第五百六十六夜『悪影響を与えるソレ-grape vine-』
2024/01/28「天国」「猫」「憂鬱な殺戮」ジャンルは「大衆小説」
私はある広告会社に勤めている。
特にどれやこれとは言わないが、きっとあなたも私の仕事を見た事が有るだろう。なにせ、そこの駅に貼ってある広告、街角のモニターに流れている宣伝、電気屋のコンピューターコーナーで流れているコマーシャル。どれもが私や、私の
この間など、街角にトリックアートを盛り込んだコマーシャルを仕掛けた事もあった。まるで巨大な猫がビルの上でペットフードを食べている様に見える立体映像からなるコマーシャルで、話題性も
ところで今日の帰り道、私は駅前の広場で怖気を覚える様な気味の悪い人物に
『皆さん聞いて下さい! マスコミは世の事件は、やれゲームが悪い! マンガが悪い! その様な報道を行なっているが、それは全くの
気味の悪い人物は、手にプラカードと拡声器を持ち、何やら演説の様な物をしていた。
『真相は全く別の所にあります! 原因はマスコミ、報道、新聞、テレビにあります! ゲームやマンガよりも暴力を、犯罪を取り扱っているのは何でしょうか? 報道です! 毎日欠かさずに暴力沙汰や犯罪行為を皆さんの耳に届けているのは何でしょう? 言うまでも無く報道です! 皆さん、偏向報道に踊らされてはいけません!』
気味の悪い人物の言っている内容そのものは、そこまでは的外れでも無し、それなりに筋が通っている。しかし
まず新聞やテレビが悪いと言う主張だが、現代では根本的に外れている。
今彼の話を聞いていない民衆と同じ様に、新聞やテレビと言うのは余り真剣に取り合われていない。
第二に、民衆と言うのは何よりも
テレビがバカな事を言っているのを悪く言うのは良いかも知れないが、民衆が悪いと思っている相手を叩く事こそがハートを掴むのに
テレビに出ている
結論として、気味の悪い人物の周囲には人っ子一人おらず、周囲の人々は気味の悪い人物を遠巻きに不審者を見る目で見るだけだった。
その後の事だった。私は仕事の帰路、近くのスーパーで納豆を買って帰ろうとしたところ、納豆が丸ごと全種類売り切れていた。まるで納豆売り場ごと買い占めでもあった様。
納豆は私にとって、朝のルーチン。納豆を食べるから夜が明け、納豆があるから朝が訪れるのだ。
「な、納豆が一つも無いなんて、一体どうしたんですか? 何か生産者にトラブルでもあったのでしょうか?」
私は少々平静を失ってしまい、近くに居た店員に尋ねた。それに対し、店員は世間話でもする様な調子でこう答えた。
「ええ、この間なんとかって言うテレビ番組で納豆が健康に良いって特番をやりましてね。どこの店でも納豆が飛ぶ様に売れているんですよ」
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