第3話 ママの仕事はマネージャー

 ママの会社と学校は結構近いんだよ。


 それに、まだわたしもママがなんの仕事をしているか知らないんだよね。


 やっと謎がとける!


 なあんて思っていたら、会社に着いた。


「あなた芽衣さん?」


 急に会社の出入口の近くに立っていたお姉さんに声をかけられて、ビクッとした。


「はい! そうです!」

「ああ、やっぱり? わたし、美香みかさんに頼まれて待ってたの! これ、首にかけて」


 美香っていうのは、ママの下の名前。


 その人からもらったネームプレートを首に下げた。


 そのネームプレートには、ゲストってかいてあった。


 さっきの人のは春桜しゅんよう紀美惠きみえってかいてあるから、紀美惠きみえさんっていうみたい。


「さあさあ、うちの事務所、MEAメアへようこそ!わたしについてきてください!」


 わたしはとりあえず紀美惠さんについていく、けど。


 頭はパニック状態だった。


 だって、だって。ここはMEAですって言われたんだもん!


 MEAは、すごく有名な芸能事務所。


 さくらサリアちゃんっていう超かわいい子や、佐藤さとうタクトくんっていうかっこいい男の子が所属している。


 そして、そして!


 なんとSHAKEが所属しているの!!!!!


 だからすっごく緊張して、もしかしたらSHAKEと会えるかもっていうドキドキ感でいっぱいになってしまう。(楓くんと俊くんにはあったけどね)


「ここです。美香さーん! 連れてきましたよー!」


 いつのまにかついていて、紀美惠さんがママを呼んでいた。


「あ、紀美惠ありがとう!」


 ママが気づいてこっちに走ってきた。


「ママ、ここがMEAって、本当?」

「本当よ。ママはここでサリアちゃんのマネージャーをしているわ。今は休憩中だけれど」


 サ、サリアちゃんのマネージャー⁉


 ママってそんなすごい人だったの? そういえば確かに、昔サリアちゃんのマネージャーが私と同じ名字だ、ってはしゃいだことがあったような……?


 だから前サリアちゃんの舞台のチケット持ってたんだ!?


「えーと、芽衣はこの会社をうろうろしててね。手伝えって言われたことがあったら手伝うの! あ、六時になったらここに来て! それじゃあねー」


 ママがひらひらと手を振って自分の机らしきものに戻っていく。


 今のママの説明、だいぶざっくりしてたけど⁉ というか一人で有名芸能事務所をうろうろだなんて、緊張しちゃうって……!


「ママ無理だよ~! 紀美惠さん!」


 わたしは助けを求めるように紀美惠さんをみたけど。


「ごめんね、こればっかりはわたしも……」


 紀美惠さんは少し困ったような笑みをしながら、自分の机に行ってしまった。


 紀美恵さんの裏切者ー! わたし、どうすれば……


 とりあえず、言われた通りにするか……


 わたしがものすごく緊張しながらカチコチ廊下を歩いていた、そのときだった。

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