第五百十夜『迫力満点のZ級映画-sharking-』
2023/11/23「北」「屍」「穏やかな山田君(レア)」ジャンルは「アクション」
北極探検隊が消息を絶った。消息を絶ったと言っても、原因不明で突如
「助けてくれ! バケモノだ!」
「ニンゲンに
「バカ! あれはニンゲンじゃなくて、ヒトガタだ!」
「どっちだっていい! 俺達はニンゲンに殺されて死ぬんだよ!」
事実は出来の悪い怪談の様ではないが、頭の悪いパニック映画の様だった。北極調査基地の中ではニンゲン(正確にはヒトガタと呼ばれる未確認生物)が次々とパニック
しかしニンゲンがサメを殺すのは何故だかカメラの死角であったり、
「南無三! こうなったらその部屋に
「あい分かった! 内側から一緒に
二人のサメは部屋に逃げ込み、
「とりあえずは助かったな」
空手の方のサメが
「いいや、まだ油断はするな。籠城せざるを得ない状況に追い込まれている事には変わりが無いし、北極まで救助が来るなんて
携帯端末を持った方のサメは、険しい顔を崩さない。緊張の糸は切れず、彼は未だに常在戦場のままだ。
その時だった。部屋が揺れ、床が隆起し、何事かとサメ達が床を見た
「――――――――――――――ッ!!」
空手の方のサメは叫び声を挙げようとしたが、喉を食い破られたせいか叫び声を挙げる事すら出来なかった。彼はニンゲンに噛みつかれて一切の抵抗が出来ず、出来るのは悲壮な表情を浮かべるだけだ。
「山田!? このっ……俺の親友に何をしやがるニンゲン野郎っ!」
携帯端末を持った方のサメは
「キ、キキャアアアアアアアアア!」
ニンゲンは
「大丈夫か?」
携帯端末を首から提げたサメは相棒に声をかけたが、彼はもう息も絶え絶えになっていて、最早
「クソ! クソニンゲン共め、必ず殺し尽くしてやる!」
携帯端末を首から提げたサメはニンゲンの血で
その頃、北極基地の外は
空にも無数のニンゲンが舞っており、
地中にもニンゲンが
ならばと意を決して極寒の海に飛び込んだサメも居たが、水中にもニンゲンは潜んでいた。ニンゲンの持つ遊泳能力は全動物の中では突出して高い物ではないが、パニック映画のクリーチャーはまるで瞬間移動するかの様な速度で移動するのだ、サメが水中でニンゲンに追いつかれて食い殺されるのは何もおかしくはない。
映画館で
これを観ている観客らは、叫び声を挙げるやら、怖がるやら、笑うやら、それでいて肩の力を抜いて観る事の出来る娯楽映画をポップコーン片手に楽しんでいた。モニターの中でクリーチャーが大暴れする様は、
(でもニンゲンは穴を掘ったり泳いだりはするけど、身一つで空を飛ぶのはおかしいよなあ……)
観客の一人はそう考えつつ、胸びれでポップコーンをつまみながら映画を観てガハハと小さく笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます