第28話
「私は前に進む方が良いと思っているけど、あなたは?」
アリスも同じ考えだったようだ。
今までの傾向から、おそらく次の階にボスが居る。
そこまで辿り着けるか危うい状況だが、そのボスを倒すことで帰る手段を得られるかもしれない。
一か八かの賭けだけど、やってみる価値はあると思う。
僕は黙って頷いた。
アリスがニコッと微笑む。
「決まりね。問題はあの狭い道をどうやって切り抜けるかだけど、きっとストーンマンも影の騎士も、私の弓やロングソードじゃ傷つけられない」
「だから作戦は――」
アリスは作戦を僕に説明すると、スッと立ち上がる。
「後は状況次第で動くしか無いわね」
アリスはそう言うと、走ってきた道に向かって歩き出す。
「耳線は合図が聞こえなくなるから、外したままにしておくね。途中、呪いの歌姫に出会わないといいけど……」
※※※
数分掛けて僕達はストーンマン達が居た場所へと戻ると、辺りを見渡した。
ストーンマンは見当たらない。
おそらく地面に隠れているのだろう。
あとは……さっきと変わらない。
細い道の途中で影の騎士が一人とミステリーウィザードが立ち止まっている。
「それじゃコリン。作戦通り行くよ!」
アリスはそう言って、ランタンを腰から外し、片手に持った。
『分かった』
僕は返事をして、細い道へと向かって真っ直ぐ走る。
影の騎士が僕を止めようと前かがみになった瞬間――。
『クイック・ムーブ』
素早く、影の騎士とミステリーウィザードの股の間をすり抜ける。
僕はそのまま一気に、奥の広い場所へと走り抜けた。
急いで後ろを振り返り、アリスの様子を確認する。
アリスはストーンマンに攻撃されたのか、バランスを崩して倒れそうになっていた。
アリス!
僕が心の中で名前を叫んだ瞬間、アリスは何とか態勢を戻す。
「コリン、受け取って!」
アリスは思いっきりランタンを僕に向かって投げつけた。
ここで落とせばランタンは壊れてしまう。
僕は必死にランタンの方へと駆け寄る。
――相変わらず、良いコントロールだ。
僕はジャンプをしてランタンの持ち手を口に銜えたまま着地に成功した。
よし!
アリスは僕が受け取ったのを確認すると直ぐ様、地底湖に向かって走り出す。
さっきの戦いで影の騎士もストーンマンも水の中まで僕達を追いかけてこなかった。
おそらくあいつ等は、水の中が苦手なんだ。
――案の定、影の騎士もストーンマンもアリスを追いかけていかない。
ここに居る魔物が全て、僕にターゲットを切り替えたのか、こちらに向かって歩き出す。
思わずニヤリとしてしまうぐらいアリスの作戦通りだ。
僕はランタンを地面に置き、走りだす。
距離をあけてしまえば、すぐに諦めて戻ってしまうかもしれない。
僕はチラリと後ろを振り返りながら、捕まらない程度の距離を保つ。
――そろそろ、良いかな?
アリスが隠れるだけの時間は稼げているはず。
段々とスピードを上げて、魔物たちとの距離を離していく。
少しして魔物たちは僕を倒す事を諦めたのか、思った通り来た道を戻って行った。
ふ~……。
あとはアリスの無事を祈って待つだけだ。
僕は岩かげの隠れ、アリスが来るのを待つことにした。
――少しして足音のような地面をする音が聞こえてくる。
「おーい、コリン。いる?」
アリスが囁くような声で僕を呼んでいるのが聞こえ、僕は岩かげから顔を出した。
アリスが僕に気付き、駆け寄ってくる。
怪我をしている様子はなく、ランタンも無事に腰にぶら下げていた。
とりあえず一安心だ。
アリスは僕の前に立つと、ニコッと微笑む。
「なんとか無事に、切り抜けられたね。さて、このまま一気に下に向かいましょ」
アリスはそう言うと、しゃがみ込む。
「その前に、新しい耳栓を入れておくね」
アリスは布の袋から包帯を取り出すと、こよりを作って僕の耳に詰めた。
スッと立ち上がり、奥を指差すと歩き出す。
もう奥に進むんだね。
僕もアリスに合わせて、歩き出した。
少しして、僕達は階段を見つける。
迷う事無くそのまま、階段を下っていく。
濡れた事もあり、さっきまで肌寒さを感じていたが、下れば下るほど、それが無くなっていく。
何か嫌な予感がする。
僕はそう思いながら最後の階段を下りた。
真っ直ぐ奥に進むと、そこは――。
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