う理由よ」
コウタ「どういうことだ?」
リン「ケントが人間側でも、サキが魔王側なら、ケントは魔王側に協力するわよね」
コウタ「なるほど…サキとジークが魔王でも、人間側のケントが2人に味方する可能性があるのか」
リン「ケントが話をややこしくさせたのも事実よ。市民なら大人しくしていれば良いのに、自分が聖女と騙り出すから、なかなか難しいことになったわ」
コウタ「確かに…魔王側に協力している市民だと言われても、行動に思い当たる節があるな」
ケント「待ってくれ!俺は魔王に家まで燃やされて!弟と妹を殺されてんだぞ!そこまですると思うのかよ!?」
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