第7話
数分、歩いて回るが、なかなか良いアイテムは見つからない。
「ランタンを持ってきて、正解だったね」
確かに。
この中層に辿り着ける程の冒険者は少ないのか、灯りがほとんどない。
「十字路ね。右に行ってみようか」
僕達が右に曲がった瞬間。
突然、浮遊感に襲われる。
しまった! 落とし穴だッ。
僕達はなす術もなく、落ちていく。
この洞窟に様々な罠がある事は知っている。
落とし穴がある事も、もちろん知っていた。
だけど、こうも分からないものとは思わなかった。
落とし穴で行く着く先は様々だ。
運が良ければ、レアアイテムの転がる場所に行く事もある。
だが、運が悪ければ……。
僕は難なく地面に着地する。
ドスンっ!
アリスは着地に失敗して、尻餅をついた。
「痛たたた……尻餅ついちゃった」
アリスは立ち上がると、照れ臭そうに苦笑いを浮かべ、お尻を摩る。
そりゃ仕方ないよ。
着地できる人の方が珍しい。
「ここ、どこだろ?」
アリスがそう言って、キョロキョロと辺りを見渡した瞬間。
奥の方から、耳を塞ぎたくなるぐらいの高い咆哮が聞こえてくる。
それだけじゃない。
バサ……バサ……と、大きな翼を羽ばたかせる音も聞こえてきた。
嫌な予感しかしない。
アリスの顔が引き締まる。
「どうする? 後ろは塞がっているから、前に進むしかないけど、帰る事は出来る」
安全を取るなら、帰るしか考えられない。
でも――。
「この層のボスかもしれないし、私は様子を見ておきたい」
何となくそう言うと思った。
どの道、戦わなければならない相手。
ここで様子を見ておくことは、無駄じゃない。
僕は黙って頷く。
「賛成なのね? ――分かった」
アリスは鞘から剣を抜き、歩き始めた。
僕はいつでもアリスを守れるように駆け足で追い抜く。
「コリン。あまり先に行かないでね」
『分かっているって』
僕達が居た細い一本道を抜けると、上にも横にも、だだっ広い場所に出た。
魔物は?
辺りを見渡すが見つからない。
バサッ!
「きゃ!」
突然、翼の音が聞こえたと思ったら、アリスの叫び声がする。
慌てて後ろを振り向くが、アリスが見当たらない!
嘘だろ……。
上を向くと、プテラノドンのような翼竜がアリスの肩を鷲掴みにして、一気に上昇していた。
くそっ! 出口で待ち構えて居やがったのか!
翼竜はアリスを掴んだまま、飛びまわり始める。
ちきしょう!
とにかく大きい……何メートルなのかさえ、分からない。
その割には、素早いし何と言っても、空中じゃ攻撃しようがない。
それに待ち構えていたという事は、頭も悪くないはず。
アリスはまだ剣を持ったまま。
攻撃しようはあるが、あの高さで刺激をすれば、間違いなく落とされる。
僕が何とかしなくちゃ!
落ち着け……考えるんだ……。
そう思うが何も思い浮かばないまま、時間だけが過ぎていく。
くそっ! 僕一人でどうやって相手をすればいいんだよッ!
「え? やめて!」
アリスの叫び声が、洞窟内に響き渡る。
おいおい、まじかよ……あいつ、とんでもない事しやがってッ!
怒りでどうにかなりそうだ。
翼竜はアリスを洞窟の最も高い位置で、離したのだ。
僕は夢中でアリスの下に向かって、ひた走る。
よしッ! 間に合った。
辿り着くと、スゥー……っと息を整える。
リフレクトシールドの全力で弾くと、アリスはきっと怪我をしてしまう。
薄く広範囲のシールドを張るイメージで、弾く力を調節する。
こんなやり方は初めてだけど、弾く強さを調節することは何度もやってきた。
大丈夫、きっと出来るッ!
アリスが目の前に迫ってくる。
リフレクトシールドッ!
ズンッと重い衝撃が僕の体を突き抜けた。
リフレクト効果を薄くすると、シールド効果も薄くなる。
多分、そのせい。
ヤバいッ……思った以上だ……。
それでも一気に威力を上げるな。
堪えろ……堪えて少しずつ威力を上げるんだッ。
微調整の甲斐があって、アリスはシールドの上で一旦止まってから、地面へと転がった。
僕はシールドを解いて、急いでアリスに駆け寄る。
打ち所が悪かったのか、落ちたことによる恐怖からか、アリスは気絶をしていた。
翼竜は僕達をどうやって
僕はアリスを守るように、立ちはだかる。
非常に、まずい事になった。
本当なら、今すぐにでも帰還の巻物を使って、脱出したいところ。
でも僕はあれを使う事が出来ない。
あれは声に出して読まないと効果が出ないのだ。
どうする……。
アリスは助けられたけど、ピンチは終わらない。
今あるアイテムは回復薬の使い掛けと、筋力の果実、そして売るように手に入れた武器や防具だけ。
筋力の果実なんて食べている暇なんてないだろうし、後はどれも僕には扱えない。
――いや、まだあった。
進化の結晶……。
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