第五百十五夜『史上最大のロボット-super size me!-』

2023/11/29「北」「犠牲」「最高の可能性」ジャンルは「指定なし」


 テレビのモニターに二体のロボットが戦っているのが見えた。

 ロボットが戦っていると言っても、映画やアニメのたぐいではない。

 これはロボットコンクール、略してロボコンと呼ばれる企画であり、本物のロボットが何かしらの種目で争っているのだ。

 ロボットらははげしい駆動音を立てつつ四つに組み、両者共に一歩もゆずらず、その様子を実況と解説が楽しそうに中継している。


『西のムロタスーパー、押しています!』

『何せムロタスーパーのキャッチコピーは、『世界一力の強いロボット』ですからね。今大会の優勝候補ゆうしょうこうほと言っても過言ではないでしょう』

『しかし前回王者、東のハーデスも負けておりません! ここから巻き返しになるか!?』

『それはどうでしょう? これまでの対戦相手を秒殺でリングアウトさせていたハーデスですが、『地上最強のロボット』を名乗る元王者と言うのは、逆に言うと仮想敵かそうてきとして研究され尽くされているとも言いえられます』


 何が『世界一力が強いロボット』だ、何が『地上最強のロボット』だ。今年は未だ開発中だが、来年度には完成するであろう私のロボットがぶつかれば、ムロタもハーデスも一発でスクラップになる計算だ。

 お前らの安っぽい自称に準じるならば、『史上最大のロボット』とでも言ったところか。

 私は息抜きを終え、自作のロボットを完成させるべくテレビの電源を切り、作業場へと戻った。

 私の研究室ではすでおおむね『史上最大のロボット』の機関きかんや炉心は完成しており、人間で言うなら内臓ないぞう完璧かんぺきで、後は正に肉付けだけと言う段階なのだ。

 うれいは一切無い、重大な日となるだろう。


 * * * 


 ロボコン会場ではムロタスーパーとハーデスが一進一退の攻防を見せ、観客かんきゃく視聴者しちょうしゃを沸かせていた。

『しかしムロタスーパー以上の出力のロボットや、ハーデスを超える規格のロボットは現実に作り得るのでしょうか?』

『いいえ、それはあり得ないでしょう。何せ、あれらよりも上のエンジンであったり体格を有するロボットをきちんと動く様に作るならば、そんな物を地球で組み立てたら自重で地面が崩壊ほうかいするにちがいありませんからね』

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