第六百五十一夜『衝動的なミクロの殺意-witch hunt-』

2024/05/12「電気」「魔女」「残念なツンデレ」ジャンルは「大衆小説」


 魔女狩りという言葉があるが、これは形質的にも実質的にも酷い言葉だ。

 アイツは魔女にちがいないから殺してしまおうという言葉なのだが、本当に酷い。

 本当に野蛮で無教養な時代の産物としか私は思えないし、私がその時代その場に居たら魔女と断定された人を喜んで弁護べんごするだろう。

 そんな事を言って、いざ本当にその場に居たら魔女を弁護出来る訳が無い! そう思う方も居るかも知れないが、それは無教養な凡人の素人質問と言わざるを得ない。

 実際の魔女裁判の資料には「聖典に悪魔の存在は書いてあるが、あなた方は悪魔の存在を疑うのか? 聖典の言葉に非を唱え、その女が悪魔を見たと証言した事を気が触れたと断定するのか?」「何者も裁かれるのは本人の罪によるところだと、聖典にはそう書いてある。あなた方は聖典の言葉に非を唱え、その女の血縁者が魔女だから、その女もまた罪人だと言うのか?」そう言って魔女の弁護を行ない、魔女とされた人を助けた弁護士も居るのだ、私にだって魔女の弁護は出来るに決まっている!


 とにかく、魔女狩りとは野蛮で無教養な人間のする事であり、嘆かわしい事だ。私の様に頭が良い人間であるならば、そんな行為は絶対にしないだろう。

 そう思いながらテレビの電源をつけると、はなの角栓がドアップになったコマーシャルが流れていた。

『毛穴の汚れごっそり! 腸内の油も、口腔の臭い玉もコレ一つできれいサッパリ! ウィッチポーション『ナチュライズ』! お求めは、お近くの薬局まで』

 全く、電波に気持ちの悪い物を映すな! フェイクとこそ思われるが、鼻の角栓なんて気持ちの悪い物を私に見せやがって、なんで私がテメーの毛穴や口腔やケツの穴の老廃物ろうはいぶつの話を聞かなきゃならねぇんだ!?

「あークソ、腹が立つ! どこの誰だか知らねーが、あんなコマーシャルや広告を考えたり通したりする奴は心が悪魔にりつかれているとしか思えない! 法律が許すならば、あんなコマーシャル考えた奴、社会的利益の名の元に私がこの手でぶっ殺してやるってのによぉ……」

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