第五百五十四夜『世界中をおバカにする機械-imparity-』
2024/01/12「部屋」「鞠」「冷酷な関係」ジャンルは「学園モノ」
ある大学の一室で、
「出来たぞ小林君! 題して『周囲の知性を作者と同程度にする機械』じゃあ!」
壮年の男性は机に安置された、サッカーボールが上下に分断された様な装置をいじりながら
「やりましたね先生! これで我々は相対的に世界で一番
「うむ、そうなれば社会は混乱、
助手の様な振舞いの学生の言葉に対し、壮年の男性は剣呑な物言いで
「しかし上手くいくでしょうか? いえ、先生の装置を疑っている訳ではありませんが……」
助手の様な振舞いの学生は
「大丈夫だ小林君、何せ作者の馬鹿さ加減は中々のもの。この間なんて、自分で取ったフランス語やラテン語のメモを後日読めずに困っていたぞ?」
壮年の男性の言葉に、彼自身も助手の様な振舞いの学生も思わず失笑、吹き出してゲラゲラと笑い始める。
「自分で取ったメモが読めない! そんな事が有るのですか? あーおかしい!」
「それだけではない。最近では、ヘブライ語の資料を開いたはいいが、一文字も読めずに諦めて資料を閉じた事もあった」
「本当ですか!? 分からない事を調べようとして分からないままにするなんて、それこそ典型的なおバカのやる事じゃないですか!」
二人は
「それじゃあ起動するぞ、
壮年の男性が操作基盤をいじると、分断された球状の装置はブンブンと鈍い駆動音を立て始めた。これは特殊な波状の信号を送り、結果として世界中の人間の知能指数を作者と同水準にすると言う恐ろしい装置だ。世界中が
壮年の男性が装置を
「先生……これは一体?」
助手の様な振舞いの学生が不安そうに尋ね、壮年の男性は一つの可能性を思いついたらしく頷いた。
「うむ……どうやらこの世界は最初から、皆が皆作者程度の知能指数しか有していなかったらしい」
「そんな……」
壮年の男性の言葉に、助手の様な振舞いの学生は青ざめて、まるで一切の救いが無いかの様な顔を浮かべた。
それに対し壮年の男性は、操作基盤をいじって装置の電源を落としながら言った。
「まあいい。馬鹿だって、頑張れば世の中なんとかなると言う教訓話だったと諦めよう」
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