第7話 特典



 僕は完全な暗闇の中にいたままだ。

 完全なる無を想起させるような暗黒の中、僕の意識の前にはポツリと割れたスマホだけが存在している。


 そのスマホの画面の中では、他のゲーム参加者達が会話を続けていた。





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リン「ちなみにだけど、蘇生できるチケットは、最初から1枚だけ所持しているはずよ」


トオル「ん?チケットなんて持ってないぜ?」


ケント「ああ、そんなチケット、見たことないけどな」


アヤカ「物理的なものじゃないわ」


トオル「物理的なものじゃない?」


アヤカ「テレビゲームのアイテムみたいなものよ」


コウタ「意味がわからんぞ」


トオル「あー!そういうことね」


コウタ「何だ!?」


サキ「ゲームはしないので意味がわかりません!」


ケント「どこかで持ってるか見れるんすか?」


アヤカ「下に参加者の一覧があるでしょ。そこの自分の名前のところを意識してみて」




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 僕はアヤカさんの言った通りに下を覗いてみる。


 今まで気付かなかったけど、下にはゲームに参加している人の名前が並んでいたようだ。




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〜参加者〜

 ユウタ:魔王

 アヤカ:魔王

 トオル

 ケント:聖女

 サキ

 リン

 ジーク

 シンジ:魔族

 コウタ



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 アヤカさんが魔王!?

 僕と同じ…魔王なの!?


 そうか!

 僕も同じ魔王だから、誰が魔王なのか分かるのか!


 でも、アヤカさん?

 どこかで聞いたような名前だ…


 いや、気のせいかな?

 まさかね。




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コウタ「何か出たぞ」


ケント「はー!確かに蘇生チケットがあるっすね!」


トオル「このポイントってどうやれば増えるんだ?」


アヤカ「ゲームに勝てば12pt、生き残って勝てば18pt、特殊な役職で勝てばさらに加点されるわ」


コウタ「ゲームクリア券は100ptか」


トオル「蘇生チケットは24ptだな」


リン「蘇生チケットを持っていなくて負けた場合は、ポイントを30pt消費させられて蘇生チケットを買わされるわ」


ケント「買って備えたらお得、負けても、ポイントがあれば死なないってことっすね」


コウタ「なるほど、何回もゲームに勝ってポイントとやらを貯めて、このゲームクリア券を買えば、このふざけた状況から抜けだせるわけだな」


アヤカ「…今まで買った人はいないけどね」


コウタ「買った人は?まるで、ポイントはあるのに買わないみたいな言い方だな」


シンジ「あー!つまり、このゲームで負けても死なないってことですね」


リン「ええ、初参加なら蘇生チケットを必ず持っているはずよ」


シンジ「んー…ああ、蘇生チケット、確かに1枚ありますね」



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 僕は、アヤカさんが同じ魔王であることに気付いた衝撃で、肝心のポイントやアイテムのことを確認するのを忘れていた。


 慌てて自分の名前のところを意識してみる。





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◇所持品

 蘇生チケット:1枚


◇所持ポイント

 0pt


◇購入メニュー レギュラー

 ・蘇生チケット:24pt

 ・ゲームクリアチケット:100pt


 ・現金100万円:1pt

 ・欲しい能力:50pt

 ・欲しい才能:100pt


◇限定購入メニュー ????適性者のみ表示

 ・魔王チケット:8pt獲得

  →必ず「魔王」に配役される。

   ※魔王側に役職「魔王」が存在しない場合は無効


 ・大魔王チケット:6pt獲得

  →大魔王が存在するゲームにおいて

  必ず「大魔王」に配役される。


 ・殲滅の魔王チケット:6pt獲得

  →殲滅の魔王が存在するゲームにおいて

  必ず「殲滅の魔王」に配役される。


 ・ラプラスの魔王チケット:6pt獲得

  →ラプラスの魔王が存在するゲームにおいて

  必ず「ラプラスの魔王」に配役される。


 ・邪神チケット:4pt獲得

  →邪神が存在するゲームにおいて

   必ず「邪神」に配役される。


 ・破壊神チケット:2pt獲得

  →破壊神が存在するゲームにおいて

   必ず「破壊神」に配役される。

 



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 1ptが100万円!?



 ゲームクリアチケットを買わないみたいなことをアヤカさんが仄めかしていたけど、その意味、なんだかわかる気がする。


 それに…欲しい才能とか能力って何だ?

 意味が分からないけど、ポイントがあれば才能や能力を買えちゃうのかも…



 それに、この限定メニューって何だよ!?

 すごく物騒な名前が並んでるけど、こっちはチケットを買うとポイントが逆に貰えるのか?


 でも、誰が好き好んで魔王になんかなるのかな?

 8ptってことは、800万円を貰えて魔王になるってこと?


 僕はいやだな…




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シンジ「それなら、ちゃっちゃと俺に投票しちゃってください」


サキ「でも…」


シンジ「もし、これで本当に死ぬんでも、チケットがあれば生き返るんですよね?」


アヤカ「ええ…チケット1枚で1回生き返れるわ」


シンジ「それなら、気兼ねなんてないですよ。ほら、早く!」


リン「軽率過ぎないかしら?」


シンジ「軽率も何も、俺が何を言っても、もうこんなに投票されてたら抗いようがないでしょ」


リン「それもそうだけど」


シンジ「もし、本当に死ぬのなら、次は頑張りまーす」


トオル「軽っ!」


ケント「ほら、シンジさんもそう言ってるんで、ちゃっちゃと投票しちゃってください」


サキ「…わかりました」


ユウタ「はい…」



目「皆さま、投票を終えられたようですね」


目「投票の結果、今夜の処刑対象者はシンジ様となりました」


シンジ「ん?…何だ…」


目「それでは、1ターンは1日となっておりますため、また明日のこの時間にお会いしましょう」


目「それでは…良い夜を!」




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「っ!?」



 僕に手足の感覚が蘇ってくる。

 無を想起させるような暗黒は終わりを告げ、夜の道すらも明るく感じさせるような世界が僕の目の前には広がっていた。



「戻って…来た?」



 薄暗い住宅街の路地で僕は自分の手足を見つめる。

 

 硬い地面の感触を足の裏で感じる。

 指は僕の意思通りに動き、自分の頬に触れると、自分の体温を手のひらで感じる。




 僕はハッとしてポケットからスマホを取り出す。

 画面が割れていたはずのスマホは元通りになっており、気づけば、ボロボロになっていた制服も綺麗に直っていた。



「夢か…」



 僕は、自分の姿やスマホが元通りになっていることで、これまでのことが夢なのではないかと錯覚する。

 しかし…




「夢じゃない…」



 画面が綺麗に直っているスマホには、シンジさんが処刑されたことを告げる通知が入っていた。

 これで、現在の参加者は8名となった。



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