第六百十一夜『不思議な自販機-coin laundry-』
2024/03/27「桃色」「絨毯」「真の脇役」ジャンルは「大衆小説」
街の郊外、住宅地の静かな場所に
その自販機は投入口や返却口はあるものの、ボタンも商品の見本もボタンの横に商品のラベルも存在しなかった。ある物と言えば、自販機の全面に様々なお菓子や飲み物を描いた絵が貼ってあるだけ。
「何か美味しい物が食べたいなあ……」
そう考えている子供が自販機の傍を通った。
子供は自販機の存在に気が付くと、自販機を不思議な物を見る目で眺めた後、物は試しと銅貨を入れてみた。
すると、自販機は快い音を立てて取り出し口に何かを排出した。
子供が排出口に手を入れてみると、そこにあったのはピンク色の
子供は飴玉一つか……と思いながら、自販機から出て来た飴玉の包みを
「あ、美味しい」
飴玉は生クリームと牛乳と桃を混ぜた様な味がして、とってもやさしくて甘かった。
「ああ、
そうダルそうに歩く学生が自販機の傍を通った。
学生は自販機の存在に気が付くと、自販機を胡乱な物を見る目で眺めた後、
すると、自販機は重い音を立てて取り出し口に何かを排出した。
学生が排出口に手を入れてみると、そこにあったのは
学生はまあそんなものか……と思いながら、自販機から出て来たソーダ水の瓶を開けて口を付けた。
「うん、美味い」
ソーダ水はキンキンに冷えていて、それでいて
「あーあ、こんな
そう文句を垂れる男が自販機の傍を通った。
男は自販機の存在に気が付くと、自販機を不審な物を見る目で眺めた後、ひょっとしたらと思い、
ところで、この男は商店でアンパンとドーナッツを買って来た帰りだった。ところが、この季節外れの暑さで
そう思っていたところに、
しかし、自販機は紙幣を飲み込むと、飲み物とは思えぬ軽くて
男が排出口に手を入れてみると、そこにあったのはお詫びの旨が細々を記され、またお
「なんだこれは!」
男は怒り心頭で返却レバーをいじるが、反応は無し。連絡先や管理会社はどこかと見るが、何も無し。トサカに来たんで一発キックを入れるが、痛いのは彼の足。
仕方が無いのでクジを買ったが外れたと思う事にし、トボトボと
「この金で早く買い物がしたいものだ」
そう鼻歌混じりの青年が自販機の傍を通った。
青年は自販機の存在に気が付くと、これが
すると、自販機は重くて甲高い音を連続で立てて取り出し口に何かを排出した。
青年が排出口に手を入れてみると、そこにあったのはズッシリと重い、金色に
青年は目の色を変え、自販機にありったけの高額紙幣を突っ込んだ。彼はこの為にトランク一杯の高額紙幣を、枚数にして数千枚持って来たのだ。
「あぁ! 金だ! 金、金、金だ金!
青年は面白おかしくなって、自販機に
「おい、そこのお前。ちょっといいか?」
「ん?」
青年は背後から声をかけられ、何事かと振り返ったら両手にワッパをかけられた。これには彼もサッパリ訳が分からない。増してや、この場所で自分が捕まる可能性について思案したが、ヤッパリ意味が分からない。
「
その言葉の通り、男は
「自販機に紙幣を飲み込まれた時はついてないと思ったが、自販機の言う通りにまた来てみたら思わぬ大捕り物だ」
その言葉を聞いて、業人は悔しがるやら、怒り狂うやら、自分の甘さを呪うやら。しかしワッパをかけられて取り押さえられてしまったので、どうしようも出来ない。
そんな様子の業人を見て、警察官はボソリと呟いた。
「……ところで、あの時自販機に飲み込まれた
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