第六百二十三夜『世界の終わりに開く箱-Pandōrā‘s pithos-』
2024/04/08「宇宙」「メトロノーム」「最速のツンデレ」ジャンルは「ホラー」
店内には、どことなくナイフの様な印象を覚える、
従業員の青年が今居るのは、少々埃っぽいが荒れ果てているとか汚れていると言う程でもない地下室。彼は今、地下室の掃除と在庫の
「何だろうか、これ?」
従業員の青年は
他の商品は収納箱に何かしら
手に取るとカチリカチリと時計かアメリカンクラッカーの様な規則的な振動を感じるが、どうにもこうにも立方体は開く様子が無い。
「捨てられている様に見えるけど、忘れられている様にも見える。これアイネさんに
従業員の青年は分からない事を分からないままにした方はよくないと、
「アイネさん、これ、地下室で棚の
従業員の青年は地下室から上がりつつ、一階に居た店主に
「ひっ!」
そう小さく叫び声を挙げたのは、
「どうしたんですか、アイネさん? そんな声を挙げて」
従業員の青年は、
「ええ、その箱はね……何というか、私はその箱が
店主の女性の言葉に、従業員の青年は疑問を覚えた。
「えっと、目に入らない場所で所有しておかないといけないのですか? この箱って何か厄寄せでもする様な品って事ですか?」
店主の女性は立方体を気持ちが悪い物でも見る様な目で見つつ、しかし
「何と言うべきかしら? 私はその箱が嫌い。それより上でも下でもないの。本来なら、その箱は商品としてうちに置いておくべきなのだけど、私はその箱が嫌いだから目に入らない所に置いておいたの。それだけ、深い理由はありません」
「この箱、そんなに嫌な物なんですか? 俺は特に嫌悪感とか全く湧かないのですけど」
従業員の青年は
「その箱はね、世界が終わったら開く箱なの」
店主の女性はそう、短く吐き捨てる様に言った。
「世界が終わったら開く箱……それっておかしくないですか? だって世界の終わりが、例えば巨大隕石の
「ええ、そう」
店主の女性は再び、吐き捨てる様に言った。その箱を見たくないし、関わり合いになりたくないと言外に言っている。
「じゃあ俺がこの箱買いますよ」
「あら、いいの? でも、カナエはその箱欲しいのかしら? うちの決まりで、商品は本当に欲しい人にしか売れないのけれど」
従業員の青年の申し出に、店主の女性は灯が点いた様に明るくなった。
「それこそ、アイネさんが箱を
「分かったわ。それじゃあその箱はカナエに売ってあげるわ、お題は
* * *
従業員の青年はその後、
別に件の立方体が開く様子も無く、それを所有している内に不安になって来たという事も無い。
「しかし、アイネさんは何でこの箱が嫌いなんだろう?」
従業員の青年はベッドに横になりながら、自室の机の上に置いた件の立方体について思いを及ばせた。
従業員の青年は、なんとなく店主の女性がうっかり地球を
「はー、下らない」
どれも
夜が明けて、朝が来た。
別に世界は終わってなんて居なかったし、件の箱は空いてないし、従業員の青年は特に
* * *
壁面に蔓が這った、どことなく幻想的な雰囲気の、古風な映画かアニメで見る様なおまじないの品々を取り扱う小さな小間物屋があった。
店内の居住スペースには、飾り気の無いシンプルな黒くて
「ああ、まただわ……」
店主が今居る部屋には、側面を十重二十重にテープで厳重に巻いてある立方体の箱が口を開ける様に上方に
店主の周囲には同じように側面を十重二十重にテープで厳重で巻いてあるが、それを引き千切る様に蓋が開いてある箱が幾百も散乱していた。
「あれが無事な最後の一個……なんて事でなければ良いのけれど」
店主の女性は
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