第三百九十一夜『スコッパーと言う生き方・裏-six feet……?-』

2023/07/15「太陽」「告白」「きわどい殺戮」ジャンルは「ミステリー」


 私はスコッパーと言う人種が嫌いだ。何故か知らないが、あいつらは自分自身がすごい訳でもないのに『自分が掘り当てました!!』と言うデカい顔をしてほこらしげにしているのが非常に腹立たしい。

 ひどい時には実際に自分を偉いと思っているのか、すっかり自分の実力であるかの様に天狗になっているスコッパーすら見かける。お前は砂を掘っただけ、何が偉いものか。

 私はこの感情を他人に吐露とろしたが、どうにもかんばしい反応が返って来る事は全く無かった。どうやら世間はスコッパーと言う人種の異常性に全く気が付いていないらしい、私以外の人間は全員バカだ。

 そこで私はある計画を立てた。まずスコッパーと言う人種は、人から見捨てられたような土地でひたすら穴を掘って宝探しをしている。多くの人が行き交うメジャーな人口過密地域で活動をせずに、さびれて忘れ去られた様な土地で穴を掘っているからスコッパーなのだ。

 つまり、私があの忌々いまいましいスコッパーを殺して土に埋めても誰も気が付かないと言う訳だ! 幸い、あいつらはバカなので自らの墓穴を自前で用意していてくれている。後から誰かが気が付いても、事故で生き埋めになってしまったと誤認するだろう。


 と言う訳で早速、陽が沈んだばかりの時間に、丁度人間一人が有に埋まる程の大きくて深い穴を掘っているスコッパーを見かけたので、そいつを後ろからスコップをうばって頭部を殴った。すると、スコッパーは糸が切れた様に簡単に動かなくなった。なんだ、もっと早くからこうしていればよかった。

 私はスコッパーを埋めるべく、ソイツの遺体を穴に落として穴をのぞき込んだ。すると、存外に穴はずっと深く大きく、中にはすでに別の人間の死体が落ちていた。

 私は今自分で殴り倒した死体とスコッパーとおぼしき死体を見比べ、背中に悪寒を感じて一刻も早く遺体を埋め、早急にその場を立ち去った。


 あれは本当にスコッパーだったのだろうか? あれが本当にスコッパーだとしたら、身元不明の死体を発見した事件解決者を黙らせたので、私の当初の目的は達成したと言える。しかしあれがスコッパーじゃないと仮定したら、あれは殺人と死体遺棄したいいきの現行犯を殴り殺した事になる。

 しかし私の頭の中には、もう一つの考えが浮上していた。あれは私と同じでスコッパーが憎くてたまらない人間を殺して埋めた瞬間しゅんかんだったのではなかろうか? もしそうだとしたら、私が存在している立ち位置はどうなるのだろうか?

 そう考えると頭がおかしくなる様で、そして人気の無い暗闇では背後に誰かが居るのではないかだろうか? と、そう疑心暗鬼におちいる様だった。

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