第三百六十九夜『晒-Herostratic fame-』
2023/06/19「おもちゃ」「銅像」「おかしな世界」ジャンルは「大衆小説」
狂山恐次郎の趣味とは自分よりも出来の良い小説を投稿している人間の名前を借り、その名前を登場人物として用いて、
「コイツは自分よりも周囲から評価されている、アイツは自分よりも周囲から期待されている、あんちくちょうに至っては読者から応援までされている! 許せん! 万死に値する!!」
そんなこんなで怒りや
まずはモラルが無い、次に自分が行なっている行為が法に触れると認知するだけの知能が無い、更には自分が悪を働いたら報復をされるかも知れないと言う自然法や自然状態に関する知識も無い。無い無い尽くしの
そんな狂山の文章だが、言うまでも無く
狂山の悪癖は元々自分より優れた人間に対する
「こいつは銃殺! こいつは
しかし狂山を頭ごなしに否定するのも又、道理とは言い
もっとも、狂山が行なっているのは繰り返すが立派な
世間が狂山を許しておく訳もなく、狂山は趣味の小説の投稿が出来ない様にアカウントを凍結された。なるほど温情のある
しかし狂山は
「ふざけるな! 普段俺の作品に全く目を向けない
誰に聞かせるでもなく狂山はそう叫ぶ。
「くそっ、くそっ、くそっ! こうなったら戦争だ、とことんやってやるぞ!」
そうは言う物の、やる事は副アカウントの作成と、逆恨みと
集合住宅の一室、作家の男と同居人とが居た。同居人は文庫本を手に、作家の男に対して興奮した様子で語りかけている。
「先生、こないだの悪者小説? 犯罪小説読みましたよ、凄かったです! 何と言うか悪役がすごくいけ好かない奴なんだけど、それでいて悪役キャラクターとしては魅力的と言いますか、どんどん悪の道を転げ落ちる様子は真に
そんな同居人の言葉に、作家の男は嬉しそうな笑みを浮かべつつ返した。
「バカも休み休み言ってくれ、そのキャラクターはインターミッションにしか視点を有しないからこそ、キャラクターの魅力があるんだ。考えても見ろ、そんな
作家の男の言葉は憎まれ口染みていたが、目元口元
「確かにそうですね、でもこんな真に迫ったキャラクターどうやって書いたんですか? あっ、いつもの『作家は体験した事しか書けない』って奴ですか?」
「まあ半分そうってところかな。あの男はボクの投影や経験じゃないし、ボクはあの男の被害者って訳でもない。ボクはあの男を調査して、説得力がある文章になるよう想像して書いたんだ」
作家の言葉に、同居人は酷く驚いた。その驚き方たるや、コメディ作品のポスターの三枚目の様ですらあった。
「ちょっと待ってください。それってこのキャラが行なった事と同じなんじゃあ……?」
「何を言っているんだ、君は? 石に泳ぐ魚事件は知らないのか?」
「何ですか、それ?」
「だろうな! 君は携帯端末をいつでも持っているんだろう、それなら分からない事はとっとと調べろ! まあいい、知らない様だから
突然の作家の男の
「えっと、脚色さえすれば許されるんですか? 本人に許可とかは……?」
同居人の疑問に対し、作家の男は肩をすくめ、こう言った。
「それがな、ボクは本人に許可を取る積もりだったんだ。けれども
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