第37話


「ハイス、道を塞ぐように火炎ブレスだ」


 始まるや否やハイスは9つの火炎ブレスを放ってくる。

 リングの上が炎の海へと化していく。


「あつッ! これじゃ、近づけないわね」

「あぁ……」


 俺達は何とか避けたが、ハンナ達は?

 見たところ服が焼き焦げてないから、避けたか。

 ゴーレムは――。


「あいつも化け物か」


 リトル・ゴーレムが平然と炎の中から現れる。


「へへン! リトルちゃんならあのぐらいの攻撃、平気よ」


 ハンナが自慢げに笑顔を浮かべながら近づいてくる。


「それより、しゃくだけど、私達と手を組まない?」


 ハンナはハイスの攻撃をみて、瞬時に自分達だけでは勝ち目がないと判断したようだ。


 確かにバラバラに戦っていて勝てるような相手じゃない気がする。


「アリス、どうする?」

「私は賛成。悔しいけどね」


「分かった。じゃあ協力する」

「オーケー、どっちから片付ける?」

「それは厄介の方だ」


 ハンナはクリフ達の方を向き、斧を構える。


「ドラゴンの方ね」

「いや、クリフの方だ。奴が戦況を見極めて指令を出している」


「そういう事ね。リトルちゃん、こっちにおいで」


 ハンナは斧を下ろし、ゴーレムに向かって手まねきをすると、こちらに体を向けた。


「キャットちゃん」

「キャットちゃん? 俺の事か」


「そう。あなたしか居ないでしょ! それよりバイティング・カズラを倒した技、まだ使える?」

「使えるけど、何か作戦があるのか?」


 ハンナはニヤッと微笑む。


「えぇ。今から説明してあげる♪」


 ハンナは嬉しそうに説明を始める。

 悔しいけど、良い作戦だ。


 この子、若いながらも冷静に戦況をちゃんと見ている。

 本当に侮れない子だ。


「――じゃあ、反撃開始よ! 行っておいでリトルちゃん!」


 ハンナの合図に合わせ、ゴーレムだけがクリフに向かって真っ直ぐ動き出す。

 クリフは剣を構えたまま様子を見ていた。


「ハイス。火炎放射を集中させ、リトル・ゴーレムに放て」


 そう来たか

 俺は全速力でリトル・ゴーレムに近づく――。

 リトル・ゴーレムは両腕でガードをし、火炎放射を真正面で受け止める。


 堪えてくれよ……。

 俺はリトル・ゴーレムの後ろに到着すると、直ぐに右手にリフレクトシールドを張った。


「行くぞ、リトル・ゴーレム! リフレクト・スラストッ!」


 拳ではなく、ゴーレムの背中を押すように掌打のリフレクト・ストライクを放つ。


 リトル・ゴーレムは勢いよくクリフの方へと飛んで行き、グンッと距離を縮める。


 クリフはそれに気付き、鉄の盾を投げ捨て、両手でグッと剣を構えた。

 避けるつもりか? 微妙に体が動く。


「リトルちゃん! 伸びーるパンチよ!」


 ハンナもクリフが避けるつもりでいる事に気付いたのか指示を出す。

 リトル・ゴーレムの体が縮まる代わりに腕がグーンっと伸びた。


「何ッ!」


 クリフは予測していない攻撃に反応が遅れ、左肩にゴーレムのパンチを食らい、よろめく。

 走り続けていた俺はクリフの前に立った。


「悪いな、これでお終いだ。リフレクト・ストライクッ!」


 俺はクリフの腹にリフレクト・ストライクを放つ。

 クリフは防ぐ事も出来ず、吹き飛んで行く。

 ハイスはクリフを助けようと大きな翼を広げた。


「ハイス、来るなッ!」

「チッ……」


 並んだ所を狙い、クイック・ムーブで距離を詰め、一気に二人とも突き落とそうと思っていたが、さすがといった所か。

 クリフは飛ばされながらも状況を見ていた。


「クリフ選手、場外! さぁ、残すところ3分。大詰めとなってきたぞ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る