第三百八十四夜『風邪薬-Unidentified Elixir-』
2023/07/07「前世」「残骸」「ぬれた罠」ジャンルは「SF」
これは有名なフレーズだが、知らない人には奇異に聞こえる事だろう。風邪薬と言うのはその実、風邪の症状を
しかし、これからは違う! 私が作ったこのワクチン、厳密には風邪薬ではないのだが、一度接種すれば一生風邪にかかる事はなくなる!
しかも材料の確保も簡単だ! 何せ材料は人間の体組織、人間なんて掃いて捨てる程居るし、別段薬の材料も
そう、風邪薬の材料はバカな人間の体組織だ! 何せバカは風邪をひかないのだ、バカは先天性の風邪に対する
私がこの仮説を
現に動物実験は成功している。私の研究は、風邪に絶対に
私はこの風邪の特効薬とも言うべきワクチンを自分で接種したい
ならばマウスやモルモットで実験をすればよいのだが、困った事にこれは人間用の風邪薬。人間と同じように風邪をひく動物はサルの
しかし、私の作ったワクチンは完璧だ。健康被害は絶対に無いと断言出来るし、理論も
「理論は完璧なんだ。ならばいっそ、私が自分で体で実験をしてもいい……」
そう、独り言が思わず口から出た。
私にはこの独り言が
恐れなど
私はワクチンを注射器に
街のある病院の
「知ってる? 最近ずーっとお休みになってる先生の事」
「ええ、この間話に聞きました。何でもボケてしまったとか何とか……」
「うん、そうなの。私が最後に会った時はしっかりしていた様だけど、人間どうなるか分からないわね」
「まだお若いのに、そんな事もあるのですねぇ」
「そうなのよ、まだ若いのにボケちゃってリタイアするだなんて、きっとあの先生は長生きするでしょうね」
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