第四百四夜『骨の折れる任務-euthanization-』
2023/07/29「雷」「ファミコン」「壊れた罠」ジャンルは「サイコミステリー」
「はい、私は
彼女はいわゆる確信犯で『障碍者は一匹たりとも残らず死んでね』と常日頃から口に出しては、周囲から危険極まりない思想犯、
幸か不幸か、彼女は
「お前バカな事言うなよ、障碍者だろうが何だろうが家族や他人に愛されている人間は居るぜ? その理屈だと、尾根那智さんは尾根那智さんの言う障碍者にも劣る事になるじゃないか」
ある日の酒の席、船馬は
「いいえ、私は
船馬はそんな危険な発言をしたが、周囲の人間は酔っ払いが世迷い事を言っているとしか認識せず、つまりは他人を害するだけの行動力を有して居ない無価値な人間だと思い、誰もまともに取り合わなかった。
船馬が福祉施設に忍び込み、殺傷事件を起こしたのはその夜の事である。
船馬は寝入っている入所者の重要器官を一突きにし、それが終わったら別の入所者の元へへと、迷いも
(ほら、自分で歩く事も出来ないし、抵抗すら出来ない。何の価値も無いし、殺されて当然!)
船馬はそう心の中で毒吐き、鼻歌混じりで思うままに
異変に気付いた職員がすぐに
警察に見つかった船馬は抵抗する素振りも見せず、ナイフを落として大人しく捕まった。何せ彼女の目的は障碍者を殺害する事なのだから、ここで暴れたら矛盾が生じると言う物だ。
船馬の犯行は大々的に報道され、マスコミュニケーションはやれビデオゲームの
船馬は
こうして船馬は刑務所にぶち込まれる事になったのだが、ある日彼女にとって人生が変わる事件が起きた。
「痛い! 何これ! 誰か! 助けて!」
船馬が運動場で運動を行なっていると、右足が地面の下へと沈み、切り裂くような痛みが足を走った。落とし穴である。
しかもそれは、子供が悪ふざけで作る様な落とし穴ではなかった。その落とし穴は成人女性の片足を有に飲み込める程に深く、加えて中には
これにはさすがの船馬も取り乱した。何せ足を折りかねない深さの落とし穴に
この事件は刑務所の内部にも大きな
しかしこの様な落とし穴を誰にも気づかれない様にこしらえると言うのも、土台無理な話だ。受刑者の間では、刑務所のお偉いさんが受刑者を
今では誰も使えない運動場の
「痛い……痛い……くそっ、なんで私がこんな目に……」
一方その頃、船馬は簡素な
「お答えしましょうか?」
豪雨が降る窓の外、稲光が走って目が眩んだ後の事である。気が付くと船馬のすぐ
「あなたは誰ですか! ここ女性刑務所!」
船馬は突然の
「申し遅れました。
謎の闖入者は、船馬に向って名刺を手渡して来た。彼が語る言葉は落ち着き払っており、不法侵入者ではなく所の職員の様な印象を相手に与える声だった。
「ええと、コロリ……?」
「
「殺し屋!?」
これには船馬は再び肝を潰した。しかしその次の
「殺し屋が何の用ですか?
船馬の言葉に、虎狼痢は悲しそうな顔を浮かべた。その様子は殺し屋と言うよりは、説得を試みに来た神父か何かか。
「それは困りますね、
「後天性? 何ですか、それは? それは私と何か関係が有ると言うのですか?」
自分の言葉に反応を示し、噛みつくような言葉を投げかけて来た船馬に対し、虎狼痢は無機質な笑みを浮かべた。お手本の様な営業スマイルと言うべきか、或いは仮面の様な笑顔とでも言うべき様相だ。
「ええ、大いにあります。後天性肢体不自由と言うのは一種の身体障碍でして、四肢体幹に永続的な障碍があるものを肢体不自由と呼びます」
張り付けた様な笑みのまま、
「待って! 違う! 別に死ぬのは怖くない! だけど、私は動物なんかじゃない!」
「そう言われましても困ります。
虎狼痢の言葉に、船馬は自分が嵌まった落とし穴を思い出した。そもそも監視の目を
「私をこんな脚にしたのはお前か!」
「ええ、簡単な仕事でしたよ。詳細は伏せますが、何せ依頼人は刑務施設に顔の効く方でしたからね。
「ふざけるな! こんな私刑が許されると思うのか! 監獄法を知らないのか?」
そう泣き
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