第9話 やっぱりMEA

「な、な……なんでー‼」


 夏のセミがミンミンと鳴く空に、わたしの絶叫がひびきわたる。


「うるさい」


 耳をおさえながらこちらをにらんでいるのは、俊くん。


 わたしは授業をうけて、冷ちゃんたちと仲良く帰るはずだったのに、いつのまにか

 MEAの玄関前にきていた!


「わたし、さっきまで授業うけていたはずじゃ……?」

「おいお前、記憶喪失してんぞ」


 俊くんはあきれた顔でやれやれとポーズをとる。


 むむむっ。感じ悪い!


 私は俊くんをにらむ。


「あ、芽衣ちゃん! 俊がなにか迷惑かけてない?」


 ひらひらと手をふりながらエントランスから出てきたのは、楓くんだ!


「かっ、楓くん!」


 わああっ、本当に今日も来ちゃったんだ!


「芽衣ちゃーん! なんでそこでかたまってるのー?」


 続いて琥珀くんと真宙くんもでてきた。


「え、え、だって!」

「いいからはいれ」


 後ろから俊くんにぐいぐいおされ、わたしはMEAに入った。


 それとね、昨日のゲストの入館パスてきなやつもらったんだよね! だからいつでも入れるようになっちゃったんだ。


 それからSHAKEの楽屋に入った。


「鶯、荷物置け」


 俊くんがテーブルの上を指さす。


「なんでですか? てか、わたしもう帰りますから!」


 わたしがくるりと回れ右をして帰ろうとすると、怜音くんがわたしの手首をつかんだ。


「めーいーちゃん! 帰らなくてもいいでしょ? そのうちわかるからおろして」


 怜音くんがパチン、とウインクをきめる。


 わああ、カッコいい~~!


 SHAKEはアイドルでイケメンなんだから、一つ一つの仕草がカッコいいんだよお!


「しょうがないからわかりました」


 ため息をつきながら学校のカバンをテーブルの上におろす。


 すると、


「最初はグー、ジャンケンポン!」


 突然SHAKEがジャンケンをした。


 怜音くんと真宙くんと琥珀くんがパーで、楓くんと俊くんがチョキ。


「僕の勝ち!」

「あと俺もな」


 楓くんが、「ヨッシャ!」とガッツポーズ。


 俊くんは勝ち誇ったようなドヤ顔で他のメンバーを見ている。


 そこでわたしは疑問を聞いてみる。


「えっと、なんでジャンケンするんですか?」

「見回りで、芽衣ちゃんにつきそう二人を決めるためだよ。というわけで芽衣ちゃん、よろしくね」


 楓くんがにこ、と笑いながら首をかたむける。


 見回りってなんの見回りかな? 嫌な予感レーダーが反応してるんだけど。


 でも、楓くんの破壊力すごすぎる笑顔を前にしたわたしは思考停止。


「よろしくおねがいしますっ!」


 わたしは(自称)満面の笑みでピースをつくってみせた。

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