第三百九十四夜『心を金庫の中に…-break the bank-』
2023/07/18「悪魔」「金庫」「人工の時の流れ」ジャンルは「ホラー」
金貸しを
その秘密は、彼が利用しているココロ銀行なるサービスにあった。
ココロ銀行と言っても、実際にココロを
例えば、恐怖心が原因で何をやってもうまくいけない人が居たとしよう。そんな人がココロ銀行の手にかかれば、高所だろうが猛犬の目の前だろうが冷静に居られる様になる。
勿論ココロ銀行は銀行を名乗っているのだから、心を預けるだけでなく貸す事も出来る。決断力が無くて困っている
そして何より、空っぽになっていた心に元の気質を返してやれば、本人にとっては心が大きくなった
ココロ銀行のサービスを受けてからの卓氏は、それはもう悪魔の様でさえあった。ココロ銀行のサービスを受ける前の卓氏はどこか甘い所があり、嘘だと思っても泣き落としをされると取り立てを最後まで行えなくなることが度々あった。
しかし寛容や慈悲は美徳かも知れないが、卓氏の場合は
今や卓氏は、例え金が無くて逃げ回っている
その様な血も涙も無い仕事の鬼たる卓氏だが、その矛先は時には部下にも向いた。彼の部下の
その様子は卓氏からしたら、過去の締まりの無かった頃の自分を見ている様で気分が大変悪い。
「真礼君、君の心持ちはうちには全く向いていない。ココロ銀行と言うサービスを知っているかね? 君の様に心が弱い人間は、ココロ銀行に行って心の弱い部分を預けてしまえばいいんだよ!」
そう胸を張って自信満々に言う卓氏だが、対照的に真礼はおどおどウジウジとしており、まるで自信が全く無い。
「しかし所長、僕には心の弱い部分を預けたら、それこそ心が全部無くなってしまいますよ。僕の心には強い部分なんて、全く無いんです」
そう返す真礼に対し、卓氏は少々イラつきを覚えた。元より出来の悪い部下だし、卓氏が絶対の
「それだったらココロ銀行に行って、強い心でも借りて来るんだな! なに、銀行を名乗るくらいだ、預けるだけしか出来ません。じゃあ商売にならんだろう!」
翌日の事である。卓氏は心晴れやかな気分で出社していた。何せ彼は自分の心が弱かった頃に瓜二つの部下に適確なアドバイスをしてやったのだ、良い事をして心は
「諸君、今日もガンガン
しかし卓氏の言葉に反応する者は事務所には誰一人居らず、事務所は無人で静まり返っていた。
「なんだ、ワシが一番乗りか?」
しかし卓氏は事務所の違和感にすぐに気が付いた。何せ今しがた卓氏は普通に事務所の
これにはもう卓氏はパニックである、
卓氏は
書き留めを読み終わった卓氏は、真一文字にしていた口を開いて叫んだ。
「馬鹿野郎!!」
書き留めには、真礼がココロ銀行を利用した事、ココロ銀行で勇気を借りる事にした
これにはもう、さすがの卓氏も冷静さをすっかり失っていた。なにせ会社の金庫がすっかり空になっていたのだ、これではこちらが首をくくるしかない。一言で言うと、怒りで我を失っている。
「何がココロ銀行で勇気を借りた、だ!
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