第三百五十五夜『プラナリアの仮面-Turritopsis-』
2023/06/04「花」「目薬」「無敵のメガネ」ジャンルは「偏愛モノ」
ある所に腕の良い
催眠術師の手にかかれば、猫は自分をアライグマだと思い込んでもらった
しかし、催眠術師はこの生活が嫌いだった。彼は自分の実力を
この催眠術師は実際うぬぼれ屋ではあるが、その実力は本物だった。彼が猫に物を洗わせたり、犬をたどたどしく二足で背伸びをさせると観衆はドッと
催眠術師は自分の完璧な技を見て、自分なら人間を動物だと信じ込ませる事すら可能だと、そう考えていた。そして彼が自分こそ最先端医療に
他には
催眠術師はこれらの病を、自分ならば暗示の一つで完治出来ると考えていた。これはあなたの抱えている病気の特効薬ですよ! と、そう言いながら小麦粉だのタダの目薬だを与えれば、それで健康体に出来ると確信していた。しかし許可無く医療行為を行なって、前科者にでもなってしまっては
「全く、俺なら病人を暗示で健康体だと思い込ませて、心因性の病気だったら完治だってして見せるのに……」
これが良くなかった。彼は
強烈な金切り音、ハッとして音の方を向く催眠術師。大型トラックがすぐ前まで迫っており、彼の視界にはトラックのフロントパネルしか映らない程だった。
「グアアアアア!」
催眠術師は全身に
催眠術師の気分はもう最悪だった。体を
催眠術師は倒れたまま動けなかったが、丁度視界の高さに車のホイールがあり、それが鏡の役割りをした。感覚が無いと言う事は、さぞズタズタに酷い事になっているのだろうと、彼は自分の下半身を倒れたままの姿勢で見た。しかし彼が見たのは、自分の肉体の腰から下が千切れて
(うわあああああああああああああ!)
催眠術師は力の限り絶叫した。絶叫した積もりだったが、声はかすれて声にならなかった。誰の目でどう見ても致命傷だ、何せ真っ二つになった肉体から千切れた
(違う……俺は死にたくない! 俺は天才だ! 天才は偉業を果たす義務があり、そのためには何をしても許されるのだ! 天才は例え死んでも、生きるのだ!)
催眠術師は自分が死の
「お前は不死身だ……お前はプラナリアだから体を真っ二つにされた程度では死なないんだ……!」
病院に急患が運ばれて来た。誰がどう見ても致命傷だと言う、交通事故の被害者だと言う話だったが、実際に運ばれて来たのは傷一つ無い、物を言わない二つの肉体だった。
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