第四百五十七夜『ある男の結婚活動-Dear John Doe-』
2023/09/28「地獄」「扉」「嫌なツンデレ」ジャンルは「純愛モノ」
そこのあなた、怪物と言う物をどう考えますか? ふむ……確かにいきなり、この様な場でこんな質問をされたら、言葉に詰まるのも仕方の無い事でしょう。しかしこれは私の人となり、形成された人格にまつわる話でもあるのです。どうかご
ある人物曰く、怪物とは『言葉が通用せず』『正体不明で』『
この例えに
先程のゾンビの例えもそうです。正体不明でないゾンビは邪悪な
そして怪物とは即ち不滅でなければならないと言うのも、これもまた絶妙な話です。何せ古今東西の怪談とは、怪物の正体を知った
この様に、怪物の持つ『言語を持たない』『正体不明』『不滅』と言う三つの
私の目の前の男性は、そう私に対してつらつらと語った。その男性は大柄な
「えっと、その話がこのパーティーと何か関係が……?」
私が腫れ物に触る様な
「ええ、多いに大ありです! あなた、私の名前……ではなく苗字はご存知ですよね?」
私は彼の人となりは詳しくないが、この
「ええと、フランケンシュタインさん?」
「ええ、その通り! 実は私は
そう嬉々として語るアダム・フランケンシュタインの顔は、私の知っているフランケンシュタインの顔とは似ても似つかない快活で明るい物となっている。
「みなさんご存知の通り、私はフランケンシュタインの元で生まれた人造人間で、この様に言葉も喋れます。そして試した事はありませんが、そもそも人間の肉体を用いて作った人造人間なのですから、例えば
アダム・フランケンシュタインはそう語りながら、まるでナイフが刺さりそうにない屈強な胸板を服の上から
「つまり、私は言葉を話し、正体が有名で、恐らく不滅ではない。即ち、私は人間なのです!」
「それは良かったですね」
私がアダム・フランケンシュタインの訳の分からない理論を、
「そこでお願いがあるのですが、私の妻になっていただけないでしょうか?」
「はい?」
突然の予想もしてない言葉に、私の頭は
「今なんて言いました?」
「ええ。私は今、あなたに結婚を申し込みました。一目惚れです、私は人間です故」
怪物はその場で膝をつき、まるで絵画か童話の王子様がする様なポーズで私の事を真っ直ぐ見ている。何と言うか、余りのミスマッチ具合と
「ごめんなさい。私には将来を約束した、愛し合う恋人が居るんです」
私の嘘を聞くと、怪物は悲しそうな顔をしてトボトボと去っていった。彼はきっと、このパーティー会場を結婚活動の一環と捉えていて、自分と価値観の合う連れ合いを探しているのだろう。
「全く、私の彼もアレくらい話の通じる人なら良いのに……」
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