第五百二十六夜『治安維持部の新しい防衛手段・裏-O&C-』
2023/12/12「紫色」「コーヒーカップ」「暗黒の大学」ジャンルは「サイコミステリー」
ある留置所に、複数の容疑者が収容されていた。
留置所には余裕があり、容疑者は寿司詰めと言う訳ではなく、一人一部屋で収容されていた。
「おーい、誰か! 俺は何も捕まる様な事はしてないんだ、俺は無実だ! 誰か!」
容疑者の一人が、
「うるさい! 君は静かに出来ないのか!」
そう叫ぶのは、
「俺は無実だなんて、そんな手垢の付いた様な使い古された台詞、
隣に収監されていた容疑者の言葉が効いたのか、容疑者の一人は静かになった。なるほど、確かに見苦しく叫んでいたら無実なものも無実に見えないかも知れない。
「でも、俺は本当に捕まる様な事は何もやってないんですよ……」
「捕まる様な事はやってない……ねえ? 本当に何も思い当たる節は無いのか?」
さめざめとした様子で弁解を始めた容疑者に対し、隣の檻に収監された容疑者は少々関心を示した。しかし、それに割って入る声が有った。
「はっ! 捕まる様な事をしたに決まっているさ! ただ何を
声の主は、更に隣の檻に収監された容疑者だった。
「お上が決める。なるほど、それは確かにそうだろう。それで、
隣の檻に収監された容疑者の質問に対し、更に隣の檻に収監された容疑者は不満そうに苦々しく
「なんて事はない、私は現在の政権を
「なるほど、あなたはその画像を人工知能に作らせた物だと明記した上で公開したのですか? ……公開したのですよね?」
神妙な
「勿論だ。だが
「なるほど」
更に隣の檻の容疑者は、自分の身の上話が出来てすっかり満足気に落ち着きを取り戻していた。
「まあ奴さんらとしても、
更に隣の檻の容疑者の言葉には実感が込められており、確信が伴っていた。そして何よりも、最初に叫んでいた容疑者と異なり、落ち着きが見られた。
「それで、お前さんは何をしたんだ?」
最初に叫んでいた容疑者は更に隣の檻の容疑者に尋ねられ、気恥ずかしそうな態度を見せた。
「俺は、その……大臣の写真と演説とかの音声を
「……なんて?」
最初に叫んでいた容疑者の告白に、更に隣の檻の容疑者は絶句した。しかし隣の檻の容疑者は逆にこれを聞いて吹き出した。
「ははっ、ははは! これは
隣の檻の容疑者が
「ち、違うんです! これは俺一人がやったって訳じゃなく、そうじゃなくて大学のみんなで企画でやってて、俺の作品が一番だったからみんなで悪ノリをしてネットに上げたって言うか、俺のだけど俺一人のじゃなくて!」
「でも君がやったんだろう? 警察のお世話になるだけの要件は、充分満たしてしまったって訳だ」
最初に叫んでいた容疑者は顔を青くするやら赤くするやら、感情的になって
「そういうあなたは何なんですか!?」
最初に叫んでいた容疑者の質問に対し、隣の檻の容疑者は落ち着き払った様子で、酷くつまらなさそうに答えた。
「ああ、ボクはSF小説を書いたら捕まったんだ。
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