第四百十六夜『応報論者達-death penalty-』
2023/08/13「地獄」「車」「最高の可能性」ジャンルは「青春モノ」
賢王党の党首でもある
特に彼の発言やマニフェストで有名なのは受刑者に関する物で、曰く犯罪者はもっと激しく罰して苦しめるべきであり、それこそ死刑囚なぞ苦悶の死を迎えるのを民衆は大いに眺めるべきだそうだ。
犯罪者を
霞氏の
そんな中、霞氏を真っ向から対立せんとする人物が居た。彼はムッシュ・
別段ムッシュ・音無は霞氏を全否定などしていなかった。刑罰には抑止の役割りがある事など誰だってそれとなく理解しているし、彼だってそれは承知だ。
しかし見せしめにして
ムッシュ・音無は頭がキレ、舌もキレる男だった。相手がモニターの向こうなのだから、平気で何でも言えると言う人間でもなかった。彼は霞氏を
「そこまで仰るなら、一つ企画でもやってみませんか? お題はそうですね、『霞対音無、法律対談生放送!』とか」
そう言われてもムッシュ・音無は全く怯む様子も無かった。よく考えずに、されどもしも実現したならば願ったり叶ったりと、二つ返事で了承する。
「貴方が音無か、話は
ムッシュ・音無が話半分で了承した話は、
何せ霞氏はマスメディアと名の付くものが何でも大好きで、つまりはテレビに対して良い感情を持っていたのである。無論、彼の言うテレビ好きと言うのは凶悪犯罪や判決に関する報道であり、もっと言うと等しく全ての人間が気軽に死刑執行を見物出来れば良いと常日頃主張している。
「これは霞さん、お初にお目にかかります。本日はお手柔らかにお願いします」
ムッシュ・音無は霞氏と対談出来る事に
こうして始まった二人の対談だが、ムッシュ・音無にとっては普段のニュースのコメンターとさして変わらなかった。霞氏の方も、対立する議員が居ようが何だろうが我を通す人物であり、テレビ局で議員相手でなくとも全く普段通りであった。
「何を言う! 悪人を痛めつけ、苦しめ、その様をテレビでも何でも使って
「ですから! 罪人を
「時代錯誤は貴方の方だ! そもそも現代は罰が軽すぎる、社会的制裁も生ぬるい! 人間とは痛くしなければ何も覚えぬ生物なのだ、悪人は
「刑務所は恐怖の場ではなく、更生の場です! それに暴力を振るわれた人間は、次は自分が暴力を振るう側になろうとします! あなたの言う刑務所は欠陥しかありません!」
「何を言う! 痛みと恐怖で罪人を
その時であった、生放送中に緊急速報と言う形でニュース速報が入った。出演者はモニターが見えているので、その様子も目に入る。
速報の内容は、凶悪犯罪を犯して服役中だった死刑囚が自動車を奪って逃走したニュースの続報で、犯人は高速道路を逃走中、カーブを曲がり切れずにそのまま
この事件を聞いて、二人は大いに
「「くそ! 司法の手で裁いて苦しんで/苦しまずに死刑になるべきだったのに!」」
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