第六百四十二夜『眠くなんかない-Angel's Trumpet-』

 2024/04/29「昼」「目薬」「おかしな小学校」ジャンルは「ホラー」


 ライト君は夜が苦手。

 夜が苦手と言っても、夜のやみが怖いと言う訳ではなく、夜に寝ないといけないのが大嫌い。

「夜も寝ないで、遊んでいたいな……」

 そうベッドの中でポツリと呟くのが、ライトくんの毎日。


  * * *


 そんなライト君ですが、ある日学校の帰り、不思議なガチャガチャを見つけました。

『昼が夜に、夜が昼になる目薬』

 そんな不思議な物があるとは信じられませんが、もしもそれが本当なら、こんなに面白い物は無い!

「でも、ガシャガシャで目薬なんて売るのかな?」

 ライト君はなけなしのお小遣こづかいから、コイン一枚で目薬のガシャガシャをやりました。

 出て来た目薬は触ってみると冷たくて、本当に本物の目薬みたい。

「これで本当に昼が夜に、夜が昼になるのか?」

 目薬には成分表や注意書きも書いてあり、見た事も聞いた事も無い植物の名前が書いてあります。

 また、注意書きには『昼と夜が逆になるのは一時間。もしくは、水またはぬるま湯で洗い流すまで続きます』と書いてありました。

 ライト君が試しに目薬を点してみると、なんと、まだ明るい空が急に暗くなりました。

 別に目薬が毒で、ライト君の目が見えなくなった訳ではありません。

「すごい! さっきまで昼だったのに、まるで夜みたいに暗い! それに、町のあちこちの灯りが夜みたいに強く感じる!」

 空に太陽があるのに、まるで太陽が無い様に周りが暗い。

 そして夜の様に光という光が強く、っして綺麗きれいに見えました。

「昼が夜になると、こんなに綺麗で変なのか」

 ライト君はもうすっかり、この目薬のとりこです。

 何せ大嫌いな夜が昼になるし、昼が夜になるのだから、こんなに楽しい事はありません。

 その時の事でした。

 心臓しんぞうがキュッとする様な、車が急ブレーキをかける音が周りにひびき、運転手の人が何かを叫びました。

「バカヤローッ! 車が見えないのか? きちんと周囲を見やがれ!」

 ライト君は危機一髪ききいっぱつ、自動車がブレーキをかけてくれたおかげで何とかひかれずに済みました。

 ライト君に見える世界は暗く、それでいて自動車は昼だからヘッドライトを点けていなかったのです。

 ライト君は頭にきて『昼が夜に、夜が昼になる目薬』をその場に捨ててしまい、すぐそこの公園で目をよく洗いました。

「昼が夜に、夜が昼になるなんてりだ!」

 ライト君は、その日から寝ないといけない夜を嫌わず、大人しく眠る様になりましたとさ。

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