第7話 メアーズヘビを倒す特訓と、本日は帰ります

「ちょっ、どこ行くんですか~!」


 わたしがじたばたあばれても、真宙くんはびくともしない。やっぱり力強い男の子だ。それにしても、同い年くらいの女の子持てるってすごいな⁉ 体重どうなの⁉ SHAKEにもたれてるわたしも端から見たらうらやましいのかな。


 そして、やっと下ろしてくれたと思ったら!


「なんでメアーズヘビがいるんですか~!」


 メアーズヘビがいるところに下ろされたの!


 しかもSHAKEのみんなは物陰に隠れてるし!(なお楓くんだけは子供を見守る母親のような目をしている)


「芽衣ちゃん、好きな色は?」

「えっと、空色!」


 琥珀くんに質問されたから答えた。なんで今とも思ったけど!


 わたし、空色が好きなんだよね! 空色っていうのは、晴れた空のような明るい青のことをいって、水色とか青とはまた違う色なんだ。


「じゃあ楓みたいに言って! メアーズヘビ倒すときみたいに!」

「え?」


 真宙くんに言われたので、今まで楓くんがなんて言って倒してきたのか記憶を探る。


 たしか、たしか! ホワイト・ディサピアー、だった気がする!


 そしてホワイトとは白のこと。白は楓くんのメンバーカラー兼好きな色‼


 つまり、好きな色に、ディサピアーをつければいいってこと?


 わたしの場合は好きな色が空色だから、スカイカラーが英語? まあ、なんでもいいや!


「スカイ・ディサピアー!」


 楓くんのマネをして、両手をメアーズヘビの方に突き出して言ってみた。


 消え、かかったけど、消えかかったところが回復し、ヘビの形はくっきりしている。


「あれ……?」


 消えなかった。私、やっぱり才能ないのかな……SHAKEみたいにすごい人じゃないし……


「グリーン・ディサピアー!」


 わたしが自信をなくしてうつむいていたら、すぐに怜音くんがメアーズヘビを倒してくれた。


「もうすぐだなー、芽衣ちゃん!」

「ね! 本当に出来そうだった! 惜しい!」


 真宙くんと琥珀くんは悔しそうに私のことをほめて(?)くれる。


 だけど怜音くんと俊くんはというと、


「これは……」

「特訓だな……!」


 怜音くん、続けて俊くんと二人連続でにやりとわらう。


 これは、嫌な予感?


 わたしの嫌な予感レーダーが反応したとたん、走り出した、けど。


「逃がさないよ、芽衣ちゃん?」


 手首をつかまれて、耳元で怜音くんの悪魔のささやきが聞こえる。


 怜音くんの吐息が耳にかかっておどろいて、わたしは怜音くんから離れて思わず耳を抑える。


 顔がかああっと赤くそまっていくのが自分でもわかった。


「あはは、芽衣ちゃん顔真っ赤~!」

「からかわないでください!」


 怜音くんがからかうように笑いだしたので、わたしは顔を赤くしながらも怒る。


 このアイドル自分がイケメンだということを知らないのか!


 なぜか、楓くんは少しムッとした表情だったけど。


「で、どうやって特訓しようか?」


 怜音くんがそう言ったとき、ママが言っていたことを思い出して、隠しつけていた腕時計を確認した。


 時間は、もう五時五十五分だ! ジャストタイム!


「ごめんなさい! もう帰らないといけなくて!」

「そっかー。じゃあ明日、ここに来てね! 時間はー、まあ来れるだけはやく!」

「はいー! わかりましたー」


 怜音くんがわたしに伝えるけど、怖くて行きたくないなあ。


 でも明日俊くんも楓くんも学校に来そうだし、逃げられるワケないよね。


 そう思いながらSHAKEと別れ、廊下を歩いて最初ママと紀美惠さんに会った部屋に行く。


「サリア、またね」

「はい! お疲れ様でしたー!」


 わたしが着いたときは、ちょうど職員室? の前で、サリアちゃんとママが別れたときだった。


 わ、生サリアちゃん! かわいすぎる!


 もう少しサリアちゃんを見ていたかったけど……私はママのほうを向く。


「ママお疲れー!」

「芽衣! ありがとう。もう来てたのね。じゃあ荷物まとめるから待ってて!」


 ママの言葉に、わたしはこくりとうなずく。


 ママは走って職員室に入っていった。


 それからちょっとして、ママが職員室から出てきた。


「よし、帰ろうか!」


 二人で駐車場へ出る。


 そして、ママが荷物を詰め込み始めたから、ちょっと待っているとき。


 事務所の窓の、ちょうど職員室の上の辺りの窓が開いていた。


 そしてそこにいた人は、なんとSHAKEのみんな!


「また明日ー!」


 怜音くんと琥珀くんと真宙くんは大きく、楓くんはほほえみながら小さく手を振ってくれていた。俊くんは窓の枠によっかかって腕組みをして、こっちをみながら少し笑っていた。


 なんだかとっても嬉しい。胸があったかくなるなあ。


 なのでわたしは負けないくらいの笑顔で、SHAKEのみんなに手を振ったんだ。

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