第七百四十六夜『激突!世界最強の迷惑おじさん決定戦-a shoulder to cry on-』
2024/09/25「地獄」「告白」「暗黒の会場」ジャンルは「SF」
正直に言うと、私は激突おじさんというものに
土地柄激突おじさんが生息していないとか、激突おじさんが
言わば、激突おじさんは女子供に
正直に言うと、私が激突おじさんに遭遇した事が無いという意識を持っているのは、
実は私は、非が有る他人を見下す事が生きがいなのだ。
しかしこれが中々どうして
ニュース番組を
そんな私が
何せ、これが巨悪になると確固たる理由と正義心を持って悪事を働いている事があるから仕方が無い。無論、
私は根本的にチンケな小悪党を見下すのが好きなのだ。
願わくば、激突おじさんにぶつかられ、相手を
「激突おじさんねぇ……非実在性のクリーピーパスタかなんかじゃないのかね?」
「居りますよ」
周囲の人々の足音が
振り向くと、私のすぐ後ろにソイツは居た。
この手の話の定石や
しかし、私に背後から話しかけて来た相手は何とも言えない普通の人と言った感じで、詐欺師特有の
「激突おじさんは存在しますよ、あなたの様に激突おじさんを見たい人のために、彼らは居ます」
そう言って、つまらない印象の男性は私にビラを一枚手渡した。
「これは?」
手渡されたビラを見ると『激突おじさんアリーナ』なるプログラムが行なわれる旨が印刷されていて、これを
そして私はこのビラに描かれた地図の
本来このカフェは入場料を取られるが時間いっぱい飲み放題の店で、その日その時のゲストが楽器の演奏や歌唱であったり
「この『激突おじさんアリーナ』とやらは何なんだ?」
私が真っ当な質問を投げかけると、つまらない印象の男性は物を
「それは、激突おじさんを集めて
私はつまらない印象の男性の口から出る言葉に
「激突おじさん同士を激突させあって最強の激突おじさんを決める見世物? それはつまり、全員が激突おじさんという
「それは違う。これは見世物だけど、プロレスではなく蠱毒。激突おじさんが解放される条件は、他の激突おじさんを全員殺した時だけ。お客様は激突おじさんが死ぬ様をコーヒーでも飲みながら観れるし、激突おじさんは自分より弱い人間にこれでもかと言う程激突出来る。そんな最高の見世物です」
* * *
私が示された時刻にカフェに入ると、カフェの内部はすごい
元々ミュージシャンがパフォーマンスをする様な場所なのでスペースは十分なのだが、今日は普段とは様相が全く
まず本来ミュージシャン達が演奏や歌を行なって居るべき場所には
私が席に着いた時には激突おじさん達だけではなく、観客も温まりきっており、暴力的な野次を飛ばしたり、無料のポップコーンが宙を
「やれー!」「殺せー!」「そこ! タックルをかませい!」
別にデスマッチが行なわれていようが、激突おじさんが複数体死亡していようが、それは今の私にとっては
「な、何だアレは!?」
そして肝心の激突おじさんだが、生き残っている一人は右肩が灰色に変色して肥大しており、その肩に大の大人が腰かける事すら可能そうに見えた。なるほど、あれほどの巨大で歪で異形の肩幅ならば、自分よりも体格が小さい人間にしか強く出る事が出来ない激突おじさんの
それに相対している激突おじさんだが、これもまた右肩が歪に肥大化して赤く変色していて、肩の関節がある筈の場所は眼球の様な紋様になっていて、まるでバレーボール大の眼球が肩に
私は極まった激突おじさん同士の激突を眺め、そして途中で席を立ち、カフェを後にした。
理由はよく分からないし、口頭で上手く説明する自信は無いが、私は自分より弱い存在にしか強く出れない激突おじさんをマジマジと観てみたいと思っていたが、しかしアレらはもう、激突おじさんという自分より弱い存在にしか強く出れない存在ではないと思ったから『激突おじさんアリーナ』に興味が失せたと言うべきだろうか。
「本当の意味での激突おじさんっていうのは、私自身だったのかも知れないな……」
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