第三百八十七夜『調理をしないと言う事-take a big bite-』
2023/07/10「水」「リンゴ」「おかしな主人公」ジャンルは「サイコミステリー」
フライパンにオリーブオイルを垂らし、細切れのベーコンとニンニクとを
トマトが充分熱されたら、あらかじめ
スパゲッティ一皿だけでも良いが、サイドディッシュも
メインディッシュとサイドディッシュがあれば十分かも知れないが、やっぱり個人的にはスープも欲しい。
今日はこのスパゲッティポモドーロ、牛肉のタルタルステーキ、オニオンスープで夕食だ。このスパゲッティがポモドーロなのかロッソなのかアサシーナなのかアラビアータなのかは意見が割れるかも知れないが、俺がポモドーロと言ったらポモドーロなのだ。
それでは、いただきます。
酷く鮮明な夢を見た。俺は厨房で、楽しく自由に好きなメニューを作っていると言う物だ。
何せこの人工都市では
幸いにも飲み水には不自由しないし、保存食の
ならば外国や市外から食料や飲料を輸入すればよいかも知れないが、それも叶わない。何せこの都市は宇宙の真ん中に所在しており、数日そこらでは人間の住まう場所へは
その様な立地条件だからこそ、保存食の食糧生産プラントや保存食の
初めの頃は、誰しも乾パンと水とサプリメントの食事に不平を言ったりしなかったし、長くて数日もすれば異変は解決するだろうと楽観的だった。しかし次第に、それこそ食糧プラントの復旧が
不幸中の幸い、保存食専用の生産プラントは無事なんだ。
無論SOSを飛ばしたが、それでも一朝一夕で解決する訳ではない。長い旅路の果てにプラント技師がお手上げだなんて事も考えられるし、これ幸いと技師など
そんなある日、人工都市の近くに小型の宇宙船が通りかかった。俺達のSOSが実を結んだわけではない、むしろ相手方がSOSを出していた。
事の
別に俺達は食料や飲み水その物が限界な訳ではないし、増してや船
俺達は落胆しながら、しかし相手方の要求を受け入れた。助けは人の為ならずと言う奴だ。
本音を言えば、家畜か畜肉でも貰い、文字通り夢にまで見たタルタルステーキでも作って食べたかったが、無いものをねだっても仕方が無い。しかしあの畜肉を包丁で叩き、叩き、叩き続けてタルタルステーキにする感覚は夢と言えど忘れられない。
しかしたった数人の遭難者、それも保存食で飢えを凌いで食い繋いで生き延び、それこそ全滅寸前だっただろう。俺達が発見しなかったら飢え死にして生存者無しの船が宇宙を漂っていたかも知れないし、更に言えば船員に因る共食いが発生していたかも知れない。
俺達は互いに互いの目を見合わせると、牛刀や麺棒やフライパンを用意し、たった数名の遭難者が乗っていると言う小型の宇宙船を快く出迎えた。
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