第五百三十二夜『あの虹の根元に……-pot of gold-』

2023/12/18「虹」「化石」「悪の魔法」ジャンルは「ギャグコメ」


 ある辺境の地に、虹の根元に金貨の詰まった壺があり、壺からあふれんばかりに金貨が積まれていて、その上には全身緑の衣服に身を包んだ小人が横になっていた。

「また昔の様に、多くの人間に求められたり、欲深い人間をからかったりしたいものだな……」

 全身緑の小人は妖精ようせいで、この壺を見事見つけた人物にこの金貨を渡そうかと淡い期待を抱いていた。

 彼は人をからかう存在だと知られていたが、近年ではめっきり妖精の宝を探そうとする人物も居なくなってしまい、自分を探してくれる人間の存在に飢えていた。

 こうなって来ると金貨を欲しがる人間をからかってやるより、自分の事を知っている人間に会える方が喜ばしくなってくると言うものだ。

 何せ現代になってから、少なくとも彼の元には妖精を探しに来る人は居なかった。


 * * *


 その頃、ある国が科学実験をしていた。彼等は未来への希望に満ち溢れ、自分たちの実験が成功すれば世をより良くすると確信していた。

 彼らはこの実験を実行に移すべく飛行機ひこうきを飛ばし、そしてに原子爆弾を落とした。

 誰も人間が住んでいない島には大きな爆発ばくはつが生じ、突風が起き、その場にあったもの全てを焼き払った。

「やった、実験は成功だ! この規模の爆発ならば、充分武器として使えるぞ!」

 科学実験にたずさわった人達は爆発を見て大いに喜んだが、爆発の後に島の空に虹がかかっているのは見なかったし、気づきもしなかった。

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