第七百四十五夜『マジメな窃盗犯-The world is mine-』
2024/09/23「夏」「人間」「憂鬱なヒロイン」ジャンルは「純愛モノ」
取調室に三人の人間が居た。
内二人は
「オラオラ! とっとと
若輩の方の警察官は取調室の椅子にも座らず立ったまま、短い
恫喝する様な調子とは言ったが、その両手は自分の腰に据えられており、取り調べ相手に
「そこまでにしておけ、ケン」
そんな若輩警官を制止するのは、年配の警察官。
彼は若輩警官とは対照的に制服を
「別に俺達は、お前さんを閉じ込めたり
実はこの二人、俗に言う
犯人に対してキツくあたる警察官が居ると、犯人に対して親身にあたる警察官に対して口が
太陽は北風があるから
「しっかし、関係者の声を見るに『悪いことが出来ない人間』『大人しく、マジメそのもの』『義務感が強く、言われた事をそつがなくこなす』ねぇ……世間様の前ではずーーーっと仮面被って過ごして来て、本性表したところを僕達にパクられたって訳だ! ははは、笑える」
若輩の警察官は口ではそう言うが、目は笑っておらず、取り調べ対象に対して全力で
「ケン! あまり
「し、しかしジョーさん……」
年配の警察官は若輩の警察官を叱りつけ、若輩の警察官はモゴモゴと口ごもった。勿論これも両名の演技。
「人間、誰しも気の
そこで若輩の警察官を叱りつける演技をしていた年配の警察官は目を相方から取り調べ相手に再び向き合う。
「何か知っている事、思い当たる事があったら俺に言ってくれ。
そう言うと顔を伏せていた取り調べ相手、悪い事が出来ない、マジメで、義務感が強いらしい女性が顔を上げて口を開いた。
「いえ、違うんです、お巡りさん。私がやりました、私が犯人です、単独犯です」
これには若輩の警察官も年配の警察官も
「あら、あらあら? え? 本当に君一人でやっちゃったの? というか出来ちゃったの? 省のコンピューターへのハッキング! 普通こういうのって少数先鋭のチームでやるものじゃなく? ほんとの本当に? ソリスト?」
最早自分の役割りを完全に失念している若輩の警察官は目を白黒させ、恫喝の色を一切見せずに
「はい、試しにpasswordって入力したら通っちゃって、そこから芋づる式に国中の省庁の情報全部すっぱ抜いてしまいました!」
若輩の警察官は天を仰ぎ、年配の警察官は眉をしかめて話を聞いた。
「それから、外務省のページから一般にはまだ公開されてない情報を落としたり、そこから横の
若輩の警察官は絶句して、年配の警察官は顔を丸めたしわくちゃの
「……なんでそんな犯行をしたんだ?」
「分かりません。何故だか分かりませんが、私がやらないといけないという使命感というか義務感の様なものに駆られてしまって……」
取調室の三人はこれからどうしたものかと意気消沈した。
* * *
時間は少々
最近、
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