第五百三夜『輪ゴム、何本かけられる?- equator-』

2023/11/16「闇」「墓場」「見えない時の流れ」ジャンルは「王道ファンタジー」


 俺にはちょっとした趣味しゅみがある。スイカに輪ゴムを可能な限りかけて、その様を撮影さつえいする事だ。こうすると最終的にスイカは爆発ばくはつするのだが、この爆発する瞬間しゅんかんをカメラに納める事、そしてスイカに輪ゴムをかけた数を自分の中で競うのだ。

 このスイカを爆発する瞬間を収めた動画はちょっとしたを見せており、これをネットにせると多くの人が俺に注目してくれる。

 何せスイカが爆発して、家財道具だったり庭中だったりがスイカの果汁まみれになるのだから、話題にもなると言う物だ。勿論爆発したスイカは食べるし、その様も撮影している。

 今日は前回よりも大きいスイカを、前回よりも多くの輪ゴムをかけることを目標にしている。


 一つ、また一つとテーブルの上に置いたスイカに輪ゴムをかける。今やスイカは数十の輪ゴムをかけられており、緊張きんちょうの余り張り詰めている。もう一つ輪ゴムをかけたらスイカが爆発するかも知れない。今、正にそんな状態じょうたいだ。

 今の季節は言う間でもなく夏で、今回は外での撮影だ。ジリジリと日光にかれて、汗が滴るのを感じた。

 その時だった。突然地面がれて、俺は立っていられなくなった。地震じしんだ!

 俺の視界には地面が抉れて、まるで地面がアイスクリームシェイバーで削られた様に隆起りゅうきしているのが見えた。

「こ、こんな大きな地震は初めてだ……」

 俺はスイカを載せていたテーブルの足元に伏せて、テーブルにしがみつく以外何も出来なかった。

「だ、誰か助けて!」

 しかし、俺の周囲には誰も居ない。俺の声が聞こえた人は誰も居ない。

「そ、そうだ! 撮影用の携帯端末けいたいたんまつで助けを求めよう!」

 そう考え及び、携帯端末に手を伸ばそうとした時、地面が裂け、俺は気が付くと空中に居た。


          *     *     *


『本日日中、赤道直下で地震がありました。現地のメディアによりますと、震災との関連を調査中の行方不明者は一人、負傷者は百人以上に及び……』

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