第五百三十四夜『証拠はそこへ消えた-case closed-』
2023/12/20「人間」「トマト」「ゆがんだ剣」ジャンルは「SF」
あるところに絶対に凶器を現場に残さない犯罪者が居た。
最初のきっかけは弾みだった。彼はある時カッとして、レンガの様に硬いパンで口論をしている相手の頭部を殴り付け、その後でパンを平らげた。
彼は容疑者として
幸か不幸か、この事は彼の
ある時は凍ったトマトを砲丸投げの要領で投げつけて、危険運転の末に自分の車を傷つけて来た相手の
ある時は岩の様に硬いチーズを振り下ろし、自分に
ある時は
どれもこれも私怨の線から容疑者として捜査されたが、何せ凶器は彼の腹の中。まさか食材を持って
* * *
「とまあ、そんな話があるそうだ」
「ふーん」
二人の男が自動車の中で、
話の
「今の話、一つ気になる所があるんだが」
「気になる所、どこがだ?」
自動車を運転している方の男は運転をしながら、相手の顔の方を見ずに受け答えた。
「凶器や証拠を食べて残さないんだよな? でも、トラブった相手の死体は見つかって事件になっている。それで合ってんだよな?」
「ああ」
話を聞いていた方の男は眉間に
「じゃあパンとかチーズだけじゃなく、トラブった相手の死体も食べちまえばいいんじゃないのか?」
それを聞いて、自動車を運転している方の男は呆れるやら
「お前なあ……お前は人間の死体を食べたいのか?」
「いや、全然。けどさあ、うまく料理して分からない程なら食べてみたいかも?」
話を聞いていた方の男は自身無さげに、あやふやに答えた。それに対し、自動車を運転している方の男はニヤリと口角を上げた。
「そうか、それはいい。ところで今日の
自動車を運転している方の男の言葉を聞き、まるで背中に雪の
「いや、いい、俺は
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