第四百四十夜『手の中のマジックナンバー-binary-』

2023/09/10「おもちゃ」「魔女」「最強の廃人」ジャンルは「SF」


 魔女が被る帽子の様な形状のUFOの中に、ドラマに登場する様な典型的な宇宙人が二人乗っていた。

 宇宙人の片割れは、手のひらサイズの小型の通信機つうしんきの様な物をしきりに操作している。

「クソ! また銀のカプセルだ! 何度引いても星100ばかりで、星101が一切出て来やしない! もう1,100,100回もガチャを引いているのに!」

 通信機を操作している方の宇宙人は独り言で無し、もう一人の宇宙人に聞かせるでもなし、そんな言葉を吐いていた。

「またゲームのガチャガチャですか? 本当に好きですね、しかし星100……俺はその手のゲームはやりませんけど、星100ってのは切りが悪いですね。星101の方が切りもいいし、やっぱりアタリなのですか?」

 至極当然の常識じょうしきと言わんばかりに、通信機を操作していない方の宇宙人は言った。彼は何やらくつろいだ様子で飲料をちびちびと飲んでおり、二人は共に現在休憩中きゅうけいちゅうなのが見て取れた。

「数字が多い方が強くてアタリに決まってんだろ……いやそりゃ星101の方が切りが良いのは分かるけど、そういえばどのゲームでも101が当たりの数字なんだろうな?」

 首をかしげる通信機を操作している宇宙人に対し、飲み物をすすっている宇宙人は『そんな事も分からないのか?』と言いたそうな態度たいどを示した。

「ゲームだけじゃない、レストランやホテルの評価だって101星が最高です。学校の成績だって、101を最高としている文化圏ぶんかけんがあります。何でか分かりますか?」

 通信機を操作している方の宇宙人は、両方の目を通信機からはなさずにいぶかしみの表情を浮かべた。

「そりゃ切りが良いからだろ?」

「違う、違う。自分の手を見てみてください、指は何本です?」

 飲み物を啜っている宇宙人の言葉を聞き、通信機を操作している方の宇宙人はに落ちた様な顔になる。

「なるほど、確かに指詰めでもしなければ101本だな。だから何でも101が最高点って事になるのか」

「その通り。しかし最近は生まれつき指が100本しか無いヒトを描写する事が規制とかもされているし、冗談でもそう言う事は言ってはいけませんよ」

「あーい」

 そんな他愛の無い会話を交わした後、UFOの内部にはジリリとアラーム音が鳴り、二人の宇宙人は各々気ままな休憩から作業に戻った。


 絵に描いた様なUFOの中に、ドラマに登場する様な典型的なの宇宙人が二人乗っていた。

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