第四百三十三夜『続・わざとらしい写真-no man-』

2023/09/02「花」「指輪」「ゆがんだ遊び」ジャンルは「指定なし」


 私にはちょっとした特技があった。私にはいわゆる霊感れいかんと言う奴が有り、ピンと来た時に写真をれば心霊写真を撮る事が出来る。

 この時用いるカメラは何でもいい。携帯端末けいたいたんまつのカメラ機能きのうでも撮れるし、インスタントカメラでも可能で、デジタルカメラも勿論可能で、試してはいないがきっと銀板カメラでも可能だと確信している。

 この特技をちょっとしたと物と表現した理由だが、私は霊感こそ有るが心霊写真を撮る以外の霊感は持ち合わせていない。なので、マンガに出て来る霊能力者の様な大活躍だいかつやくを想像されても困るところであり、ちょっとだけ霊感があると自称しているのである。

 しかしそうは言っても、周囲の人間は霊感がある人間と聞くとアレやコレやと理由をつけて言い寄るのだから大変だ。やれ、献花けんかされている交通事故現場でき逃げ犯の手掛かりを探ってくれだの、やれ、うちには曰く付きの不幸の品々があるから霊に因る物ではないか調べてくれだの、そんなトンデモない事ばかりたのみ込んでくる。

 言っておくが、私の霊感は受動的で消極的な物だ。今この場にリージェントやコイヌールの様な呪いの宝石だの装飾品そうしょくひんを見せられても撮れない時は撮れないし、今この場に霊が居るのでなければ事故現場でも写真は撮れない。

 結果として、私は専ら一人で居る時に心霊写真を撮る事になっている。霊感が反応した時にしか撮れないのだ、常に見張られているのでなければそうなるのは必然だった。

 しかし、これがよくなかった。私は心霊写真を撮るのが一人である時が多いと言う事は、即ち合成写真だの人工知能に描かせた物だのと言うやからが出て来たのだ。

 確かに私の撮る心霊写真は、その場に確かに存在している霊を撮っている訳で、合成をすれば実際に作れるだろうと言う代物だ。しかしそれなら、合成の後や齟齬そごが全く全然完全に分からない事になる。私は現実ばなれした合成技術の持ち主と野次馬から名指しされている訳で、それはそれとして気分が悪くなかった。


 合成写真だの、人工知能の手による物であって本物の心霊写真ではないだのと、そう言われる事にはすっかり慣れたある日、私の元にプロの霊能力者と対談の話がい込んで来た。

 私はなるほど、これは面白い話だと思い、これを二つ返事で了承した。


 当日、私はプロの霊能力者を名乗る人物と喫茶店きっさてんで合流した。なんだかスピリチュアルな雰囲気ふんいきただよわせた年配の方で、首に指に多くの装飾品を見に着けており、私は胡散臭い人だと第一印象を抱いた。

(どうせこの人も、機械きかいで合成した写真だの、人工知能に描かせた絵だの、そう言って決めつけるんだろうな)

 私はそう思いながら、プロの霊能力者を名乗る人物に写真を何枚か渡す。すると彼女は写真をマジマジと眺め、ふるえた声でこう言った。

「これは人間ではない何かです……」

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