第六百三十二夜『声かけ事案-all in your heard-』

 2024/04/17「空」「虫網」「きれいな殺戮」ジャンルは「ミステリー」


 陽は高く、空は青く、雲は少なく、風は爽やかで、空気はカラリとして軽く、それでいてトンボが風を切る音がよくひびく、そんな日の出来事だった。

 人通りの少ない、見通しの良い道を子供が歩いていた。

「後ろを見てごらん」

 女の人の声がして、子供は後ろを見たが、そこには誰も居なかった。

 隠れる場所はどこにも無く、段差で声の主が見えないと言うにも起伏の乏しい道だ。

 子供は今聞いた声を気のせいだと思い、再び歩き始めた。

「後ろを見てごらん」

 またしても子供の耳に、女性の声が聞こえた。

 子供は振り向いて後ろを見てみたが、やっぱり誰も居なかった。

(お化けか何かが居るのかな? 隠れるのがすごく上手い人が居るのかな?)

 子供は気味が悪くなり、その場を早く離れようと走り出した。


 子供が走り出したその瞬間、今しがた子供が居た場所に自動車が猛スピードで突っこんで来たが、子供というのは一つの事柄に集中していると細かい事を気にしない物で、子供はその事に気付かなかったし、気にも留めなかった。

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