第六百三十一夜『絶対結ばれるペアリング-La gazza ladra-』

 2024/04/16「暁」「指輪」「いてつくかけら」ジャンルは「純愛モノ」


 今日、俺は運命が音を立てて一歩進むのを感じた。

 ある占い小屋で開運グッズを勧められたのだが、これがなんと『互いに持っていると異性と結ばれるペアリング』!

 そんなインチキ商売……と思われるかも知れないが、あの占い小屋はとても評判が良く、そしてこのペアリングはおどろくほど安かった。

 つまりは、このペアリングは本物の魔力を持った超常現象の発生源ではなく、ただ単にチップ代わりに買うゲン担ぎだと俺は理解した。

 よく当たる占いで幸運を言い渡され、有頂天になっている客にささやかなゲン担ぎの品を売る……客の方も気が良いし、占い師の方も開運グッズも扱う店と評判が良くなるとwin-winの関係と言えるだろう


「当面の問題は、このペアリングをどうやってあの娘に渡すかか……」

 いきなり指輪を渡しても受けとってもらえるだろうか? 変に思われないだろうか? あの占い師はペアリングの力は本物だけど、ペアリングの力が無くとも大丈夫だとも言っていた。

 じゃあ俺はペアリングの有無に関係無く事が上手く行く筈で、ペアリングを渡すところまで上手く行くだろう。

 その時の事だった。

 ペアリングを手に、ああでもない、こうでもないと考えている俺の背後から、何かが突っこんで来て、ペアリングをひったくって行った。

「か、カササギだ! カササギにペアリングを盗まれた!」

 俺は必死になってカササギの後をつけたが、結局ペアリングを盗んだカササギがどこへ飛んで行ったかは分からなかった。


  * * *


 カササギの巣の中に同じデザインの指輪が二つあった。

 カササギの巣には集めた光輝く宝物の他、卵を抱いたメスが居て、二羽は仲睦まじくしていた。

 しかし、そのカササギの巣は人家からはなれた木の高い所にあったので、誰もカササギのつばいにも、巣の中の卵にも、巣の中のペアリングにも気が付かなかった。

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