第四百八十七夜『クリエイターより賢いキャラクター-genesis-』

2023/10/29「神様」「目薬」「ねじれた流れ」ジャンルは「純愛モノ」


『作者よりかしこいキャラクターは書けず、作者より面白いキャラクターは書き得ない。故につまらない人間はつまらない物しか作ることは出来ない』


 私はこの様な論調がきらいだ。もっと言うと、この様な考えをする人間はただの努力不足の怠惰たいだな人間だと認識にんしきしている。

この様な言葉が刺さるないし、この様な言葉を吐く人間は創作をするさいに調べものをせずに、自分の知らない物を知らないままにして創作を行なっているのだろう。現代ではそう言ったやからが良く見受けられる。

 創作活動と取材は切ってもはなせない関係にあるのだ。自分の知らない専門知識せんもんちしきを調べる事を怠るおろか者が、この様な悪評やそしりを受ける。

 例えば織田信長おだのぶながを題材に書きたいが、戦国時代や安土桃山をろくすっぽ知らないで想像で書いたらどうなるか? それこそ怠け者が書く、頭の悪い織田信長が出来上がる訳である。

 日本史や日本舞台に興味きょうみが無いならば、中世ヨーロッパとカール大帝と読み替えてもいい。中世ヨーロッパの風俗世俗を知らずに、中世ヨーロッパを書く自称創作者の多い事よ! せめて小中学校の教科書程度は調べながら、書いて欲しいものである。

 そもそも専門家に取材を受ければ作者より賢いキャラクターは簡単に書ける筈なのだが、そんな手法すら考えつかないあたり、この文言を考え付いた人間こそ頭が悪いと言わざるを得ないだろう。

 私が件の文句に対して思う所はまだまだあるのだが、一つ奇妙な事を思いついた。

では、

 神と称される歴史上の人物や神々も書物と言う媒体で現代に伝わっているのも事実であり、現代では特に神話の新しい創作が行なわれる事も珍しくなく、コズミックホラーの分野ではそれが顕著けんちょだと言える。

 いや、そんな事はどうでもいい。私が聖書を題材に何かを書いたとしよう、すると例の文言が是であると仮定した場合、私は全知全能の神よりも賢くなってしまうのである!


 そう愚にもつかぬことを考えていると、目がシパシパして来た。どう表現すべきか、モニターを見過ぎて網膜もうまくが疲労している感じか。

 目薬を点眼し、まばたきをする。気が付くと部屋の中も家の外もすっかり暗くなっていた。

「いつの間にか、もうこんな時間か。さすがに暗すぎるし、あかりけよう」

 私は誰に聞かせる訳でも無くそう言い、電灯のスイッチを点けた。

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