第5話 SHAKEの楽屋と、ヘビが見えるのは普通じゃない?
「ようこそ、SHAKEの楽屋へ」
楓くんがふわっとほほえむ。
だけど、わたしは今目の前にSHAKEのメンバー全員がいるなんてことが信じられなくて。うれしくて。夢であってほしくないと思う。
「ん? お前、そいつ学校のあいつ?
俊くんがわたしを指さす。
私、楓くんの席の近くの時に先生に名前呼ばれてたから、覚えててくれたのかな? なんか得した気分!
「楓、どうして連れてきたの? もしかして、楓のガールフレ——んー!」
からかうように真宙くんが何か言いかけたけど、楓くんが両手で真宙くんの口をふさぐ。
よーくみると、楓くんの顔が少し赤くなっているような……?
すると琥珀くんがクスクスと笑いだす。
「ははっ! それで楓、どうして連れてきたの?」
「それはね、ヘビが見えるから、だよ」
琥珀くんの質問に、楓くんがわざとゆっくり言うと、その場の空気が変わった。
SHAKEの楓くん以外のメンバーが、おどろいているような、不思議そうな顔をしている。
ヘビが見えるってさっきのヘビのことだとは思うけど。ヘビがみえるだよ? 何かおかしいかな?
あのさ、と最初に口を開いたのは怜音くんだった。
「あのさ、楓、それって、普通のヘビとかじゃなくて? メアーズヘビ?」
「うん、そうだよ」
「メアーズヘビって、なんですか?」
わたしが恐る恐る聞くと、怜音くんがしまった、という顔をした。
「なにそんな顔してるの怜音。芽衣ちゃんは見えるよ? メアーズヘビ」
「え、だってボクたち以外に見えたことなかったよね? 今まで、一度も」
琥珀くん、本当に驚いているみたい。
てか、楓くんが急にわたしのこと名前で呼び出したんだけど! 推しに認知されるってヤバすぎる!
「ないよ。でもいたんだ。芽衣ちゃんが。芽衣ちゃん、さっきあったこと、話してみて。みんなに」
「わ、わかりました」
わたしはこくりとうなずく。
「楓。一応聞いとくけどさ、芽衣ちゃんになにか仕込んでないよね?」
「うん。もちろんだよ。芽衣ちゃん、話して?」
怜音くん、顔が少しこわばっている。
それに怜音くんまで芽衣ちゃんって呼んでるし!
「えっと、まずわたしは廊下を歩いてました。そしたら、曲がり角にヘビがいたんです。異常な。紫色で、まわりにも紫色のもやがありました。そこでおびえてたら、楓くんが出てきた、って感じです!」
うん、めっちゃざっくり話した。これだけでわかるかな。天才たちだからわかるか。
「おい鶯。こっちに来い」
「わ、俊くん⁉」
俊くんに手を引っ張られる。
オイオイ、イキナリゲイノウジンニテヲヒッパラレルノハシンゾウモチマセン。
私どこかに連れていくのかな? 琥珀くんと真宙くんは「「行ってらっしゃ〜い」」と笑顔で手を振っていて、楓くんと怜音くんがついてくる。
楓くんが少し怒ったような顔で言った。
「ちょっと俊、芽衣ちゃんをどこに連れていくつもり?」
「信じられないから。確かめるだけだ」
「芽衣ちゃんを個人的な意見で危ない目に合わせないでくれない?」
楓くんが俊くんをキッとにらむ。
そんなにあの紫色のヘビってヤバイのかな? 何も知らないんですがわたし。
「まあ楓、落ち着いて。おれもついていくから」
怜音くんがやれやれといった様子で声をあげたら、楓くんは、はぁ、とため息をついた。
「怜音が言うならいいけど! 絶対近づけるなよ!」
「はいはい。分かってる分かってる」
「絶対分かってない!」
あれ? 楓くんと俊くん、仲悪いのかな……?
それに楓くんの優しいふわふわイメージと、今の当たりが強いキビキビ性格が違いすぎてびっくりしてしまう。
そんな楓くんもカッコよすぎるけど!
なんて歩いているうちに、私は一つの生き物を廊下で見つけた。
「あ、さっきの……!」
なんと目の前にさっきの紫色のヘビが現れたのだ。
「え、鶯、あれが見えるのか⁉」
「ヘビのことですか? 見えます……」
俊くんがおどろいた声で聞いてくるから、わたしは見えてほしくないんだけどな、と思いながら答えた。
「マジで……?」
怜音くんもポカンとしている。
「ホワイト・ディサピアー!」
楓くんがとなえると、前と同じようにヘビが消えた。
本当にヘビが消えるってどういう仕組みなんだろう? まず、あのヘビってなに?
「ねえ。さっき芽衣ちゃんを危険な目に遭わせないって言ったよね? はやくメアーズヘビ倒すこともその一部だよね? ねぇ? ねぇ?」
楓くんはゴゴゴっと圧のある笑顔をしながら、怜音くんと俊くんに顔を近づける。
二人は少し「「あはは……」」と目線を泳がしながら答え、楓くんが溜息をしてからもどると二人も元に戻った。
「メアーズヘビ? それって、さっきのヘビのことをいうんですか?」
「うんそうだよ。詳しく話すから、部屋に戻ってきてくれる?」
「あ、はい!」
さっきまでの圧のある笑顔はどこにいったのか、楓くんはにっこりふわふわな笑顔をわたしに向けてくれる。
そのままわたしたちは部屋に速足で戻った。
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