第27話

 僕達はアイテムを探す事無く、下の階に行く事を優先に進む。

 3階に着くと早速、魔物と出くわす。


 地底湖はあるものの、動きまわっても問題ない広さはある。


 そこに呪いの歌姫と弓タイプのゴブリン。

 これもまた厄介の組み合わせだ。


 呪いの歌姫が口を開け、ゴブリンがアリスに向かって弓を構える。


 アリスは一瞬、ゴブリンに視線を向け、自分を狙っている事に気付いたようだが、呪いの歌姫の方を向き、弓を構えた。


 僕は今、呪いの歌姫対策として包帯で耳栓をしている。


 これが効果あるかは分からない。

 だからアリスは先に呪いの歌姫を倒そうとしているのだろう。


 この状態だとアリスの指示は届かない。

 だけど僕たちなら、きっと大丈夫!


 ゴブリンが放った矢がアリスに向かって飛んでいく。

 僕はアリスの前に立ち、リフレクトシールドで矢を弾いた。


 アリスが呪いの歌姫を狙って矢を放つ。

 矢は真っ直ぐ飛んで行き、呪いの歌姫の額を捕らえた。


 残すはゴブリンのみ!

 ゴブリンがアリスに向かって次の矢を放ってくる。

 アリスは矢筒から次の矢を準備しながらも、ゴブリンが放った矢をかわした。


 ゴブリンが次の矢を準備している間に、アリスはゴブリンに向かって矢を放つ。

 矢はゴブリンを捕らえ、胸に突き刺さった。


 ゴブリンの矢をリフレクトシールドで弾いた時は、呪いの歌姫の口は動いていた。


 それでも僕は能力を出せたって事は、耳栓の効果があった?


 あるいは歌を聴き終わらない限り、大丈夫なのかもしれない。

 いずれにしても、呪われずに済んだ。


 アリスが黙って奥を指差し、歩き出す。

 僕も後に続いた。


 アイテム無しに、能力を封印する厄介な魔物。

 そして、アイテムを失わせるような環境。


 この最下層は、まるでパートナーの実力を試すかのようだな。


 ※※※


 持っていたアイテムを駆使して、何とか4階にまで辿り着いたものの。

 凄く嫌な予感がする。


 細い一本道に両脇には地底湖。

 そして一本道の先には、ミステリーウィザードと弓タイプのゴブリン、影の騎士が待ち構えている。


 他は見て回った。

 この先を進まなければ、下の階には行けない。

 どうする……。


 この状況下で欲をかいちゃいけない。

 何か失う覚悟で前に進まなければ。


 ゴブリンがアリスに向かって矢を放ってくる。

 アリスは後ろに避けると、弓を構えてゴブリンに矢を放った。


 矢はゴブリンの額へと刺さり、倒れこむ。

 まずは一匹。


 影の騎士とミステリーウィザードが動き出す。

 影の騎士が先頭になって、一本道の途中で道を塞ぐ。


 その後ろに隠れるようにミステリーウィザードは立ち止まった。

 これじゃ、ミステリーウィザードは狙えない。


 先に影の騎士を倒さなければいけないが、近付かないと雷玉は届かない。

 僕はアリスの先を行き、一本道に向かって進む。


 アリスが付いてきているか、振り返って確認すると、急に地面が盛り上がる。


 な、何ッ!

 慌てて地面を見ると、僕が乗っていたのはストーンマンと呼ばれている人間の形をした岩で出来ている魔物だった。


『しまった!』


 ストーンマンは肩に乗っている僕の体を掴むと、地底湖の方へと投げ飛ばす。


 なす術無く、僕は地底湖へ落ちてしまった。

 すぐさま、水面に上がり顔を出す。

 アリスは!?


 そう思った瞬間、飲まれそうなぐらい大きな水飛沫が、僕の横で上がる。


 まさか!?

 水面に顔を出したのは――アリスだった。

 なんてことだ……。


『アリス!』


 ピンチはまだ終わらない。

 緑色の球状の塊がアリスに向かって飛んでいく。


 アリスは水の中で上手く動くことが出来ず、当たってしまった。


 一瞬、頭が真っ白になる。

 ――唖然としている場合じゃない。

 何とか態勢を整えなければ。


 アリスが僕達の居た場所を指差す。

 逃げるって事だね。

 僕は泳いでアリスが指差した方へと向かった。


 といっても、泳ぐのは苦手だ。

 アリスは見兼ねたのか、僕を回収して片手で泳ぎ始める。


 陸に上がると直ぐ様、ランタンを回収し、全力で来た道を走りだした。


 さすがアリス。

 投げられる前に腰から、ランタンを外していたんだね。


 この階は太陽の巻物を使っているから良いけど、次の階に灯りがあるとは限らない。


 真っ暗な中、彷徨い歩く事態は免れた。

 でもこれから、どうすればいいんだ……。


 ※※※


 僕達は敵の気配がしない場所まで走ると、岩かげに座って隠れ、息を潜めた。

 数分して、アリスが僕の耳から包帯を外す。


「濡れちゃったから、外すね」


 アリスはそう言って、包帯を回収した。


「さて、これからどうしようか? この辺は魔物の気配がしないし、ゆっくり考えてみましょ」


 僕は黙って頷く。


「まず持ち物で駄目になったものを確認してみるね」


 アリスは布の袋を開け、手を入れ、中身を確認し始める。


「――やっぱり巻物はどれも駄目ね。あとは――」


 アリスは火炎玉を取り出すと、ランタンで導火線に火を点けようとする。


「――駄目ね。点火しないわ」


 はぁ……。

 分かっていたとはいえ、ショックを隠せない。

 これで攻撃手段も絞られてしまった。


「あと残っているのは回復アイテムと、引き寄せの石だけ。これで切り抜けるしかないのだけど、戻るか進むか迷う所ね」


 戻るにしたって、アイテムが確保できそうな階に戻るには、ちょっと遠過ぎる気がする。

 だったら――。

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